調べる技術 国会図書館秘伝のレファレンス・チップス 小林昌樹/著
元国立国会図書館の司書で、そこで10年以上のレファレンス業務の経験を積んだ小林昌樹氏の調べ物のコツの本だ。かつては、web上の情報は玉石混交、真偽不明、誤りや意図的な嘘もあるので、必ず、書籍にあたって確認すべきと言われていた。
しかし、現在は、この本でも紹介されているような国会図書館のDB(データベース)やGoogleブックス、論文集や各新聞社のDBなど信頼に足る情報を、ネットが利用できる環境にあれば、手軽に入手することができるようになった。
例え、Fランと言われる大学であったとしても、無料で使えるパソコンルームがあり、全てではないが有料のDBサイトを利用できる環境は、ほぼ整っている。なぜなら、大学図書館の利用者サービスは、学生へのサービスであると同時に、教授や講師たちへのサービスも重要な役割であるからだ。
図書館を受験勉強のための学習室、本を読んだり借りたりする場所としてしか認識していない高校生は多いだろう。しかし、大学生になって、ちゃんとしたレポートや論文を書きたいと思った時、図書館は大きな力となる。あなたの知識を深め広げてくれる。
大学生になったなら、大学の図書館をドンドン利用して欲しい。利用が増えれば、その図書館は間違いなく、今よりもっと成長する。また、大学生ではなくとも、深く知りたいことは年齢問わず生まれる。そこで必要となるのが公共図書館である。
公共図書館の職員の民間委託化や指定管理者制度が進む昨今、コンピュータ化された貸出返却業務なら誰でもできると、司書の専門性を軽んじられている。それは、外からだけではなく、内側からも。自館の蔵書検索をするだけで、「当館にはありません。」で済ませるカウンターの職員もいる。図書館について学んできた司書資格を持つ職員では、あり得ないことだ。
なぜ、専門職につなげない!握った拳がプルプルと震える。こら、利用者。そこで引き下がるな!粘れ!粘るんだ!その粘りが、この図書館を変えるんだ!成長させるんだ!
横断検索、図書館間の相互貸借など図書館にとっては手間もお金もかかる作業になるが、図書館があなたのためにする「仕事」の一部だ。その仕事をさせるのだ。それは、あなたの権利だ。
この本にも書かれているが、「江戸時代の着物について調べたい」という時、江戸時代の着物のデザインについてなのか、着方なのか、女性の着物なのか、男性の着物なのか、どんな職業の人が着ていたものか。核心を突いた部分が解らなければ資料を提供できない。書名検索で「江戸時代の着物」をひくだけでは、必要なところにはたどり着けない。インタビューする力が求められる。それが、レファレンスのとっかかりであり、それができなければレファレンスは、迷宮に入ってしまう。
誤植じゃないかなと思う言い回しや文章や専門用語が長すぎて読み直さないと何が書いてあるかわからなくなっちゃうとこもあるが、紹介されているサイトをひと通り試したくなる。いろいろなレファレンス調査DBを興味の赴くまま見てみようと思う。無料のものに限られるが。
国立国会図書館は、国会議員と官庁職員と国民のための図書館と言えるだろう。まだまだ、国会図書館の倉庫には、データ化されていない資料が眠っているようなので、その辺をつついて予算化に尽力してくれる国会議員は出てこないだろうか。
資料のデータ化は国民だけでなく海外からのアクセスにも応えることができる。そんな世の中、ぞくぞくするぜ。
とりあえず、すべての図書館は、参考図書として1冊づつ棚に置くことを提案する。
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