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フツーの人こそ選挙に出よう!『選挙に出てみたくなる出馬超入門』第1章まで無料全文公開!

2022年8月31日にICE新書より出版された書籍『選挙に出てみたくなる出馬超入門』(著:佐藤 孝四朗)の第1章までを無料全文公開いたします!

はじめに――政治家には誰もがなれる

 職業を選ぶ際に、「政治家」が選択肢にある人は少ないように思います。それは、イメージとして、親族に政治家がいる人(所謂、二世議員)や著名人、超エリートでもなければなるものではない、なれない、と捉えられていることが多いからではないでしょうか。また、政治は縁遠い世界だと、コネも何もなければ接点すらない自分には無理だろうと思っていませんか。

 かつてはそのイメージを裏付けるように、選挙には、地盤(支持組織)、看板(知名度)、鞄(資金)の「三バン」が必要、と言われてきたことも事実です。

 しかし昨今は、地方を中心として、選挙も政治家も進化してきています。

 「地盤」は自らで築けばいいのです。自分の強みが「看板」になります。「鞄」は、やり方によっては、実はそれほどなくてもいいのです。政治の世界との接点も、活動していれば出来てくるものです。

 重要なのは「志」です。「国を、地域を、良くしたい」と思ったら、政治家への道ははじまるのです。

 本書では、政治家を身近な存在と捉えていただくために、政治家とはどんな人たちで、どんな仕事をしているのか、から、政治家の報酬、活動時間や必要な条件等を通して、現実の「政治家」を解説します。そこで政治家に興味をもった方へ、いざ出馬の決意を固めるために、固めた後に、やるべきことを具体的に解説していきます。

 本書は、立候補を決めた方のための選挙マニュアル本ではありません。志をもちながらも尻込みしている方へ、政治家を目指すこと、出馬することの背中を押す本です。、

 政治家になるためのハードルはそんなに高くはない、ということを紹介していきます。

 一人でも多くの方が、「政治家」の道に挑戦してくれたら嬉しく思います。

第一章 政治家を身近に捉える

∟政治家とその選ばれ方

 政治家とは、職業として政治に携わっている者のことであり、一般的に国会議員、国務大臣並びに地方公共団体の長(知事・市区長・町村長。首長とも呼ばれる)及び議会の議員などが政治家と呼ばれます。

 また公職選挙法や政治資金規正法においては、その適用対象となる「候補者、立候補予定者、現に公職にある者」を総称して政治家と呼びます。

 国務大臣は民間人から起用されることもありますので、出馬を考える本書では、選挙で選ばれた首長及び議員のことを政治家としましょう。

 日本の国政では、直接選挙で選ばれた議員で構成される議会が首相を指名し、その首相が内閣を組織する「議院内閣制」をとっています。

 これに対して地方自治体では、首長と議会議員ともに、住民が直接選挙で選ぶ「二元代表制」をとるよう定めています(憲法第93条)。

 二元代表制は、立法府を構成する議員と、行政の長をそれぞれ住民が選挙で選ぶ制度で、議員は法律や予算などを審議、決定する権限を持ちますが、その執行は行政の長が責任をもつため、立法権と行政権の分離を徹底できる利点があります。

 欧米の地方自治体では、議院内閣制をとる国が多く、フランスでは議長が首長を兼ねて行政に責任をもっているほか、アメリカでは議会が民間人らを行政の実質責任者に指名する「シティ・マネージャー」制度をとっている自治体が多いようです。

 日本の地方自治体は、人口の多い横浜市から、人口200人の離島の村まで、全国一律で二元代表制をとっています。どちらも民意が反映された住民の代表ですが、互いに対立することもあり、大統領制にちょっと似ています。

∟政治家の仕事は大きく2つ

 さて、では政治家とは具体的に何をするのでしょうか。

 ズバリ、政治家の仕事とは「法律や条例を作る」ことと「予算を決める」ことです。

・法律や条例を作る

 法律とは、国会の議決を経て制定される国法の一つです。つまり国会議員たちが衆議院および参議院といった国会の場で議論を重ね、国会の名のもとに制定されるのが法律です。そして法律は、憲法の次に形式的効力を有しており、国民はそれらに拘束されます。なぜなら、国民が選挙によって選んだ国会議員が作ったルールであるから、間接的に国民が作ったルールであり、つまりは国民は自分たちの作ったルールには従わなければならない、というわけです。

