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「やるしかねぇ!」乾燥野菜でアイシャドウを作った高校生の意地

広島県福山市にある福山暁の星女子高校2年の3人が、野菜製アイシャドウの開発にトライしました。

活動が停滞したり、助言でやる気が戻ったり、発表が迫るなか「やるしかねぇ!」と奮起したり…。山あり谷ありの開発ストーリーを語ってもらいました。(敬称略)

福山暁の星女子高校のチーム「CLESKII」の(左から)  藤岡真優 さん 後藤陽菜さん  占部瑞樹さん


野菜製アイシャドウにチャレンジしたのは、同校の2年生(当時)の3人で作るチーム「CLESKII」。「環境と体にやさしい、マイクロプラスチックを使わないコスメをつくりたい」という思いからスタートしました。

高校生のアイデア実現プロジェクト「MIRAIB.」(ミライブ)に参加し、ビジネス経験豊かなプロフェッショナルの助言をもらいながら、アイデアをカタチにするべく、進めていきました。

藤岡 「福山暁の星女子高校がMIRAIB.プロジェクトに取り組む10校に選ばれました」と先生から聞いて、「すごいな!」と思って参加することにしました。

後藤 藤岡さんと2人で参加しようとしていたら、占部さんも入ってきてくれました。元々3人で仲良くしてたので、一緒にやろうと「CLESKII」を結成しました。

藤岡 メンバー全員が興味のあった「美容」に関連する事業のアイデアを出していきました。最初は、市販の化粧品に含まれるマイクロプラスチックが人体や海洋に悪影響を及ぼしていることに目をつけ、マイクロプラスチックを使わない口紅を作ろうと考えました。

中学3年の頃、自然由来の成分でできた口紅を開発した環境活動家・露木しいなさんが学校で講演してくれたことがヒントになりました。

藤岡:話し合ううち、コロナ禍でマスクをしていて目元しか外に出ていないのだからアイシャドウを作ろう、と方向性が決まりました。でも高校生の私たちがイチから化粧品を開発するのは難しくて、プロジェクトは2ヶ月くらい停滞しました。

足踏みしていたプロジェクトですが、再始動するきっかけがありました。

占部 藤岡さんと後藤さんはマンドリン部が忙しくてMIRAIB.の活動ができないことも増えていきました。モチベーションも一時だだ下がりしてました。情熱を保つのって難しい……と思ってましたが、先生からのアドバイスがきっかけで、チームにやる気がもどってきたんです。

藤岡 マンドリン部の顧問にプロジェクトの停滞を相談したんです。そうしたら「野菜で化粧品をつくってみたら?」とヒントをくれました。その言葉で、「実際にやってみよう!」と野菜メイクの開発を始めました。そうしたらどんどん楽しくなっていったんです。

「野菜アイシャドウ」の材料は乾燥させた野菜。すり潰して粉にしたそうです。

理科室に集まって、チームのメンバーで乾燥させた野菜をすり潰してつくった野菜パウダー

藤岡 使いたい野菜をみんなで買ってきて、後藤さんが自宅で乾かしてくれました。選んだ野菜は、ほうれんそう、かぼちゃ、にんじん、紫キャベツ、パプリカです。

後藤 玉ねぎなど目や肌に刺激の強そうな野菜は避けて、発色のよさそうな野菜を選びました。野菜はピーラーで薄く切って、ベランダで干しました。でも、太陽の熱に晒されると野菜の水分が出てきてしまい、うまく乾きません。そこで、室内で自然乾燥させました。キッチンペーパーを敷いたトレーの上に野菜を並べて、1週間ほど干しました。

藤岡 乾かしている様子をインスタのストーリーに投稿して、クラスメイトに見守ってもらっていました。イチゴを乾かそうとしたら、乾くより前にカビが生えてしまって。カビが生えない野菜や果物の皮を探すことも大事なんだと気づきました。

後藤 乾いた野菜を学校に持っていって、理科の先生から借りた実験用の乳鉢ですり潰して粉にしました。

藤岡 ちゃんとサラサラの粉状にできたよね。

野菜アイシャドウを実際に塗ってみた様子

後藤 粉の状態のままだと肌に馴染まないので、ホホバオイルと混ぜてアイシャドウにして、まぶたに塗ってみました。でも、満足のいく発色は得られませんでした。

藤岡 ほうれん草の緑とかぼちゃの黄色を、グラデーションになるように塗ってみたんですが、ほとんど色がつきませんでした。代わりに香り付きのオイルと混ぜたら、今度はベチョベチョになって。他にいい方法がないかもう少し続けたかったんですが、MIRAIB.の実践発表会の日がちょうどマンドリン部の演奏会の日と重なって、活動が両立できない日が続いて試す時間がないまま、実践発表会の日が近づいてきました。

