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ブランディング裏話【case: FR0M SCRATCH】

ブランディング、大変ですよね。
インハウスデザイナーにとってもきついし、外部からの参画でもきついです。どちらもきついことには変わりないですが、見えている世界が全く違うので苦悩ドメインが異なる気がしてます。
私も、いつかは、つらくない境地に達したいです…。まだまだ未熟な青二才ですが、記事を書いてみます。

今回は、わりと小手先の、かなり狭義の意味における、brandingのcase studyの話をします。立ち上げ後の混乱[1]期にてjoinしたin-houseのdesigner目線です。
題材はこのnoteが含まれるチーム「FR0M SCRATCH」です。(マガジンフォローしてね💎)

[1] 混乱 … 辞書的な意味では「何が何やらわからないほど、乱れ入り混じること。」となってるが、今回はアイデンティティ確立前、成熟前段階の意味で使用している。

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ブランディングを始めるとき、私は2次元デカルト座標でよく考えます。活動、チーム内評価印象、外部者視点の印象、そういったものそれぞれについて、「静」か「動」の1軸、「ポップ」か「高級」かの1軸で、Ordinal scaleではなくRatio Scaleにて複合的に判断していきます。

最終設定値は、チームの成熟度でも変わってきます。チームとして文化が確立されているようならもちろんそれに合わせますし、そうでなくて、今回のように混乱していて、やっていることと活動内容がまだまだ整理がついていない場合は、まずはその整理から始めることもあります。この辺はin houseとしてjoinすると、radical changesを求めなくていいのでteamに対してgradualな働きかけができますし、細かく感覚をすり合わせられるので利点です。
後者の場合、実はすり合わせというより、自分の持つ一般イメージを35%くらいの割合で信用して、考えてもらう方向性をガイドすることもあります。これには批判もあるでしょうが(実際35%はかなり高い数値だと思っています)、難しいところなのです。私もこんへんはずっと手探りでやっています。とても柔軟でいいところだと思っているので、今回に限ったcase studyだと思ってください。

こういう中で最初の2軸の中での点が定まってきます。ちなみにこの点は、今後のチームのうごきや活動内容でコロコロ変わっていいものです。むしろそれに合わせて動くと邪魔ですし、あくまで自分のメモだと思って、in houseの場合は最初の調査以降あまり外に出すものではないと思ってやっています。客観的視点を入れた複合的なものであることを忘れないようにしましょう。

ちなみに、初期のFR0M SCRATCHでは、external publishingではアカデミックな方面も意識していたため、2つ考えるという方針で決定しました。つまり、普通のwebサイトの方面としては「動・ポップ」でありつつ、内部コンテンツに「静・少しポップ」を含むという少し変則的なものになります。
私は初期参画時、「0からラーメン」を作るという活動(当時は“一からラーメン”という名前でしたが)は、アカデミック方面が強いものだと思っていたので、徐々にそっちに倒していくつもりでした。つまり、もっとデータなどをとって、わりと真面目な研究分野に倒れていくと予測していたのです。

ところが、それはかなり大きく外れてます。この「外し」をしないように、デザイナーはなるたけ多くの経験[2]を積むべきと私は考えるのですが、注意するのは経験したからと言ってその目線で見ていいかというのは違くて、無知のベールで見たり、in houseであっても一歩引いて俯瞰できるようにしたり、軌道修正を常にし続けるとか、チームとの対話を大事にするとか、とにかく観察して、次にくるものを予測して手を動かし続けるのです。

[2] 経験 … ここでの経験は広義の意味での経験。画面に向かうだけでなく、音楽活動をするとか、料理をするとか、スポーツをするとか、海外に行くとか、本を読むとか、人間関係を楽しむとか、自分と向き合うとか、もうなんでも、とにかく体験と経験はおおいほどいいと、私は思っています。generalな視点を手に入れるため、知識も様々あったほうがいいですし、有名YouTuberなど俗的コンテンツにも触れているようにしています。

外したと感じたら、軌道修正します。現実に即していきます。
最初期の方向性などが定まったら、次に目に見えるものをいろいろ整えていきます。今回はwebサイトがメインの仕事だったので、いろいろ考えながら作っていきます。

