R&B映画の金字塔!『ブルース・ブラザーズ』を語る。
こんにちは、ぷるるです。
今日は1981年に日本公開された映画「ブルース・ブラザーズ」のレビューです。
「1981年・・・君、最近の映画は見ないの?」
いいえ、見ますとも。現代に生きるぷるるであります!
ただブルース・ブラザーズは、私にとって抗えぬ魔力を持った特別な映画のため・・・一度がっつり語りたかったんです。
だから今だけ、ちょっとだけ!
この映画トークにお付き合いくださいますよう、お願い申し上げ候でござりまする。
*今回は本当に長くなりましたので、目次をつけました*
簡単なあらすじ
ジェイク&エルウッド・ブルースは養護施設で育った義兄弟。血の繋がりはなくとも、R&Bで培った絆はダイヤより硬い。
そんな彼らはテンプレ通り不良に育ち、バンドを組み、幸い人気者になった。
だがちょっとしたトラブルから、兄ジェイクは刑務所行きに。
出所後のバンド再開を心の拠り所としていたジェイクだが、お勤め中の3年間で世間は様変わりしていた。
まず生まれ育った養護施設が増税で、11日後に閉鎖の危機。
真っ当に稼ごうにもバンドはとっくに解散。メンバーはそれぞれ自分の人生を歩んでいる。故郷は消えかけ、人生の夢もついえたジェイク。
だがそんな彼に、「汝バンドをやり、養護施設を助けなさい」と天から使命が突き刺さった!
神の使命を受けたジェイクは、弟エルウッドとバンド再結成を決意。
果たしてブルース・ブラザーズはたった11日間でバンドを再開し、税金5,000ドルを稼ぎ、養護施設を救えるのか!
魅力その1:R&B大爆発
正直言ってストーリーは大したことない。よくある勢いとノリのコメディ映画で、深いメッセージ性など「一見」しては感じられないからだ。
ただこの映画には、この映画には、
本物のR&B魂が宿っていーる!!!
理屈をぶっ飛ばすリズム、ソウル、シャウト!
R&B界のスターが総出でこれでもかとナイス演奏をお届け。
<出演スター☆一覧>
キャブ・キャロウェイ:ジャズ・エイジの伊達男。
ジェームス・ブラウン:ナンバーワン・ソウル・ブラザー!!
アレサ・フランクリン:ソウルの女王といえば、この方。
ジョン・リー・フッカー:渋すぎブルースシンガー
レイ・チャールズ:元祖『盲目の天才』
バンドには、ブルースギターの名手であるスティーブ・クロッパーなど、豪華メンバーが集結。
その音を聞けば、生きることの楽しさ、哀しさ、喜び、苦みが流れ込んでくる。
そう、この映画は目で楽しみ耳から人生の奥行きを味わえる優れもの!!
もう名作と呼んでいいでしょ!と、私などは叫んでしまうわけだ。
ブルース・ブラザーズを含むR&Bの魅力については、ハミングバードさんの最高に楽しい記事がおすすめ。
私は映画の話に専念するとしよう。
この映画に主演したジョン・ベルーシ(ジェイク役)とダン・エイクロイド(エルウッド役)はコメディアン俳優で、アメリカの伝説的お笑い番組「サタデー・ナイト・ライブ」の出身。
番組内でやっていた人気コントを映画化したのが、この作品である。
だから2人の息はぴったり。会話のリズム、やりとりの間も最高の仕上がり。
そう、この映画はコメディとしても一級品なのだ!
ダン・エイクロイドは元々ソウルやブルースが大好きで、愛する音楽へのオマージュとしてこの作品を書いた(彼は脚本も担当)。
ジョン・ベルーシはどちらかというとロック好き。だけど彼の決して上手くないヴォーカル抜きに、この映画は成り立たない。劇中、バンドの要を担っている。
べルーシは天才型の怪優だが、オーバードーズで早世した。才能ゆえの繊細さがクスリに頼った原因と言われている。
移民のため幼い頃は差別を受けたべルーシ。自らの才能で光の中に飛び出すも、つきまとう不安の影から逃れられなかったべルーシ。
人生の下から上まで見た彼に、R&Bの魂が宿ったとしても不思議ではないだろう。だって生き様が音になる、それがソウルでありロックなのだから。
だからこそ、ブルース・ブラザーズは『R&Bバンド』としてアルバムを求められ、グラミー賞3部門にノミネートされたのだと思っている。
魅力その2:白と黒の出逢うところ
ところでブルースといえば、やはり黒人の歌という印象が強い。
だが主人公のブルース・ブラザーズは白人だ。
ブルース・ブラザーズは様々な人を敵に回すが、そのほとんどは白人。
そして彼らの味方になり、支えてくれるのは黒人ばかり。
彼らの居場所(養護施設)を奪うのは白人ばかりの政府だが、天啓を授かった場所は黒人教会である。
彼らを食べさせたのは、カトリックの白人尼僧たち。
でも心を育てたのは、黒人の下働き「カーティス(演:キャブ・キャロウェイ)」だった。
公民権運動の象徴であるキング牧師の写真を部屋に飾るカーティスは、白人のジェイクとエルウッドを愛しみ、ブルース魂を教え込んだのである。
1980年代は今よりさらに人種の領域が分かれていた。特に文化面ではお互いの間に強固な壁があり、その垣根を越えることは難しかった。
だが見た目は白人、心は黒人であるブルース・ブラザーズは、垣根の上に立った存在と言えなくはないか。
