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生活者見立て通信 編集部こぼれ話~#002 お金をかける意味を見出したい、“クリエイティブな、ミニマル賢者”~

QOのプランナーがマーケティングに関わる方にお届けしている「生活者見立て通信」。

本連載は、生活者見立て通信編集部が、執筆に関わったプランナーへのインタビューを通じてこぼれ話を掘り下げる企画です。どのようにテーマを選び、見立てを練り上げたのか。どんな苦労や学びがあったのか―――レポートでは納めきれなかった裏話をざっくばらんに伺います。
 
第二回のテーマは「お金をかける意味を見出したい、“クリエイティブな、ミニマル賢者”」。
今回執筆した土師さん、秋山さんのお二人がインタビューに応えてくれました。

📝生活者見立て通信#002「お金をかける意味を見出したい“クリエイティブな、ミニマル賢者”」_抜粋版資料(PDF)
※背景のインサイトや生活者攻略の“ツボ”等も掲載のある完全版をお求めの場合は、下記までお問い合わせください。
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修理できるスマホ、アレンジを楽しめるたまごかけ麺―――共通したのは「生活者が加えるひと手間で完成すること」


――今回のテーマに着目したきっかけを教えてください。

土師:前回の見立て通信で”Dumb phone(あほ携帯)”について取り上げたじゃないですか。その後も、色々と気になって検索を続けていたら、欧州でiPhoneの修理代が本体代よりも高いことに不満を持った人々から自分で修理できるスマホ”Fairphone(フェアフォン)”が支持を集めているという記事を見つけて「これは面白い!」と思ってストックしていました。

Fairphoneの創業者は「私たちが目指しているのは、修理する権利を取り戻すという社会運動だ」と言っていて。改めて手触り感のある世界を取り戻したり、モノづくりの民主化を進めたりしていこうというミッションを掲げているんです。この話を聞いて、以前担当した調査で「SDGsについて日常的に取り組んでいること」を尋ねた項目があったんですが、「いいものを買って長く使う」という回答が多かったことを思い出しました。日本でもただ買って終わりじゃなくて、長く使うことに対するニーズはあるので、この事例と結びつけて、生活者にとっての価値を深掘りしてみると面白いかもと思い、初回のブレストに持っていきました。

イメージ写真(出典:UnsplashJoel Rohlandが撮影した写真)


秋山:
ちょうど、私は自分好みのアレンジを楽しめることでバズ動画も生まれていた「三田製麺のたまごかけ麺」や、プラモデル感覚で家を建てることができる「NESTING」などの事例をあげていて。土師さんの事例を聞いてすぐに「生活者がひと手間加えることで完成する商品・サービス」という共通項が見つかってすごく盛り上がった記憶があります。

土師:私としては「持ち寄った事例に共通することはないかな~」と、考えを巡らせていた時に、秋山さんがキャッチしていた「クリエイティブな倹約」というトレンド情報が土台になって、どんどん見立てが定まっていった感覚でした。

秋山:私はブレストのときに話を収束させようとしてしまう癖があって。土師さんが丁度いいバランスで話を広げてくれたのがありがたかったです(笑)。
倹約については、直近の円高や物価高の影響もあって、自分なりの価値を感じられるものにお金を使いたい「消費のメリハリ」という風潮も身近な変化として理解できましたし、「どういう見立てができるだろう?」と解釈を深めるのは純粋に楽しかったですね。

土師:日本だと「倹約」そのものには新しさを感じづらいですが、TikTokでバズっていた"Loud budgeting(うるさい倹約)*"などが海外でもトレンドになっていることを知っていたので、背景として語れそうだねとか話を膨らませていました。

イメージ写真(出典:Unsplashmicheile hendersonが撮影した写真)

*Loud budgeting(うるさい倹約):財務状況を周囲の人と共有し合うことで、お互いの状況を尊重した行動をすること


お金を払うなら、意味あるものに。
「倹約」という古くて新しいインサイトをどうまとめるか


――お互いの関心を持ち寄ったら、うまく発想の連鎖がつながったんですね。

土師:前回の見立て通信でもそうだったんですが、自分の中で集めた事例を点にさせないように大きな潮流に繋げることは引き続き課題で。意識してやった結果が、今回につながっているかなと思います。


――個々の事例という「点」が繋がって、大きな潮流や傾向を見つけた瞬間って「これだ!」と直感するものなんですかね。今回は、見立てを絞るのにそこまで悩まなかった?

