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アカウンティング(企業会計)の基本㉔:「決算書で読む新しい成長戦略」を読んで、大切そうなことをまとめてみた

決算書で読む新しい成長戦略(佐藤章憲 著)を読んでみました。

二人の登場人物の対話形式で書かれており、とても読みやすかったです。
内容としては、「何か真新しい話が書いてある」というわけではないですが、企業が公開している「IR資料の読み方」が体系的に整理してあったりして、自分としては勉強になりました。

書籍記載の内容のうち、自分にとって大切そうなことをメモしてみたいと思います。

※ このnoteのまとめ(メモ)には、個人の解釈が多分に含まれているため、少しでも本の内容が気になった方は、ご自身で読んでみてもらえると嬉しいです。


フィリップスの事業ポートフォリオマネジメント

フィリップスのこれまでの事業売却

2021年、オランダのヘルスケア大手フィリップスが、調理家電や空気清浄機などの事業を本体から分離し、売却した。この時、分離対象事業の利益率は10%以上あり「不採算事業」というわけではなかった。

さらに時を遡ると、2015年、フィリップスは祖業である照明事業も売却している。その売却判断時点では、照明事業は世界No.1のシェアを維持しており、利益も出ていた。

フィリップスはなぜ、このような売却を実行したのか?

フィリップスの売却実行理由

フィリップスが上記売却を実行した理由は「勝ち続けられる事業に経営資源を集中したため」である。すなわち、フィリップスは「勝ち続けられる事業」を「ヘルスケア事業」に定め、収益力があっても中長期では持続しないと判断した事業は、売却対象にしたのである(「祖業だから手放さない」なんてことはなく、ファイナンスの視点からベストな判断をしたと考えることができる)。

レノボの計算高い買収

レノボのこれまでの事業買収

レノボは、1984年に中国で創業し、2004年にIBMのPC事業買収、2011年にNECのPC事業買収、そして2017年に富士通のPC事業買収した。レノボのPC事業は、世界シェアトップクラスである。

一方、2017年時点では、一般的にPC事業はIT業界の中で成長性・収益性の低い事業(儲かりにくい事業)であっため「なぜ、2017年に富士通のPC事業を買収したのか」という疑問が残る。

富士通のPC事業を買収した理由

富士通のPC事業を買収した背景には、NECのPC事業買収が成功したことがあると推察される。

2011年にNECのPC事業を買収した際、当事業は大赤字だった。
買収後もしばらく赤字は続いたが、数年後には、レノボの中でも最も利益率の高い事業に生まれ変わった。富士通のPC事業にも、これと同様の「生まれ変わり」を期待していると考えられる。

この「生まれ変わり」の肝となるのは、レノボ・グループで実現できる「部品調達コスト」である。すなわち、レノボは市場シェアが高いため、集中購買により価格交渉を有利に進めることができ、その結果、世界最安値での部品の仕入れも可能になる。このスケールメリットによって、富士通から買収したPC事業も収益性を改善させようとしているのである。

IR資料を読みこなすコツ

企業の公開しているIR資料には様々なものがあるが、代表的な資料は下記4点である。

  • 決算短信
    開示時期:決算後45日以内
    正確性:速報値のため確定情報ではない
    情報量:少ない(数十ページ程度)
    ルール:証券取引所

  • 有価証券報告書
    開示時期:決算後3ヶ月以内
    正確性:確定情報であり正確
    情報量:多い(100ページ以上のこともある)
    ルール:金融商品取引所

  • 決算説明資料
    図表などが多用されていて、わかりやすい。
    ただし、「企業が伝えたいこと」なので注意が必要。

  • 統合報告書
    企業報告の「全部のせ」。
    非財務情報も含めて、企業の姿が紹介されている。

スピーディに財務情報を把握したい時は「決算短信」、全体像を把握してからじっくりと中身を検討したいときは「決算説明資料 → 有価証券報告書」、非財務情報も把握したいときは「統合報告書」というように、目的と状況によって、どの資料を活用するのかを考えて読むことは大切である。

以上です。

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