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本と映画と、エトセトラ。

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読んだ本・観た映画について気まぐれに。 (photo by tomoko morishige)
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2018年2月の記事一覧

「秘密」の価値

「秘密」の価値

時々、「本当に秘密主義だよねぇ」と諦めたような口調で言われる。

いつもオープンに話しているように見えて、一番大切なことだけ巧みにかわして表に出さない私の癖は、わかる人にはわかってしまう。

それでも無理やり聞いてきたりしないのが、私のまわりはみんな大人だなあ、と思うところでもある。

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昔は比較的あれこれ話す子だったような気がするのだけど、年を重ねるごとに自分の中だけで留めることが多くな

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頑固に、でもしなやかに。そしていつも穏やかに。

頑固に、でもしなやかに。そしていつも穏やかに。

たまに、「憧れの女性はいますか?」と質問を受けることがある。

そのときどきで答えは変わるけれど、私が憧れるのは幸田文、森田たま、沢村貞子のような、大変な時代を自らの力で強く、でもしなやかに美しく生き抜いていった人たちだ。

宇野千代や岡本かの子のように情熱的に生きた人たちも素敵だけど、燃えるような恋よりも日々の移ろいの美しさを穏やかに見つめて、それを切り取ってきた人たち。

そんな人たちが私の憧

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「君かへす 朝の舗石さくさくと 雪よ林檎の香のごとくふれ」

雪の降る季節になると、毎年北原白秋のこの歌を思い出す。

「君かへす 朝の舗石さくさくと 雪よ林檎の香のごとくふれ」

雪を踏みしめながら帰る「さくさく」という音を、林檎を噛む音に重ね、またほんのり甘い香りを雪にのせる表現のうまさに、口ずさむたび唸ってしまう。

しかし、なぜ冒頭が「君かへす」なのか。

それは、北原白秋が当時関係していた隣家の女性を家に返す場面の描写だからである。

その女性は既

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独りで美しく暮らすという贅沢

昔から部屋の片付けが得意でない私は、毎年「大掃除したあとの部屋を保つ」と決心しては、1月も終わる頃には早々にくじけてしまっている。

そのメカニズムもすでにわかっていて、たった1日「今日は疲れたからいいや」という甘えが、翌日の片付けをより億劫にさせ、負債が積み上がっていくのだ。

これは叱る人のいない独り住まいの気楽さでもあり、代わりに片付けてくれる人のいない切なさでもある。

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