413.【WACK峮峮スピンオフ#10】峮峮(チュンチュン)仙人の力を得たものの・・・
大家好。今回は「WACK峮峮スピンオフ#9」の続き、WACK峮峮スピンオフの10回目です。うさうさんの倉庫で話は続きます。「WACK峮峮スピンオフ#9」は次のリンクをご覧ください。
さて、ピカ峮に変身した峮峮(チュンチュン)、サクランボを追いかけて、どうしたのでしょうか?
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「このサクランボ、美味しいね~」
「どこから来たんだろう。やっぱり山形?」
「佐藤錦かな? これかなり美味しいよね」
「山形?それってどこ?」
「東北の日本海側。上杉鷹山の功績があるのかな。山形は名産品が多いよね」
「こんな美味しいサクランボ食べられるんだったら、変身してよかったぁ!」
笑顔の峮峮。丸武もポンちゃんも笑顔で応じる。どうやら3人はそもそもの趣旨を忘れている。それはサクランボの魔力なのか?
3人は、倉庫にころがってた籠にサクランボを入れて、むしゃむしゃ頬張ってる。それを見て、うさうさんはツカツカと近づき、籠を取り上げて言った。
「もう、何してんの!あなたたち、サクランボ食べに来たの?」
うさうさんの剣幕に気圧されて、3人ともポカンとした。余計にいらだって、うさうさんは言った。
「峮峮、あなたは恩返しするために変身するんじゃないの?サクランボが恩返し?違うでしょ」
「あ……」
峮峮は顔を赤らめて下を向いた。うさうさんの剣幕は止まらない。
「あたしだって、元魔王のプライドがあるんだから。このままじゃ終わんない」
そう言って、うさうさんは魔力を使って、様々な道具を現出させた。
錬金釜、錬金鍋、樽、フラスコ、ビーカー、ボトル、アランビック蒸留器、濾過器、手動の豆挽き機、すり鉢、天秤ばかり、かまど、焜炉といった錬金術器具に、懐中時計、蠟燭、水晶玉、髑髏、アンク十字、カドゥケウスの杖といった怪しげな道具も……まさにスチームパンクの世界!
驚く3人の前にあったサクランボの籠をひょいと取り上げると、うさうさんは錬金術でも始める風情。
「あ、サクランボ……」
そう言う峮峮を尻目に見たうさうさんが怖くて、峮峮は泣き出しそうになった。しばらくして、のろのろ歩を進めると、うさうさんに言った。
「ごめんなさい。あたし……」
「いいよ、わかってれば。今度はハンパないから」
そう言って、うさうさんはサクランボを錬金釜に入れてぐつぐつと煮込み始めた。そして、いくつかの薬草を取り出すと、すり鉢ですりつぶし、釜から出したサクランボのエキスと薬草を鍋に入れて火にかけた。鍋の液体が程よく混ざると、それを蒸留器にかけて濾過し始めた。
ひたすら作業するうさうさんと、それを見つめるピカチュウの峮峮、その後ろ姿は奇妙な取り合わせだった。
そうしてできた液体を冷まし、透明なボトルに移すと、ポイポイ変身機へと向かった。そして、ポイポイ変身機の手前にあるシリンダーを外すと、そこに液体を注ぎ込んだ。
「さてと準備完了。今度はもっとパワーアップするぞ」
ピカ峮のまま、ポイポイ変身機に乗る峮峮。今度はテスラコイルを作動させることなく、ボタンを押すうさうさん。すると、手前のシリンダーがしゅぽしゅぽ動き出し、ポイポイ変身機の天板のところからピンクの煙が降り注いだ。
それはすさまじい煙で、ポイポイ変身機の峮峮を覆い尽くした。峮峮が咳き込むゴホゴホという音が聞こえた。
「そうそう、吸い込んじゃっていいからね」
しばらくすると、煙はなくなり、同じピカ峮の姿の峮峮が現れた。
「あれ?変わってない……」
「丸武くん、君はシロウトね。しっかりとパワーアップしてるから」
うさうさんはヘルスメーターを持ち出して言った。
「峮峮、ここ乗って」
体重を測ると54キロ!明らかに増えている。ピカチュウの着ぐるみスタイルなのでわかりにくいが、峮峮の顔もふっくらしてる感じだ。戸惑う峮峮に、うさうさんは言う。
「ここの電球。これ割ってみて」
うさうさんは、およそ5~6メーター離した電球を指さした。峮峮は、かめはめ波のポーズを取って……
「か…め…は…め…波!」
何も起こらない。。。
「あらら、じゃあもう少し近くに」
3メーター、2メーター、1メーター……まだ何も起きない。そして50センチ。……パリン!ついに電球が割れた。
「やったぁ!電球が割れた!」
「また丸武くん、ダメ! 50センチじゃ、何の意味もない。峮峮、もう一度変身機に乗って」
ポイポイ変身機のシリンダーにさらに液体を注ぎ込むうさうさん。
「今度は濃厚。そしてテスラコイル!」
天板からの強烈な煙に、テスラコイルのプラズマが走りまくる。それは、どす黒い嵐の中に轟く雷鳴と稲妻のように、倉庫内を覆い尽くした。そして、煙とプラズマが晴れてくると、同じピカ峮の峮峮が現れた。
「あれ?体が……」
そんな丸武の言葉にお構いなしに、うさうさんは電球を10メーターも離して言う。
「そうそう、さっきは手印を間違えた。手のひらを外に向けて、親指同士、人差し指同士を合わせて、それで三角形を作って、氣を出すの。あ、かめはめ波じゃなくていいから」
「こう?」
峮峮が気合いを入れると、パリン! なんと10メーターも離れた電球が見事に割れた!
「すごい!」
「さっきの変身がレベル2、今のがレベル3ね」
しかし、みんな違和感を感じていた。峮峮が太ってる。
「峮峮、太ってない?体重測ってみて……」
ヘルスメーターに乗ると、なんと68キロ!デブ峮の体重60キロを上回ってしまった。それも全身が太るのでなく、異常なほどお腹だけが膨らんでいる。
「あ、仙人腹か。下丹田にエネルギーが蓄えられるから、そうなるんだよね」
「丸武くん、そういうことは知ってるのね。そう、仙人の力を峮峮は得た。正義のヒロインの誕生よ!」
峮峮の顔が暗くなった。自分の大きく飛び出したお腹を見つめると、涙がこぼれた。
「あたし、あたし……、こんなデブのヒロインやだ~!」
峮峮はその場に泣き崩れた。
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あらら、峮峮泣き出してしまいました。変身は進んだものの、果たしてどうしたものやら。。
それにしても、うさうさん大活躍でした。峮峮がレベル3までいきました。ありがとうございます!
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峮峮スピンオフは、のろのろと続きます。。