後藤 MIRAIB.の実践発表会まで時間がなくて、すごく焦りました。

藤岡 諦めモードにもなりましたが、「やるしかねぇ!」って思い直して発表資料をまとめました。

オイルと混ぜて、パッケージに入れた野菜アイシャドウ

お気に入りの「野菜アイシャドウ」を教えてもらいました。

占部 色が濃く出るのが面白かったので、紫キャベツがお気に入りです。

藤岡 ほうれん草がお気に入りです。乾かし始めた時は、水分が多くて諦めていたのですが、1週間放っておいたらカピカピになって、粉にしたら抹茶みたいな香りもして、いいな、と思いました。

後藤 かぼちゃがお気に入りです。最初は硬くて粉にしづらいんですが、長い間すりつぶして粉にできた時の達成感がありました。

MIRAIB.のサポーター(※)の大人たちと交流できたのも楽しかったそうです。

後藤 セッションの最初の頃は、完成イメージからは遠いアイデアの段階で見せていいのかな、と緊張していました。

藤岡 サポーターの皆さんが、すごく優しかったことを覚えています。プロジェクトがそれほど進んでいなくてもアドバイスをいただけるので、毎回セッションが楽しみでした。

※サポーター:MIRAIB.プロジェクトに参加し、生徒たちの相談相手になる企業人たちのこと

後藤 先生とのコミュニケーションも増えました。MIRAIB.を始める前は、池田先生(同校のMIRAIB.プロジェクトの担当の先生)と話す機会はほとんどなかったけど、これをきっかけにたくさん話すようになって、仲良くなれました。

「野菜アイシャドウ」で、試してみたいことがまだまだたくさんあるそうです。

後藤 野菜アイシャドウが完成したら、商品化して、同じ世代の子に使ってもらって広めていきたいです。色ごとに、使った野菜をかたどったパッケージに入れて販売したいです。

次にMIRAIB.に参加する時は、時間に余裕もあると思うので、色々な野菜や果物をもっと粉にしてみたいと思っています。まだ構想の段階ですが、農家から商品にならない野菜や果物をいただいて、それを原料にしたアイシャドウを作りたい。スイカなど、旬の時期のあるものも使いたいです。

藤岡 私たちの学校がある福山は、バラが有名な街なので、商品にならないバラを粉にしてアイシャドウにしてみたいとも考えています。香りも良く、白や青などさまざまな綺麗な色が出せそうです。

占部 私は全力で、2人のサポートをしたいと思っています。

Instagramに掲載されている、野菜アイシャドウづくりの様子

「CLESKII」のみなさんは、これからもInstagramで活動を発信していくそうです。

社会実装で世界を変える。探求の課外活動「MIRAIB. 」オンライン説明会


探究活動を実践に移し、社会実装する部活動プロジェクト「MIRAIB.(ミライブ)」2022年度の参加校を募集します。「ミライブ」は、中高生たちが、社会人サポーターのサポートを受けながら、自分たちのアイディアを「社会実装※」していく課外活動です。
※ここでいう社会実装とは、あらゆる探究を社会実社会で使ってもらうこと、役に立てることを目指します。

以下の日程で学校向けのオンライン説明会を開催いたします。
■2022年度「ミライブ」学校説明会
・5月30日(月) 20:00-21:00
・開催:オンライン(Zoom)
・内容:「ミライブ」についての概要、実施スケジュール、質疑応答など
説明会では、昨年度の導入校の先生から、MIRAIB.に参加したご経験についてお話しいただく予定です。正解も前例もないなか手探りで進む生徒たちの様子、生徒に伴走しサポートし続けた先生や社会人サポーターの話、そこから生徒たちがどんな学びや成長を得たのかなど、事例を共有させていただきます。是非お気軽にお申し込みください。
<お問い合わせ>教育と探求社 鎌田 MAIL:kamata@eduq.jp
<2022年度 実施概要>
事業名:部活動プロジェクト MIRIAB.(2021年度三菱みらい育成財団助成プログラム)
対象:高校(25校・約500名)
人数:1校につき生徒有志1チーム以上の参加。1チームの人数は自由(1~4名程度を想定)※参加人数は相談可
参加条件:やりたい企画もしくは、すでに企画案があること
実施方法:部活動として各校で実施(活動時間は各校の裁量で)。サポーターとのセッション(定期開催。時間は相談)はオンラインを想定。実践共有会は年3~4回を予定(オンラインまたはリアル開催)
期間:2022年6月中旬頃(予定)~2023年3月
場所:通常教室およびリモートで実施可能(校外での実践の可能性あり)
教材:ワークシート、教員用指導ガイド
※活動テーマによって必要になる備品は、別途ご準備頂くようお願い致します
費用:無償 ※この事業は三菱みらい育成財団による助成事業です。

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