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「私のひとひらの願い」 …詩
私の願いを
春の野のあの蝶の羽ばたきに
ひとひら、混ぜたくても
混ぜたいと思ったその時には
春は、いない
私の願いを
夏の空の眩い輝きの中に
ひっそりとひとひら、
混ぜたくても
その時の空には
枯れた陽があるだけ
私の願いを
秋の落ち葉の舞い散る中に
ひとひらだけ、紛れ込ませたくても
黄昏色の山野の
美しい光景は
目の前には
雪の真白(ましろ)が
のっぺりと横たわる
時を移した願いを
たったのひとひらさえも
願えることもない
悲しみだけが
冬に残った
その悲しみを
降りつ、積もりつ来る雪の
真白(ましろ)のひとひらに
混ぜてみよう
小さい私の
小さな胸の
小さな小さな、願いの替りに
溶け出していずれ
何処かに消えていく
雫の悲しみを
(星影 流)