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鳥の落とし物

いまや話題沸騰なのが『鳥の糞』です。


鳥の糞

和歌山の水管橋の崩落で生じた断水はほぼ解消されたようですが、この崩落の原因の1つに鳥の糞害が挙げられています。

鳥の糞はご存知のように白っぽいどろっとしたもので、ベランダや車などに付くとなかなか取れなかったり困りものですよね。


尿酸と尿素

その糞の大部分の白っぽい部分、実はあれは『尿』に相当するのです。

鳥は尿も便も一緒に排出します。

その鳥の尿には『尿酸』という物質が含まれています。

一方、我々ヒトの尿には『尿素』が含まれています。

これら尿酸、尿素いずれも『アンモニア』を変換させたものになります。

アンモニアは毒性が強いため、それを毒性の少ない尿素へと変化させるようにしたのがヒトを含めた哺乳類であり、その尿素を水に溶かし込んで尿として排出しています。

毒性は低いと言っても尿素は長らく体内にあり続けて良いものではないので、我々はなるだけ我慢することなく排尿することが肝要です。


渇きを凌ぐ工夫

ラクダやリャマといった乾燥地帯にも強い動物は、摂取する水分が少ないので尿も少なくなりますが、ならば長時間体内に留まるであろう尿素による悪影響はないのでしょうか?

実は、ラクダやリャマは尿素を分解出来る微生物を胃内に備えているので、尿が少ないからといって尿素による問題はないのです。

微生物といえば、ヒトの尿は無菌です。よって万が一遭難して水に困った時は1度くらいなら自分自身の尿を飲んで水分補給することが出来るのです。


風が吹けば…

ところで鳥の尿に含まれる尿酸は不溶性、つまり水に溶けない性質があります。

この尿酸がヒトの関節の間に蓄積すると、風が吹いただけでも痛いといわれる『痛風』となります。この痛みは、尿酸の結晶を白血球が攻撃している時に生じます。


鳥の選択

ところで鳥は何故、アンモニアを尿素でなく尿酸として変換するのでしょうか?

当然ですが多くの鳥は空を飛びます。

ゆえになるだけ身体が軽い方がよいのです。

アンモニアを尿素とするには、水に溶かし込む必要が出てきます。水は重いですよね。ですから軽量化のためには固体として排出できる尿酸が都合が良かったのです。尿酸は毒性が尿素より強いのですが、鳥は膀胱がないので、溜め込んで身体に長く尿を留めておく必要がないので毒による影響を受けないのです。

鳥が尿酸を選択したもう1つの理由は、『卵から孵るから』です。

ヒナとして産まれるまで卵のなかにいるわけですから、排泄物も卵の中に共存します。

するとそれが水に溶ける性質の尿素だと周囲が尿素まみれになってしまいます。一方で尿酸ならば不溶性なのでその心配がありません。

どこまでも合理的に出来ていることに驚きます。


おわりに

ところで、先の水管橋崩落の事故ですが、尿酸が酸性であることから、鳥の糞によって腐食したのだろうと考えられています。

直接的な原因が鳥の糞なのかどうかはさておき、鳥にとってはただ糞をしただけなので、良い面の皮です。


おしまい



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