漫画「昭和天皇物語」を通じて昭和天皇が生命とどう向き合ったかに触れる
漫画「昭和天皇物語」を読みました。7月末に入院していた際に大東亜戦争まわりについて色々と当たってみようと思ったのが契機でした。政治的立場を表に出さない知り合いが面白いとSNSに書いていたのを思い出し、既刊全6巻を購入しました。
全6巻を間を置きながらまとめて読んでみたのですが、読み終えてから未だ連載中だと知り、何となく肩透かしを食らっている感覚です。6巻終了時点では大正天皇が崩御なさる直前までが描かれています。私の目的は達せられていませんが、6巻までも十分に興味深い内容でした。
物語は昭和20年に日本がポツダム宣言を受諾した後、マッカーサー司令官と当時の天皇陛下が対談される場面で始まります。当時の天皇陛下が日本の戦争遂行の全責任を追うとして、日本国民を守ろうとした有名な場面です。日本は敗戦しながらも国体の喪失には至りませんでした。それは当時の天皇陛下のお言葉や態度にマッカーサー司令官が強く感銘を受けた影響が大きいと言われています。
マッカーサー司令官の「天皇裕仁はどの様な人生を、どのような数奇な運命を辿ってきあのか、私は知りたいと…思った。」という言葉でこの場面は終わり、明治37年に転換します。マッカーサー司令官のこの言葉は、私がこの漫画に興味を抱いた動機そのものです。昭和天皇の象徴的な場面へ収束するかのような導入が最初にあったことで安心して読み進められました。
大東亜戦争に収束するように物語が進められていくとあり、昭和天皇がご成長される過程でどのように命の尊さと接されてきたのかが随所に描かれています。例えば最初の足立タカが養育係に任命される場面です。足立タカは迪宮様(みちのみやさま=後の昭和天皇)が猫に敵討ちをなさろうとするのを咎める場面があります。時を経た大正10年の欧州歴訪では航海中に乗組員を何人も失われて悲しみにふける場面があります。史実をなぞりながらも、昭和天皇がいかに命の尊さに触れられてきたかを時には象徴的な描き方をしながら物語が進みます。後には大東亜戦争という残酷な歴史を迎えようとしていると分かっています。この落差が読み物としての興味深さを引き立てます。
私は教科としての歴史は苦手です。特に情報量が増える明治以降は学生の頃は全く頭に入りませんでした。しかし、一人の人生の物語として歴史に触れるのは抵抗感がなく読み進められます。漫画だというのもあるでしょう。「昭和天皇物語」は2017年から連載が始まって3年で6巻です。連載の都合もあるでしょうし、息の長い作品になりそうな予感はします。不安はありつつも、楽しみが長く続くのは悪い気がしません。これを機にこの時代の周辺の史実にも触れてみたいと思います。