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小さな美しさにじっくりとふれて、ひたすら味わいたいのです

食べたスイーツが本当に美味しいと、少し不安になる。だって、食べたらなくなってしまうから。

あまり好みじゃなかったら、ほっとする。食べたらなくなるし、他に好きな人にあげてもいいし、残してもいい。

でも、残して捨てることはしたくない。せっかく生まれてきたのに、「おまえ不味い!嫌い!」って言われてしまわないように、美味しくつくりたい。

生まれたのに食べてもらえないなんて、撮影されたのに上映の権利さえ与えられない映画みたいだもの。嫌なんです、そんなのは…



世の中には情報が多すぎて、もちろんスイーツもたくさんあって。

メディアは「こっちの水は甘いぞ~」って、わたしたちのマーケティングに余念がない。

だけど、わたしは、人、場所、食べ物、情報、言葉、五感で感じること、あらゆるすべてが、消化できないものはとにかく受け入れられなくて、我慢して受け入れると自家中毒を起こしてしまう。

外に出るときは耳栓をしている。目をつぶっては危険だから、せめて入ってくる情報を減らそうと聴覚の門を閉じる。

普通の人に比べ、受け入れる器が極端に小さい。

生まれつき、人や世界との和解は喪われていたのだと思う。




だけど…今のわたしを世界につなぎとめている唯一のもの、スイーツ…

卵白とグラニュー糖を人肌にあたため、溶かしたクーベルチュールチョコレートを冷やさないようにし、牛乳や卵黄、コーンスターチとプードル・ア・クレームを加えて、最後にメレンゲ。

スフレタイプのガトー・ショコラ。




ろくに料理をしたことがなく、手際も悪いわたしが最初からうまくできることはあまりなくて、スフレをはじめて焼いたけど…


なんかプルプルしてる…
わぁ!焼けてない(>_<)



失敗したスイーツは、ぜんぶ自分で食べる。ごめんね…。スイーツづくりを応援してくれてる人にも、こんなわたしに、あんなに捧げてくれたのに、美味しくつくれなくて、申し訳ないです。

食べながら、サクサクホロホロしたパート・シュクレはリッチで美味しいし、スフレはガトー・ショコラより、ふんわりしっとりして、好き…

ガトー・スフレ・オ・ショコラを、美味しいって笑顔になってもらえるスイーツにしてあげたい。




トライアゲイン!(`・ω・´)メゲナイモン

最初よりうまく焼けたけど、やっぱりなめらかで綺麗とは違う…

でも、仕上げにココアパウダーをふりかけて。最近はハイカカオのショコラスイーツをよくつくっていたけれど、65%のビターチョコレートと、35%のミルクチョコレートでコクとマイルドさのバランスをとって。

ハイカカオの生地は、冷えると硬くなってしまう。スフレは、外はカリッ中はフワッのコントラストを楽しむより、とにかくフワフワやわらかが魅力だと思うから…

チョコレートに加える素材も、温度差で喧嘩しないように、やさしく、やわらかく…素材同士がつくるときから、うんうんいいね、そのまんまでみんなOKだね、君と混ざりたいよ、君と混ざっても僕は僕だもの、って…

溶け合い、混ざり合いながら、素材すべてが見失われないように…




不格好?

ひび割れてボロボロは、わたしらしいけれど…

いつの日か、「わたしのスペシャリテです」と、あなたに供せる日を夢見て…

病気で、涙とか鼻水とかすすってばかりだし、タコ踊りしかもうできないけど、スイーツをサーブするときはわたしを磨きあげる。

中は蟲が巣食っているからこそ、華やか、艶やか、パッとこころを攫う…あるいは、何も言わずただそばにいる、そんなスイーツが…できたらいいな。


新しい病院に行き
今、ひと休み…


どうか、どうかこの世界から、選択肢すら与えられず血を流すような暴力が、少しでも減っていってください。

ひとり凍えている、あなたに、ぬくもりが与えられるようになんて言えない。わたしができることはない。けれど、あなたを感じている人がひとりでもいたらいい。



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