今週読んだ海外記事と雑感(2020.4.18)
今週もNewsPicksでピックしたニュースとコメントを転記してまとめておきます。
文末の有料パートは海外記事の解説です。
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アルコールデリバリーが急成長するアメリカの今
アメリカでアルコールデリバリーが急成長しているという話は、期限つきでレストランがアルコール販売をできるようになった日本でも参考になる部分が多々ありそう。特に面白かったのは、増加した注文の半分以上をワインが占めているという話。逆にテキーラは唯一売上が落ちているジャンルとのことで、単においしさや好みといったポイントだけではなく、「どんなシチュエーションで飲むお酒なのか」によって売上が大きく変わるようです。テキーラの場合はみんなで集まって飲むことを楽しむお酒であり、ワインの場合はひとり、もしくは家族との食事で楽しむお酒、という違いが売上の違いを作っているのかなと。
また、アルコールのデリバリーサービスはこれまでミレニアル世代の開拓に苦労してきていたものの、コロナ以降ミレニアル世代の利用が増えてきたとのこと。外出規制によってお酒のエンターテイメント性が相対的にあがりつつあるのかもしれません。ほんの少し前までノンアルブームがささやかれていましたが、ノンアルはそれ自体を飲みたいというよりはお酒を飲まずにお酒の場を楽しむための代替物としての人気だったのだなという気がします。
ブランドがインスタライブを活用するには?
日本でも利用が増えつつあるインスタライブ。小売視点では長らくライブコマースの文脈で語られることが多く、利用はそこまで浸透していませんでしたが、ここにきてデザイナーやブランド創業者が顧客をランダムに当てて直接会話したり、ヨガレッスンを一緒にやったりと顧客と「過ごす」ための使い方をするケースが増えています。
記事にもあるとおり、インスタライブは広告などの施策と異なり、数字がとりづらく施策の結果が見えづらいのが難点ですが、たとえば「これを使って一緒に○○しましょう」というテーマでライブ配信をすれば商品を買うインセンティブにもなるといった発想で企画するのが重要かなと思います。
今後顧客との接点がオンライン、特にSNSに限られていく中で、いかに「売るため」だけの発信ではなく「顧客を楽しませるため」の発信にシフトできるかが、コロナ収束後の結果も大きく変えるのではないかと思います。
InsgatramがIGTVをアップデート;「発見性」を高める仕組みも
InstagramがIGTVをアップデートし、より発見性を高める仕組みを追加しています。
①「発見」タブに「IGTV」を追加(自分のアカウントでかくにんしたところ、IGTVがトップにきていました
②IGTVコンテンツの冒頭15秒を直接ストーリーズに投稿できる機能を実装
③ハンズフリー撮影モードを追加
個人的には②が重要なポイントだと思っていて、これまでIGTVに直接遷移してもらえる導線がなかったので、ストーリーズから直接IGTVに飛べるようになると視聴数が一気に伸びるのではないかと思います。
現在すでにYouTubeへの導線としてTikTokが使われることが多いですが(TikTokにダイジェストを投稿し、「フル視聴はYouTubeで!」と案内する方式)、これをひとつのプラットフォームでできるようになると考えると、企業のように広告収入より再生回数を増やすことが重要なケースにおいては、ブランディングの意味も含めてIGTVに移行するところも増えそうだなと。
この状況下でIGTVもインスタライブも利用が一気に増えているので、これからも機能の追加が続いていきそうです。
コロナ禍でもウェディングドレスのD2Cが伸びている理由
コロナの影響で結婚式が軒並み延期になっているにも関わらず、コロナ以前よりも売上を伸ばしているウェディングドレスのD2Cブランドがあるという話が興味深い。
「Anomalie」はオンラインのオーダーメイドドレスブランドで、注文してから仕上がるまでに半年ほどかかるため、その頃には収束しているだろうと見込んだ顧客が、リアル店舗にいけないためにオンラインで注文するようになり、結果として売上が増えているとのこと。
さらに広告なしでもアクセスしてくれる人が増えたからか、マーケティングコストは以前よりも減っているそうです。
また彼らの提携している工場はすべて中国にあるものの、武漢から離れていたこともあって通常通り稼働しているため納期に遅れがでることなく注文を受けられているのも幸いしたようです。
実際に半年後に収束するかどうかはさておき、結婚の節目として写真を撮ったり、友人たちとオンラインでつないでお祝いしてもらうといった需要は減らないはずなので、結婚式のみならずベイビーシャワーや誕生日などのオケージョン消費を盛り上げるアイテムをオンラインで販売する需要は今後さらに拡大していきそうです。
Allbirdsが製品の二酸化炭素排出量を公表へ
Allbirdsが製品の製造から廃棄までに発生するCO2の量を製品にラベリングしはじまるとのこと。「食品の成分表示のように、商品が環境に与える影響も開示されるべきだ」という考え方はユニーク。
また、コロナの影響で消費者の関心がウェルネスやヘルスケアに移っていく中で、この流れが落ち着いてきたら次は地球全体の健康問題に関心が向くはずだという考え方によって、長期的な投資としてこの取り組みを捉えているとのこと。
「サスティナブルをマーケティングとして捉えている企業が多い」というCEOの指摘はまさにそのとおりで、日本の女性誌でも夏に向けてビニール小物がプッシュされている現状にはやはり疑問を感じます。
そして個人的には、こうしたサスティナブルへの取り組みの一環として「新しいモノを作らずとも経済を循環させる」という意味でメディアやコミュニティへの投資も加速していくのではないかと思っています。