このへんで、FR0M SCRATCH特有の問題が出てきます。FR0M SCRATCHではクリエイティブなことをしていく活動でもあるのですが、スキルが高いメンバーだけではなかったので、ブランディングまで手が回らないことが多々ありそう[3]だと、チームにいて感じました。

[3] ブランディングまで手が回らない … 様々な要因により、画面のデザインをフロントエンドの実装担当エンジニアが行うとか、デザイナーがいないのでとりあえずMDLを使って組むとか、いろいろ考えられます。
ここで注意すべきは、一概にそれが悪いわけではありません。ブランディングはただの手段の1つにすぎません。かけたコストのリターンが数値化しにくいです。初期から導入しても、その後リブランディングすると案外かなりのリソースが持っていかれるため、コストは変わらないか、むしろ高くなることもあります。しない、という選択肢を怖がるべきではないと、私は思っています。もちろん、デザイナーは極力意識しながらやっていくべきですが…

FR0M SCRATCHの方針として、担当のメンバーの主体性を大事にしています。一番近い一般用語でいうと、自己組織化な気がします。ただし完全なスクラムチームではなく、それぞれ担当のリーダーがいます。これはチームリーダーなりに考えた大切な文化です。それを破壊するものではいけません。ただ、必ずしもその分野で専門的にやってきている、知見や経験がある、とは限らないのが、普通の組織との違いです。

閑話休題。スクラムなチームでは、スプリントバックログというのを使うことが多いと思います。課題を無理にassignしないで、1つ終わった人から次の担当する箇所を選んで…みたいな運用なことが多いと思うのですが。これが機能するのは、会社という決まった時間、モチベーション、ある程度の制限があるからです。FR0M SCRATCHはそういった制限がないため、普通のスプリントバックログでは機能しにくいです。リーダーは前回の記事でも悩みを書いていたように、この辺の差異で悩んでいるようです。

ここからは同時並行で仕事をします。まずは、ブランディングの必要性についてメンバーに周知します。ちなみにここで私は失敗してます。なぜブランドが必要なのか?
それは大きな抱えてい続けたい永遠の課題ですが、とても狭義な、現実目線でいくと「FR0M SCRATCHとしてのアイデンティティを確立したい」からです。内部的には今回の場合「均質的クオリティを保つため」ですね。

デザインの作業をしていると、よくマクドナルドやAppleのような、「十分に洗練されて周知されているモデル」を考えてしまいがちですが(たしかにかっこいいですしね)、現実は厳しいです。
引き算のデザインは大切ですが、十分に残らない引き算はだめです。何が伝わるか、伝わらないのか、アイデンティティの周知をまずは考えながらやっていくことが必要です。

なぜ私が失敗したかというと、こういう抽象的な話をしすぎたからです。このチームでは「ブランディング」という言葉を出すべきではありませんでした。言語の解釈違いはチームとしての作業効率ダウンや分断を引き起こす原因になるので、ペパボのように辞書を共有するのも大事なのでしょう。

結果として何が残ったかというと、形式的で使われないレギュレーションと、曖昧な線引きです。そのチームから発信されるものを1人ですべて確認するのは無理があります。すべての成果物のクオリティの責任を負うのも現実的ではありません。優しい終身の独裁者にはなれなかったのです。
ですから、最初からブランディングを導入するのではなく、徐々に、チームとして一緒に文化ごと成長していけばよかったのです。これは大きな失敗でした。
ただ、初期段階での狙いももちろんあります。私は大きくスケールする未来を描いていたので、新規の障壁をさげるため、クリエイティブを引き出すための制限を設ける意識で作りました。

しかし現実問題、使うカラーパレットやフォントを整える必要はあったのです。これを同時並行で作っていました。
私はそういう仕事の仕方しか知らないので、色を感じないチームで作業はできません。きっとここでは、私が本当に経験すべきはそこだったのでしょう。惜しいことをしました。
こうして人間は経験や体験を逃していくのです。自分の傲慢さゆえの思っても見なかった選択肢、想像力の欠如が人間としての成長を阻んでしまうのでしょう。

ここで私は妥協します。
私はいつも、こんな感じの、theme, blackish, whitish, basisを選んでから出発します。以下はworkの一部です(たふみ名義で対外発信されているものです)。

