読書感想文 臣女 吉村萬壱
妻が大きくなり、それに伴って食事や排泄の問題が発生するという設定。だいぶ面白い。割と恋愛や主人公をリアルに書いているのがいい。普通に不倫するし、不倫相手と別れた後にブチギレたりするし。なんかギャグっぽいところもそういえばあったな。異形との愛と聞くと、美女と野獣的な感じなのかと思うが、割と主人公も頭を抱えているし。リアルだ。
最後の妻との過去回想は泣けた。なんだか介護小説をずっと読んでるような感覚だったのだが、ああ、これは恋愛小説なんだなと思った。大きくなる意味がわかった時、感動する。これまで割と汚かったのに急に綺麗になって……。
クチュクチュバーンが良かったので、この本も読んで見た。だいぶ印象が違う。クチュクチュは割と意味不明な世界観での暴走だった。なんだか飴村行の「粘膜人間」や遠藤徹の「姉飼」のような感じ。でもこっちはコントロールされているような気がした。もちろん女がデカくなるし、それに伴う排泄問題などの異様さはある。ただ、終盤における奥さんとの過去回想でなんだか全てがしっくりくる。そしてそれが感動につながっているのだった。クチュクチュもラストの一言は上手いのだが、それは読者を突き放すような衝撃がある。しかしこちらは、物語としての完成度(エンタメ度?)を上げる役目を担っている気がする。どっちが良い悪いではなく、読者の好みの問題な気がする。というか、クチュクチュから臣女までにだいぶ時間が経っているので、作風が違うのは当たり前か。
リアルな価値観の恋愛小説を読みたい人、異様な話を読みたい人におすすめ。