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『僕には鳥の言葉がわかる』を読んで。自分の好きなものを一生かけて追いかけている人の物語は素敵。

今回は、動物言語学者の鈴木俊貴先生の『僕には鳥の言葉がわかる』の読書日記です。

ぼくは昨年より野鳥撮影を始めて、新しい世界にハマっています。まずは在住しているシンガポール各地を歩き回る。すると野鳥の知識に撮影の技術が組み合わさって、美しい世界を切り取れるようになってくる。さらなる新しい世界のためにマレーシアやタイにも遠征しましたし、中でも豊かな自然が残るスリランカでの撮影体験が忘れられない2024年でした。

先日、SNSで『僕には鳥の言葉がわかる』という気になるタイトルの本を見つけまして、早速購入。めちゃくちゃ面白くて、1日ですぐに読み終えました。著者の鈴木先生も知らなかったですし、とてもスゴい方だと初めて知りましたが、本書の面白かった点や、なぜ面白いと感じたかをまとめてみたいと思います。


【自分の好きなものを一生かけて追いかけている人の物語は素敵】

幼少期から生物が好きという話が書かれていましたが、学生時代より研究対象としてシジュウカラを追いかけ始めた著者。最初は「どうしてこんなにいろんな声を出すのだろう?」という疑問から始まったようですが、自然の中に籠り、観察に観察を重ねていくことで、シジュウカラ語の鳴き声の謎を解き明かし、動物生態学での大発見をいくつも重ねていきます。

巣箱で繁殖しているシジュウカラのつがいを観察していて、翼のジェスチャーに気がついた。毎日、十時間くらい巣箱の前で張り込み調査をしていたことがあったのだが、その中で自然に「あのしぐさは〝お先にどうぞ〟って言ってるんだな」と理解していた。

本書後半の大発見のきっかけとなったシーンですが、『毎日10時間ぐらい巣箱の前で張り込み調査をしていた』としれっと書いてあったのが印象的でした。笑

自然相手に数か月さらには数年単位で観察や実験を続け、そして、約20年も1つの対象にのめり込めているのが本当にスゴい。そして羨ましい。根無し草で「これ」というものが決まっていないぼくからすると、自分の好きなものを一生かけて追いかけている姿は非常に眩しく見えます。


【身近な野鳥から、まだまだ僕たちの知らない新しい世界へ】

僕はめずらしい生き物を対象としたわけでもなければ、特別な技術を使ったわけでもない。身近な野鳥のシジュウカラを対象に、双眼鏡とレコーダー、そして、ちょっとしたアイデアで研究を進めてきた。それでも、たくさんの新発見があったのだから、自然界にはまだまだ僕たちの知らない世界が広がっているのだろう。そう思うとワクワクするのは僕だけではないはずだ。

野鳥撮影を始めた1年ほどではありますが、各地を歩き回ったり、プロのガイドに連れて行ってもらうことで、少しずつ知識は溜まっていくし、美しい写真が撮れる回数も増えてきて、とても楽しい。また、身近に出会える野鳥の中にも、美しい鳥、可愛らしい鳥、かっこいい鳥は沢山います。姿形だけでなく、生態・行動まで含めると、「こんな世界があったんだ!」とまだまだ知らな世界だらけですし、新しい発見を積み重ねていける面白さが野鳥撮影にあります。

野鳥撮影の世界では、幅広い種類の中でも、例えば「カワセミ専門」「シマエナガ専門」「猛禽類専門」のように自分の興味対象を絞り込んで活動されている方も多くいますが、ぼくは今のところは幅広く楽しんでいて、まだ推しの対象を絞れてはいません。「これ」という対象を見つけて観察や撮影を重ねていけると、もっと深い世界を体験できるんだろうなぁと思っていて、絞ってはいきたいと考えています。


【明るい文章、楽しく読める文章】

最後に本書の面白かった点として挙げておきたいのは、世紀の大発見となったシジュウカラの鳴き声の法則ももちろんのこと、実験で解き明かしていく過程やその苦労話・思い出話まで面白いのですが、全体的に文章が明るく、楽しい気持ちで読めました。シジュウカラへの愛を感じ取れましたし、これは約20年追いかけてきた著者だからこそ書ける文章だと思います。

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