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第三回、『ユリシーズ・エピソード0』(?)。
『ユリシーズ』に入るに前に、かなり面倒だが、予習、と言えば気が引けそうだが、それはそれで楽しくもある回り道があります。
今、私の目の前には三冊の書があります。
ジェイムズ・ジョイス著『若い芸術家の肖像』。
ホメロス著(ちょっと違うけど)『イーリアス』。
そして阿刀田高著『ホメロスを楽しむために』。
そして、その後ろで『オデッセイア』も控えている…。
…あそうそうついでに映画『トロイ』も昨日アメプラで見返しました。
『若い芸術家の肖像』
これまたタイトルがかっこいい、ジェイムス・ジョイスの出版デビュー作です(違ってました。1914年刊行の『ダブリン市民』の方が2年早かった。すいません)。
1916年、彼が35歳の時でした。ほぼ自伝的な内容で(通っていた学校の名前も一緒。登場人物も、半分ぐらいは本名がそのまま使われている)、執筆に10年費やしたらしいです。それまでは、臨時教師から雑誌にエッセイを寄稿、銀行マン、なぜか映画館主、路上生活も経験した(これも間違ってるかもしれない)、かなりの苦労人です。
実はこれ、『ユリシーズ』の前述譚なのです。まあこちらの方が先に出版されているので、『ユリシーズ』の方がこちらの続編、という見方もできますが。舞台となるのは19世紀末頃のアイルランドのダブリン。そして主人公(の一人)が同じなんです。
主人公の名はスティーブン・ディダラス(ジョイスの分身、というかペンネーム。「スティーブン」はキリスト教最初の殉教者ステファノ、「ディダラス」はギリシャ神話に登場する脱出の象徴ダイダロスのそれぞれ英語読み。つまりジョイスによる、宗教からの決別宣言)。
彼の幼少期から青年期を描きます。
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友人たちと芸術論争を繰り広げたり、
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海辺で、女性の足に見惚れて、何かを悟ったり、
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没落しつつある家族から将来を期待されたり、
校長からは聖職者(キリスト教カトリック派。神父さんの方。黒い衣装の方ね。アイルランドでは、白い衣装の牧師さんのプロテスタント派と非常に仲が悪い)への道を進めらる。
芸術と信仰の狭間で悩みます。
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“僕は何者なのか? そしてどこへ行くのか?”
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で、※ラストネタバレになりますが! 悩んで悩んで悩み抜いた彼は、祖国からも、家庭からも、宗教からも自由になるため、周りの期待を蹴り、パリ留学の道に進む(自分を取り戻す)。…で、続きは『ユリシーズ』1ページ目です。つまり彼のその後が『ユリシーズ』で語られるという仕組みです。2年後の1904年になります。舞台は同じダブリンです(もちろんジョイスの生まれ故郷)。
なんかそそられるっしょ?
ちなみに作者ジョイスのほぼ自伝です。彼が実際通っていた学校名も、彼の家族構成もほぼ一緒。ラストで没落貴族(うちに召使がいたらしいので多分そうなのでしょ)の期待を蹴ってパリに留学するのも同じです
(パリでは医学部に通っています。医師免許を取るためです。じゃあアイルランドにもあるじゃん。なんか肌に合わないと辞めたそうです。でもパリはフランス語です。試験に合格する前に、フランス語をマスターしなければならないという大きなリスクがあります。ジョイスはそこは気にする範疇じゃなかった。「そんなこと俺なら朝飯前」。とにかくパリ移住がカッコよかったのです)。
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私は5年ほど前に読了済みです。ですが、今ではほとんど記憶に残っていません。と言うのも難解で読み辛いんです。ちょっと気を抜くと、何の話だったかわかんなくなるんです。あと登場人物が、当時の時事ネタなんかで議論してて、後ろの方に記されている注釈と、交互にページを開かなければ何のことを言っているのかわかならない、大変です。あと神父様のありがたい(多分)お説教が何ページも続く件があります。良いこと言っているんでしょうが、とにかくわけわかんないので、辛くなってきます。(そこは)読んでも無駄かもしれません(失礼しました、きっと僕だけです)。
とりあえず、ディダラスの家はキリスト教カトリック派で、アイルランドではイングランド人が持ち込んだプロテスタント派の方が強く、古くからいるアイルランド人は虐げらている存在、と言う事ぐらいは知っておいた方がいいと思います。
それと本文について。
これ、読み進めていくと、最初地の文で始まったかと思うと、突然セリフになって、気づいたらそれは終わっていて、いつの間にかスティーブの独白になってる。そうしたら、なんか文脈の流れと違うようなこと突然呟いてたり…。
これはそう言う小説です。読者に語っている普通の小説と違って、スティーブ(作者ジョイス)の頭の中の意識の流れそのものが文章になっているんです。極めて読者に不親切な本です。気にとめておいてください。
とにかく彼は、信仰を潜ねけ、自分の進むべき道を見つけるのです。
で、スティーブンは作家を志しパリへ向かう…。が、あれ、わずか2年後の1904年『ユリシーズ』の冒頭では彼はダブリンに戻っている…。
次回『イーリアス』とホメロスです。
※と、書いたあと、この度『若い芸術家の肖像』を約5年ぶりに再読しました。すると、あれぇ、ラストでスティーブの行方がどうも曖昧ではっきり記されていません。どこへ行くかも何になるかも、はっきりしないまま終わっちゃいました。でも『ユリシーズ』の冒頭は、『若い〜』の2年後、スティーブがパリ留学から戻った直後で始まります(ちなみに作者ジョイスも、スティーブと全く同じ理由で留学先から故郷ダブリンに戻っています)。僕の記憶がどこかでどうなったか、訳わかりません。
…とりあえず、なんかすいません。
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