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百舌の婚活
百舌(モズ)の生態をとらえた子供向けのTV番組を観ました。
生まれた雛へ甲斐甲斐しく餌を与え、雨の日には羽を広げて巣の上に覆い被さり雛が濡れないように守っています。
斯くも愛情を注ぐ親に感動すら憶えました。
百舌の早贄
百舌は捕らえた獲物を木の枝に突き刺す習性が有り、秋に初めての獲物を生け贄として捧げたという言い伝えから、「百舌の早贄(はやにえ)」といわれるようになったそうです。
しかしこの「早贄」をなぜ百舌がつくるのか、その理由は最近まで判っていなかったそうなのです。
こちらでは5つの説が示されています。
モテるために
大阪市立大と北海道大の共同研究により、大変興味深いことが判りました。
早贄をしっかりと食べた雄は雌にモテるというのです。
そもそも早贄とは
これまで、早贄は餌が少ない冬に備えた保存食であると考えられていました。
しかしながら早贄を消費する時期を調べていくと、1月に最も消費されており、まだ寒さが続く2月には消費量が激減する結果がわかりました。
このことは、冬の保存食としての理由以外の何か理由が隠されていることを示唆していました。
たらふく食べて歌う
1月とは、繁殖期直前の時期なのです。
早口で歌う雄が雌に好まれることが先行研究で明らかとなっていたそうですが、
栄養状態が良いと、早口で歌えるようになるというのです。
つまり、しっかりと食べる雄はモテるということになります。
早贄消費量とモテ度の関係は
そこで、(気の毒ですが)早贄を取り除いた群と、(幸運なことに)早贄を追加した群、比較のための早贄を調節していない群(対照群)の3群で比較を行いました。
その結果、早贄を取り除いた群では、カップル誕生率が低く、
早贄を追加した群ではカップル誕生率が高く、対照群と比べても早く雌をゲット出来ることが判りました。
百舌の早贄とは
よって「百舌の早贄」は、冬の保存食としてだけでなく、「歌の質を高める栄養食」としても働き、繁殖の推進力となっていることが明らかとされました。
おわりに
今回御紹介した研究成果は昨年発表されたものです。
以下が原著論文。
以下は大阪市立大のプレスリリースとなります。
百舌といえば、有名な習性として知られる「早贄」ですが、
そのまま置き去りにされていると理解され、「忘れ去られやすい事物」という、百舌からすれば面白くない意味の慣用句として用いられてすらいます。
その一方で「早贄」は、季節を知らせる風物詩ともなっていますね。
しかし「早贄」自体の理由が、本当に最近まで判っていなかったということ自体にも驚きであり、それを明らかにされた研究者の方々に敬意を表したいと思います。
「基礎研究は何のために?」といわれてしまうこともありますが、上記研究のような成果を聴くとなんだかワクワクしませんか。
その知的好奇心が満たされる感覚は、純粋に生ずるものであり、それを叶える研究は尊いものです。
このような研究を支えていく力が国に備わっているということは、豊かさ、そして国の力なのだと思います。
もちろん多くの市民の方々からの理解を頂くためにも、研究する側からの、プレスリリースや報道を介しての「判りやすくかつ興味を惹くアウトプット」は非常に重要となります。
おしまい
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