秋山:そうですね。共通項が多かったが故に、初回のブレストで「これで行こう」とスパッと決まりました。でも、そこから事例をどう広げるか、何を太い価値にするかという大切な議論に結構時間を割いた気がします。

土師:そうそう。絞ることに悩んだというよりも、最初に見えてきた「お金が無いわけじゃなくて闇雲に使いたくないんだよね」という見立てをどうシャープに落とし込んでいくかに時間をかけた気がします。

秋山:たしかに、どういった要素で分解・統合的に解釈すべきかは悩ましかった記憶が・・・!

土師:言葉選びもかなり慎重にやってましたよね。 ただ新しい言葉を使えばいいわけじゃないっていうのは1回目でお互い学んでたので、「新しさは感じるけど、意味のわからない言葉にはしたくないよね」と話していました。ここはかなりこだわったので、結果的にいいものができたのかなと自負しています。

イメージ写真(出典:UnsplashJason Goodmanが撮影した写真)


――この話でスパッと太い土台ができたよねというタイミングはありましたか?

土師:やはり「倹約」というキーワードが出たときですかね。そこで、単にクリエイティビティがあるとか、物を長く使うという話だけでなくて、それらの根っこにあるのは「無駄なものに1円たりともお金って払いたくないよね」という気持ちや「大事なお金を使うなら意味や得られる価値が最大化できるもの」が求められていることが、今回の見立ての本質なんじゃないかと見えてきて、自信が持てた気がします。グローバルのトレンドでも、めちゃくちゃよく当てはまる事例が多くて。勝手に納得感のあるストーリーができたのかなと。


局地的でないか、偏っていないか。
見つけた情報の確からしさを検証する


――グローバルの話が少し入ると、局地的な話題ではなくなって、継続性や説得力が高まるっていうのは、ヒントになりそうですね。

土師:話がシンプルになるんですよね。日本だと今回のような価値観って(物質的消費に対する)意味的消費としてまとめられることも多いと思うんですけど。ちょっと定義が広すぎて、結局なんだろうなと(笑)。グローバルトレンドでいう「クリエイティブな倹約家」や"Loud budgeting(うるさい倹約)"のように、倹約すること自体がポジティブで人を思いやる行動に変わってきてる話に集約されると、 他の事象にも結びつけて考えやすくなる。集めてきた事例に対して意味的消費と結論づけてしまうと、それでもう終わり感があるけど、倹約というと、「どういう背景があるんだろう?」ともう少し深掘っていきやすくなるのはあるかもしれません。

秋山:あとは、日本人はいろんなニュアンスを含むことのできる言語がゆえに、意味的消費という曖昧な表現をするのに対して、自己主張がはっきりしている・はっきりとした表現がされやすい海外の方のほうが、ニュアンス含め分かりやすく表現されたトレンドが多いのかなと。土師さんが持ってきてくださったいろんな事例を見ながら、そういった気づきもありました。

イメージ写真(出典:UnsplashAbsolutVisionが撮影した写真)


――お話にあがったようなグローバルトレンドなどの情報を集めるコツや意識していることはありますか。

土師:今回の"Loud budgeting(うるさい倹約)"は、ニューヨークの広告代理店に勤めていた友人が内々で発信してくれていた情報をXで見たのがきっかけでしたね。前回も少しお伝えしましたが、『VOGUE』や『ELLE』みたいなファッション誌やニュースサイト、エッセイは結構読んでいて。たまたま見た言葉で気になったものを一言だけストックするのを習慣にしています。

秋山:私はなんだろう。まだまだ模索中ですが、日頃からニュースサイトは読んだりもしますし、少し胡散臭さを感じる時もあるんですけど、X(旧Twitter)でトレンドについて情報発信してる人の投稿をたくさん読んだり、ブックマークしてストックしたりはしています。

でも、必ず意識しているのは、ピンポイントで見つけた情報をそのまま鵜呑みにしないこと。自分の感性に絶対の自信があるわけではないので、 自分が興味を持った投稿は、投稿者が他に何を言っていて、他の人からどういうコメントをもらってるのか、その人をフォローしているのはどんな属性の人たちなのかも一通り調べて、 私の感性が偏ってないか・筋のいい情報なのかは確認するようにしています。


【生活者見立て通信とは】

QOのプランナーが、定期発行しているレポート「生活者見立て通信」では、世の中の流行やトレンドに関する具体的な「事例・事象」を数多く紹介し、背景にあるインサイトについて独自の視点で「見立て」て、日々のマーケティング活動に活かす「ツボ」を提案しています。

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*担当者:土師 ゆきの(Yukino Haze)、秋山 月子(Tsukiko Akiyama)



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