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「購買」から「体験課金」へ
少し前に、こんな気になるお店の記事があがっていました。
お店の中にあるインテリアや食器が「すべて」買えるレストラン。
まさに、昨日書いた通り「売場もメディアになる」時代なのだなとこの記事を読んで改めて思いました。
こうした流れはライフスタイルショップやカフェ併設型ショップが流行った時代からあるものの、今は店舗で見たものがオンラインで簡単に購入できるようになったからこそ、よりメディアとしての色が強くなっているのではないかと思います。
つまり、これまでは店舗で見てそのまま買ってもらえるような導線を考えなければならなかったのが、オンラインでも買えるようになったことで、体験にフォーカスしてエンゲージメントを高め、後から買ってもらうといった長い時間軸で考えられるようになったということ。
『買いやすいEC』から『魅力的なメディア』へと変わってきているというのが、このニュースの本質的だと思っています。
とはいえ、それって本当に売れるの?という疑問もたしかにあります。
話題が先行しすぎているだけで、実際のコマースとしての売上はどれほどあるのか、と。
私もそこは気になるポイントで、感覚としてはそうバンバン売れるものではない気もしています。
顧客はあくまで食事をしにきているのであって、何かを買うというマインドでレストランを訪れているわけではないからです。
店舗はメディアであるとはいえ、最終的に売る力がなければブランド側も商品を卸したいとは思えません。
世の中に素晴らしいものを増やすためにも、作り手にどうお金を落としていくかという仕組みもセットで考えなければならないと私は思っています。
NewsPicksでピックした際に、私はこんなコメントを書きました。
また一般的に高級なうつわやインテリアはわざわざ買わなくていいという人も多いでしょうし、今後はこうした「体験×購買」から一歩進んで、「体験課金」に寄っていく可能性について最近は考えています。
例えば、お皿をグレードアップすると+500円で、その500円はそのまま作家さんに支払われます、というような。
私はもともと店舗の入場料をとるといった課金システムについて考えていたこともあり、無料の体験をしてもらった上で販売をキャッシュポイントにするのではなく、はじめから体験そのものに課金してもらえるような体験コンテンツを作ることの可能性について常々考えてきました。
特にインテリアや高価なカトラリーは、それを買うだけの財力がある人でも所有しなくていいという価値観の人もいるはず。
作家性が高いものは日常使いしにくいものも多かったりするので、買って家で使ってもらう以外のアプローチを考えることが重要なのではないかというのが、百貨店時代に閑散とした売場を見ながら感じていたこと。
例えばコメントした500円のアップグレードでいえば、本来1つ5,000円で販売したいうつわだったら10人が使ってくれればペイできる計算になります。
食器の場合は割れたり欠けたりしない限りはかなり長く使えるのでどんなに短くても1年は使えるとして、1日1人が使ってくれれば365日×500円=182,500円。
耐久年数を1年とするならば、小売価格4、5万円のうつわをレンタルに転換したとしても年間で10万円以上の粗利がでることになります。
こうしたうつわの数が増え、さらに取り扱い店舗数も増えたら、1年間のうち補充分としていくつか作れば生活が回るという作家さんも増えるかもしれません。
商品を作るたび売るのは高額品であればあるほど不確実性も高いものですが、こうした安定収入の仕組みができればもっと作り手側も挑戦がしやすくなるのではないかと思います。
さらに、先ほどの試算でいけば、店舗側も手数料を20%ほどとれば年間4万円弱儲かる計算になります。
高級店であれば、1つあたりの単価をもっとあげることもできるでしょう。
うつわが誘因になって店舗を訪れる人も現れるでしょうし、何より食器の仕入れコストを下げつつ、食器の入れ替えもしやすくなります。
つまり集客、コスト低減、体験価値の向上をしつつ、微々たる金額とはいえ売上にもつながる施策になりえるということ。
この試算はかなりざっくりした仮定ではありますが、店舗のメディア化が進めば、次のステップとして挑戦するところも現れるのではないかと思っています。
そんなことを考えていたら、たまたま目にしたインテリアのシェアリングビジネスの記事。
「シェアリングサービス」というと今のブームという印象が強いですが、シェアの本質も体験課金だと私は思っています。
「僕自身、2年ごとに引越しをしているが、間取りが変わるのでインテリアを買い直すことも多く、その度に発生する手間や費用をなんとかできないかと考えていた。」
『所有』は突き詰めて考えれば長期利用を見据えた課金ですが、今はもっと課金サイクルが短くなっている。
どうせ体験に課金するなら、よっぽど自分にとってこだわりがあるもの意外は気軽に交換できるものがいいというのは当たり前の感覚ではないでしょうか。
課金サイクルが短くなっているという話は、以前NewsPicksのインスタ特集で石川さんがお話されていた『ワンショット消費』の話もとても参考になりました。
私は『新品を売る』に固執してしまうことが小売業界における根本的な問題だと思っていて、それはつまり消費者の希望する課金サイクルと供給側の希望する課金サイクルが噛み合わなくなってきているということだと思っています。
もちろん、1人のお客様に長く愛して使ってもらうのも尊いこと。
しかし、それだけ深く愛してくれる人に出会うには、もっと気軽に使ってもらう機会をつくり、その人の人生の思い出として積み重ねていくことも重要です。
自分たちは顧客に対してどんな体験を売り、ハードルを下げるために課金サイクルをどう短くしていくべきか。
最近はそんなことを考えています。
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