有機溶媒に対するタンパクの溶解度
毎度、ハンセン溶解度パラメータ(HSP)の調べものをしていたら、とある文献に興味をそそられたので読んでみました。有機溶媒に対するタンパクの溶解性に関する内容です。
生化学分野の研究で広く使用されている2種類のタンパク(牛血清アルブミン(BSA)、リゾチーム)を用いて、約20種類の溶媒中における溶解量を測定しています。
どちらのタンパクも共通して、ギ酸(Formic acid)とトリフルオロ酢酸(TFA)中で溶解し、リゾチームのみジメチルスルホキシド(DMSO)とグリセロールにも可溶という結果が得られています。
溶媒間における溶解性の差について、論文中では「溶媒の比誘電率と水素結合能に起因する」としたうえで、「溶解させる溶媒は水と似たような特性を持っている」と考察しています。さらに筆者は、タンパクの構造の観点でも溶解性を考えており、このような溶媒中ではタンパクはもともとの姿(※)のまま(≒エネルギー的に最も安定な状態のまま)溶解していると推察しているようです。
※ 親水基が表面に、疎水基が内側に来るような構造
論文中の溶解性の結果を用いて解析したHSPは次の通りです。
BSAに比べてリゾチームは解析精度はいまひとつ。恐らく、酸による溶解(Formic acidとTFA)と分子間相互作用のみによる溶解(DMSOとグリセロール)を同じ土俵で取り扱っていることが原因と考えられそうです。このあたりは多次元のHSPの考え方を適用する必要がありるかと思いますが、ひとまず今回はこのあたりで。