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私はあまり#000や#fffは使いません。というのも、themeをまず決めたら、HSLのLを動かして白や黒のベースを生成していることが多いからです。その際、微妙に色を残すようにしています。最終的に、基本的には5色できます。

しかし、このチームでは、テーマカラーが黒になり、私は他のクリエイターが作業がしやすいことを考え、また成果物がFR0M SCRATCHと合致しやすいように、作業の差し戻しをしなくていいようにと考え#000をテーマカラーとしてしまいます。

これが大きな失敗でした。

このような逆算的決定を行うべきではないです。それをわかっていながら、現実的には…と無駄に考え、このような決定をしました。このときはまだFR0M SCRATCHらしい色が、私の力不足で見えていなかったのも大きいです(いまならきっと深い青か緑を選択します)。
仮に黒だとしても、#000はほんとに使いづらいのでもうちょっと考えたほうがよかったです(といいつつ、これも逆算的に考えてしまっているのでよくないです。ソフトウェアエンジニアを兼ねたデザイナーはこういうものの考え方をしてしまう気がしていて、利点でもあるのですが私はとても自分に危機感を覚えています)。

そしてこのままカラーパレット作りに突入してしまって、私の作業は荒れに荒れることになってしまい、あとあとの作業にかなり響いてきてしました。色選びはもっと慎重になるべきですね…
あと、黒をテーマに選ぶと、それ以外を虹色にしがちです。実際、私もそうなりました。そうしてしまいました。よくないアンチパターンだとしっていたはずなのに、やるんですよ。それぞれの個性が、とか、プラットフォームとして、みたいなことを言い出すんです。これは、大体の場合において、アイデンティティがきちんと確立できてないことが多いです。全体を見れてないんです。なぜそれを、そのブランドで統一してやる必要があったのかをきちんと詰められてないとこうなります。

むしろ、ここで詰めるべきはロゴの使用方法やタイポグラフィのもっと具体的なことでした。それも詰めてはあるのですが、共有の仕方が難しいので(どういう場合にロゴを改変してもいい、この場合はだめ、など)、肌感のすり合わせを内部で時間をかけてやっていけると思ってましたが、改めて感覚知でない、言語による感覚の共有の大切さ、自分の未熟さを省みることになりました。

この失敗の裏には、ひとえに私の経験[4]不足があります。何が強みになるか、社会的に何が求められるのか、そういうところを見極めることができなかったこと、責任を負おうとしなかったこと(責任を持たないブランドマネージャーは必要ありません。それはブランディングとは呼びません)、確固たるアイデンティティの提供、地盤作りができなかったこと、あげればキリがありませんが、やはり文化が多様に変化する中で文化ごと、まるごと作り上げるサポートができるほどの人間力がないうちは、かなり難しいことな気がしています。

[4]経験 … この経験はブランディングやデザイン、クリエイティブにおける経験値のこと

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幸いなことに、FR0M SCRATCHは成熟期を迎えようとしていると私は感じています。
メンバーそれぞれに微妙に異なる文化が見えてきていて、大まかな方向性がきちんと言語化可能で、スキルもあがりつつあり、一番大事なのが、私が、自分たちのコンテンツの強みがようやく見えてきたことです。

これを踏まえて、今度は慎重に、リブランディングを行っています。
ブランドとは、小さな火種みたいなもので、デザイナーの仕事は、それを吹き消さないように、大きく燃え上がらせて、みんなで囲めるキャンプファイヤーをつくることです。

みんなで囲めるというのは難しいです。1人だけで作るなら、その人がアイデンティティですのでいいとして、チームはその人らしさ=チームではないのです。らしさを常に考え、updateし、そのらしさをよせ集めることで、差異によってしか表現できないものなんです。だから私が「らしくない」と思っても、きちんとその裏にあるものを尊重し、くみ取り、枠組みに取り入れる必要があります。この活動を通じて、何を発信していくのかとも、大きく関わるところがあります。

音楽や、一人のフォトグラファーの写真に比べて、「らしさ」を作るのがFR0M SCRATCHは難しいと感じています。今はただの「個の寄せ集め」でしかありません。コンテンツで勝負をかけられるくらいに成熟してきたので、ここからがようやく本番かもしれません。

明日はもっといいものを作ろうね。

おわり

サムネイル: 昆布取りに北海道へ行った時、小樽市内で見つけた「のらもじ」

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