【調査】百貨店の大多数が債務不履行のリスクに直面
米国百貨店の債務不履行リスクが3/25〜4/7の二週間で20%も上昇。現在ほぼすべての店舗がクローズしていますが、運営コストを差し引いてもキャッシュフローを考えるとほとんどの企業が5ヶ月〜8ヶ月しかもたないと見られ、今年中にコロナが収束しなければ百貨店の倒産が相次ぐことになりそうです。
特に老舗百貨店は今まさにデジタルシフトに力をいれていた最中であり、売上のほとんどを実店舗で作っていたため短期間でECに振り切ることは難しく、このままいくと公的資金の投入かファンドによる再建を目指すことになりそう。
このタイミングでAmazonやT-mallが百貨店を安く買収する可能性もあるのではないかと個人的には思っています。
オンラインフィットネス市場が急成長
外出規制によってPelotonをはじめとするホームワークアウト需要が激増。とあるサービスは売上が前年同月比5倍となり、今年の年間売上も昨年の3倍になりそうとの予測。マーケティング施策として、機材を買わずとも簡単にできるエクササイズをYouTubeで配信し、見込み顧客を獲得しているブランドも多いようです。
一方で、リアルな場所を拠点にしてきた伝統的なジムは苦戦を強いられているものの、もともとデジタルシフト施策としてアプリの開発などをしていたこともあって、オンラインでのコンテンツ配信やコミュニティ育成に注力しているところもあります。
ただジムで形成されているコミュニティは比較的年齢層が高く、オンラインコミュニティへの欲求があまり高くなさそうという点も踏まえると、日本の場合はオンラインシフトも容易ではない気はします。
オンラインレッスンがしやすいという意味では、場所の提供をメインにしてきた大手よりも個人インストラクターとしてレッスンしてきた人の方が移行しやすい部分はあるかもしれません。
世界的にウェルネスやヘルスケアが盛り上がりを見せる中で、デジタルシフトの程度によってここまで明暗がくっきり分かれていることに改めて恐ろしさを感じます。
企業にスポンサードされた学位の是非
Shopifyがカナダで無料の講座を提供していたことをはじめて知りました。しかもいわゆる寄付講座ではなく、コンピューターサイエンスのコースそのものをスポンサードしているので、4年間通えば無料で学位がとれるところがすごい。ただ、その代わりとして1週間のうち25時間をShopifyでの業務に割り当てる必要があるという点をアルバイトの掛け持ちと比べて安いとみるか高いとみるかは議論になりそうな点かと思います。1日8時間働くとしても3日は業務に当てることになるので、もはや働きながら大学に通っている状態に近い気も。もちろんその業務も学習の一環ではあるので、まったく関係ないアルバイトをするよりはよいという見方もあります。
こうした講座への批判として一部の大学関係者からは「大学はいち企業のための職業訓練校ではない」という声もあるようですが、ShopifyのCTOが「大卒の新入社員の理解度が低く、再教育しなければならない」という課題意識がこの講座を作ったきっかけであることを考えると、単に企業が大学内に無料のコースをもつといったかたちではない本来の意味での産学連携が必要であることを考えさせられます。
海外ではUberがドライバー向けに大学進学の無料化や支援をするといった企業の教育投資が活発になりつつありますが、優秀な人を採用し、育てていくために企業が教育分野に入り込んでいく事例は今後も増えていきそうです。
コロナ禍でも業績好調なブランドのIGTV活用術
ストリートブランドのChinatown MarketがIGTVに本腰をいれはじめ、ちょっとしたDIYや創作を解説する5分程度の番組シリーズを次々に公開。ゆくゆくはIGTVで紹介したワークショップが自宅でできるキットを販売するなど、コンテンツとコマースを結びつけていきたいという考えはまさに「体験を売る」ブランドと言えそう。
「コンテンツはプロダクトであり、プロダクトはコンテンツである “Content is product, and product is content”」という考え方は、コロナ禍の時代に関らず、今後スタンダードになっていく気がします。
Zalandがマーケットプレイス形式の出店を開始
ドイツの大手ECプラットフォーム・Zalandがマーケットプレイス式の出店プランを開始。これまでは日本でいうZOZOと同じようなかたちで物流などをZalandが担って手数料をとるモデルのみでしたが、AmazonやFarfetchのように出店ブランド自身が配送までやるというマーケット形式に広げることで出店数や取り扱いブランド数を増やし、成長率をあげていきたい考え。
実店舗に比べればECは打撃が少ないとはいえ、それでもヨーロッパではオンラインの売上も5〜20%落ちているとの調査もあり、Zalandoの成長も鈍化しています。
特にオフィスやパーティーで着るような洋服の需要がなくなってしまったため、アスレジャーアイテムが売上の支えになっているもよう。
おそらく年単位で外出自粛が続くと予想される中、Zalandをはじめとするファッションプラットフォームは「どうすれば家の中でもファッションを楽しみたくなるか」を考える必要がありそうです。
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今週は、はからずもインスタ関連の投稿が多くなりました。
メディアの扱いをみていても、フィードやストーリーズからライブとIGTVに関心が移り始めていることを感じます。
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