 日本の法律は、民法、刑法、会社法などがあり、現在でおよそ1900件あります。国民はそれらの法律に従わなければなりません。

 条例とは、普通地方公共団体が制定する自治立法です。地方公共団体の議会の議決によって制定します。法律が国会の議決によるのと同様に、民主的に選定された地方議会議員による議会での議決によって制定されるため、条例はその地方において住民に対する拘束力を持ちます。こちらも、住民が選んだ議員の作ったルールであるから住民は従う、というわけです。

 とはいえ、上位法規である法律(国会が作る国民総意のルール)の範囲内であること、憲法の規定に抵触しないものであることが必須とされ、「法律の範囲内」というのは、法令と条例の対象事項と規定文言を対比するだけではなく、それぞれの趣旨、目的、内容、効果を比較し、各々の間に矛盾抵触がないかどうかによって決定すべきとされています。

・予算を決める

 次に予算とは、一般的には個人、団体の収入および支出に関する予定的計算のことを言いますが、政治家の仕事においては、国または地方公共団体の1会計年度(4月1日より翌年3月31日まで)における収入および支出の見積り、すなわち歳入歳出予算を言います。

 国においては、内閣は毎会計年度の予算案を作成し、国会に提出してその審議を受け、議決を経なければなりません(憲法第73条5号、憲法第86条)。

 また予算は、先に衆議院に提出しなければなりません。これを衆議院の予算先議権と言います。また議決における優越的地位も認められています(憲法第60条)。つまり予算はまず衆議院で審議され、可決後に参議院に送付され、参議院においても同様の審議を行い、参議院本会議で可決されると成立します。審議期間は衆議院には制限はありませんが、参議院は衆議院の可決した予算を受け取ったのち、国会休会中の期間を除いて30日以内に議決しないときは、衆議院の議決が国会の議決となるという自然成立の規定があります。また、参議院が衆議院と異なった議決をした場合は、両院協議会を開いて妥協案の成立を図りますが、それでも意見が一致しないときは、衆議院の議決が国会の議決となり、予算は成立します。

 予算の執行は次年度の4月1日からですので、3月中に成立しないと、恩給費や生活保護費など特定期日に支給すべき経費に支給延期、後払いなどが起こり、行政機能が停止する恐れがあります。これを避けるために、経常的経費と公共事業の継続案件など、国政運営上必要不可欠な経費を内容とする、一定期間に係る暫定予算制度が設けられています。この予算も議会の承認が必要です。

 一方、地方自治体は、地方自治法第218条により本予算が年度開始前までに成立しなかった場合や、地方公共団体の分置廃合があった場合など、必要に応じて暫定予算を編成することができ、地方公共団体の首長は、特に緊急を要し議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるときには、専決処分で暫定予算を成立させることができます。

 国の予算は、国の基本的経費をまかなう一般会計予算、特定の事業や資金運営のための特別会計予算、政府関係機関予算、財政投融資計画に分かれます。さらに通常の本予算と本予算の内容を変更する補正予算、先述しました確定予算と本予算が成立するまでの経費のための暫定予算などの別があります。なお憲法では、この度のコロナ禍のように予見しがたい予算の不足にあてるため、予備費の制度を認めています。

 政治家の仕事とは、大きくはこの「法律や条例を作る」「予算を決める」ことですが、この他にも、国会議員には、内閣総理大臣を選ぶ、条約を審議する、国会議員も地方議員も、行政をチェックする、請願・陳情など国民や住民の声を国政・地方政治に反映する、などの重要な仕事があります。

∟政治家を目指すのはこんな人

 政治家の人数は、日本全国でどれくらいいるのか、内訳とともに確認してみましょう。

 総数で実に3万5千人超。けっして少なくない人数です。

 では政治家になりたい人とはどんな人でしょう。

 「出たい人より出したい人」とよく言われますが、「出たい人」と「出したい人」がマッチしていれば一番いいわけです。

 実際には、下記のような気持ちをきっかけとして、政治家を目指す人を多く見てきました。

・世の中をよくしたい

 現状の政治や社会に不安や問題意識をもち、「自分の力で変える!」と政治家を志す人。

・人の役に立ちたい

 自分の力ではどうしようもできずに困っている人を見て、その人たちの力になりたいという思いから政治家を目指す人。

・地元に恩返しがしたい

 自分がお世話になっている地域が抱える問題を解決したい、街を活性化させ、地域の魅力を再発見するために、その先頭に立って働きたいと願う人。

 どうでしょうか。政治家に抱くイメージと違っていませんか。

 特に地方議員には、郷土愛の強い人が多いです。つまり権力が欲しい、ステイタスが欲しいというよりも、他人よりもちょっぴり正義感や義侠心が強い人たちが、政治家を目指し、政治家になることが多いのだと思います。

