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「山羊と水葬」 くぼたのぞみ/著

 翻訳家・詩人のくぼたのぞみ氏のエッセイ集。雑誌『クロワッサン』でも紹介されていた本である。

 1950年生まれの北海道新十津川生まれのくぼた氏

 私とくぼた氏は、一回りほどの年齢差がある。しかし、読み進めるほどに、吹雪の夜に二重の窓がガタガタと揺れる何とも言えない心細さ、登校途中の長靴の中の靴下を重ね履きしたつま先の凍りそうな冷たさなどが次々と思い出された。くぼた氏の原風景を通して、自分の原風景に思いを馳せることになってしまった。
 貧乏とは言わないまでも裕福とは言えない暮らしの中、家のそばの灌漑溝で群れをなすトゲウオをのぞいたり、冬の田んぼで凧揚げをしたり、近所の子たちと鬼ごっこやかくれんぼなどをして遊んだ子ども時代。名もない山に沈む夕日とカラスの鳴き声、田んぼから聞こえるうるさいほどのカエルの声、作物の種まきを促すカッコーの声。北海道の田舎は、案外騒がしかった。

 人は、ある年齢になってくると、「原風景」を意識するようになるのかもしれない。50代以上の子どもの頃に、北海道に住んでいた人にはぜひ読んでもらいたい。そして、それぞれの「原風景」に思いを馳せてみてはいかがだろうか。

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