やし酒つくりを連れ戻しに死者の街へ「やし酒飲み」
自分専属のやし酒の名人が死んでしまったので、連れ戻しに死者の街へ向かうというあらすじ。作者はエイモス・チュツオーラ。アフリカの作者である。
何だか奇想天外な話である。主人公は、やし酒が大好きで、親が自分専属のやし酒の名人をつけてくれる。ここまで読むと、ああこいつはボンボンなんだなと思う。しかし、読み進めると唐突に自分は神だと言い始める。鳥に変身するし、死神を捕まえるし、無茶苦茶である。
主人公がこんな感じなので、世界観も奇妙である。イケメンがいると思ったら、その姿は借り物で、手足や皮膚を返し、最終的には骸骨になったりするし、主人公たちが木の中に何年も棲む話も出てくる。
全編を通して、神話や民話のような印象を受ける。所々、教訓のようなオチがあるし、民話特有の特殊な規則に基づく世界観のようなものもある。
それなので、神話や民話として読めば、違和感はないのだろう。ただ、普通の小説として読むと無茶苦茶である。時々、その無茶苦茶ぶりに笑ってしまう。
こんな話もあった。主人公が裁判所で事件を裁く場面。ある男が金を借りたのに、返さない。それなので取り立て屋を呼んでくる。しかし、話は進まず、喧嘩になる。野次馬もやってくる。喧嘩は続き、突然金を借りた男が自殺してしまった。取り立て屋は天国に取り立てに行くために、自殺する。そして、それを見ていた野次馬も、喧嘩の顛末が知りたくて、自殺する。
これを誰が有罪か裁くのである。
いや、どんな事件やねん。
この本を読んで、もっと気楽に小説を書いて良いんだと気付かされたのだった。
小説を書くのに行き詰まっている人、民話のようなファンタジー小説を読みたい人にオススメ。