∟政治家の給料事情

 続いて、政治家の給料、議員報酬についてご紹介します。

 政治家は年収が高い、というイメージを多くの方がもっていると思いますが、実際は議員によってさまざまです。

 まずは国会議員ですが、平均年収は2200万円とさすがに高額です。

 都道府県会議員については、都道府県によって異なります。地方議会議員の報酬はどの都道府県議員も年収にして1000万円プラスαです。ちなみに東京都議会議員の年収は、約1370万円。大阪府議会議員の月の報酬は、条例では93万円ですが、現在30%カットで65万1千円(もっとも次の改選時期までだそうですが)。年収は約1210万円。

 市区議会議員も市区の大きさや財政事情によって大きく異なります。上は政令市でもある横浜市の1600万円から、下は夕張市の260万円まで、その差はなんと6倍以上となっていますが、全国平均では700万円くらいです。

 町村議員の平均年収は概ね250万円くらいになります。

 想像していたものより高かった議員報酬もあれば、想像以上に少ない、と思われた議員報酬もあるのではありませんか。

*政令指定都市(指定都市)
 人口50万以上の市のうち政令で指定された市。多くの分野の行政サービスの権限が都道府県から譲渡され、市が主体となって行政を行なうことができる。令和4年の時点で、全国20の市が政令指定都市として運営されている。

∟政治家の活動日数

 ここで注意すべきは、議員は週休二日制ではない、ということです。

 形式的な議会活動を計る指標として、平均会期日数があります。平均会期日数は、通年会期制を採用している議会を除き、国会では通常国会が150日、臨時国会が80日として、230日となります。都道府県議会では平均で約110日。市区議会では約90日、町村議会では約40日です。なお地方議会議員は、本会議や委員会への出席や視察などの議会活動のほかに、政策課題の調査研究、住民への議会報告、住民意思の把握のための活動など、有権者の代表としての必要な活動も求められていますので、平均会期日数には、視察や議会外の活動日数は含まれていないことに留意する必要があります。

 また、専業の地方議会議員の割合(専業率)は、2019年国立国会図書館発行の調査と情報「地方議会議員の報酬・手当等の待遇」によりますと、データが得られた38道府県議会で平均53.3%。最も専業率が高い議会は高知県の97.3%。最も低い議会は岐阜県の17.4%で地域によって大きく異なっています。市町村議会の専業率の平均は、市議会では43.2%、町村議会では21.9%でした。

∟政治家は兼業OK。誰にでもチャンスあり

 ここまで議員報酬、会期日数(勤務日数)、専業率について述べてきましたが、お伝えしたかったのは、ほとんどの政治家が兼業可能だということです。国会議員が政府側の役職(大臣・副大臣・政務官)に就いた時には兼業禁止となりますが。地方議員となると議会の会期外の時間を活用し、副業で生計を立てることも十分可能です。

 当たり前のことですが、政治家になるためには、選挙で当選することが必須であり、これを突破しなければなりません。大変なことですが、お金もコネも持った二世政治家がいる一方で、何の後ろ盾もない政治家がいるように、当選チャンスは誰にでもあるのです。

 政治家になるためには、日本国籍を持ち、衆議院と地方自治体の議員になるには25歳以上であること、参議院議員になるには30歳以上であることで、選挙に立候補できます。立候補に、特別な資格や学歴は必要ではありません。

 国や各地方の人々の生活に関わる施策を議論し、自分の考えもしっかりと主張ができて、国民、地域の住民の声を聞くことが求められるのです。自分がどういう政治家を目指しているのか、どんな考えを持ち政治に取り組んでいくのか、より多くの人に理解してもらえるように話す力が必要になります。

 国や地域を良くしたいという想いを持ち、リーダーシップがある方にとっては大変やりがいのある仕事であると思います。

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無料版はここまで。以降では選挙で当選するための「選挙の三バン」に代わるものや具体的な出馬手順など、ベテラン議員秘書が詳しく解説していきます。

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