また、ちょうど1980年はアメリカでディスコ・ブームが巻き起こり、R&Bは低迷期を迎えていた。
映画に出演したミュージシャンの多くも、苦難の時期である。
だからこそ、R&Bスターはこの映画に出てくれたのかもしれない・・・白人監督の作る、白人主演の映画に。
でも、それでもこの映画のおかげでR&Bは再び人気を盛り返し、私のような異国の子どもをすら、魅力の渦に引き込んだ。
それは彼らの演奏が、本気だったからではないだろうか。
子どもの耳はバカにできない。結構本質を嗅ぎ取るから。
そして監督ジョン・ランディスはこの熱を笑いに包んで楽しく、でもストレートに届けてくれた。
「俺たちは皆ブルースが好きだ。それでOKじゃないか?」
もちろん現実はそんな単純ではないし、軋轢は簡単に消えたりしない。
それでも彼らが大人気を得た意味は、この当時とても大きかったと私は思う。
それから超有名SF映画の主役とキーパーソンや、超々有名監督の出演があるところも、楽しめるポイントとしてお伝えしたい。
あと私は興味ないが、ド派手なカーチェイスや爆発シーンもばっちりあるので、アクション派も満足していただけるのではないだろうか。
魅力その3:ワルのきらめき&父の話
この映画は「ワルの魅力」であふれてると思う。
ジェイクとエルウッドは、要はワルなんである。
盗みもウソもごまかしも全部あり。彼らなりの正義に背かなければそれでOK。
そして彼らなりの正義とは、いつだって「R&B」なのだ。
やってることはめちゃくちゃだし、迷惑ばかりで最悪。
でも『R&B』にはあんまり真摯だから、こっちも何だか許してしまう。
だって真っ当に育った人間というのは、このメチャクチャが出来ない。
例え己の正義を貫きたい時でも、周りとの兼ね合いを考えずにいられない悲しさがあるから。
この映画には、そんな『ワルのレゾンデートル』が詰まっている。
己の正義がないワルだけの人が増えてる昨今だから、そのきらめきがよりまぶしく思えはしないか。
ちなみに主人公以外のメインキャラクターも、全員「ワル」なのでご安心を。
そもそもワルじゃなければ、ミュージシャンにはならないのだから。
ところで・・・
私は初めて見た時から、主人公ジェイクにどこか『懐かしさ』を感じていた。
この人知ってる・・・会った事ある・・・みたいな。
一体どうして??と長年疑問だったが、今回改めて見直してやっとわかった。
ジェイクは40年前に亡くなった、我が実父に似ているのだ!
破天荒な生き方と、どこか憎めないところが。
イケてないのに人たらし、仕事以外はダメ人間なところも。
実父には超迷惑を被ったのに、思い出すとなんか笑っちゃう・・・そんなところまで。
ブルース・ブラザーズにひかれたのは「R&B」の魅力ゆえと思っていたが、もしかすると父の匂いを感じたせいかもしれない。
だとしたら・・・親子とは、血のつながりとは、つくづく怖いものである。
*ワルの実父については、こちらの記事にてご説明 ↓
私とB・Bの出会い
私が初めてこの映画を見たのは小6。テレビの「ゴールデン洋画劇場」である。
そして一目ならぬ、一聞きで心を奪われた。
何この曲かっけ〜!! このリズムたまんなーい!!
楽しくてウキウキするのに、なぜかちょっと切なくなる不思議。
私は『R&B』にハートを撃ち抜かれてしまったのだ。
語彙がないので口からは「かっこいい!」しか出てこなかった。
でも幼いからこそ、私はR&Bの真ん中を掴んだと思っている。
でもこの音楽が何かわからないし、教えてくれる人もいない。
次の日学校で話しても、みんな興味がない様子。
私は時が過ぎても忘れられなかったけれど。
当時はレンタルビデオもなく、ただひたすら偶然の再放映を待つしかない。
だから新聞のテレビ欄で映画放映をチェックして、見つけたときは狂喜乱舞。
夜中だろうが絶対に見ていた。
やがてブルース・ブラザーズがアルバムを出してることを知り、中3か高1の時にサントラをゲット!もちろん聴き込んで、自室でひとり踊った。
さらにはアルバムをコツコツそろえ、ヘビロテ。
映画でやってない曲も、山ほどあったから嬉しくて・・・たとえばこれとか ↓
ただ、一つだけ悔いがある。
それはこのサントラをゲットした頃、私がすっかりロックに夢中となっていたことだ。
だから映画に出てきたミュージシャン以外は追いかけず、R&Bについて語れるほどの知識もないのである。
心が一番やわらかい頃にもっとR&Bも聴き込めばよかったと、今は思っている。
夢のライブ公演はキャー&ピーで。
だがそんな真面目で良い子のブルース・ブラザーズファンに、天はご褒美を与えてくれた。
なんとブルース・ブラザーズバンドが初来日するというのだ!
と言ってもジェイクとエルウッドは来ない。ジェイクはもう亡くなっていたし、エルウッドは映画俳優の仕事が忙しかったから。
でも、そんなことはどうでもいい。いや良くないけど、まあいい。
大事なのは、あの映画と同じメンバーでの演奏を、生で聴けること!!
中部地方は名古屋のボトムラインでその公演は行われた。
当時18歳だった私は大興奮でチケットを取り、ライブに出かけた。
セットリストは忘れちゃったけど、そりゃもう発狂ものだった。
だってスティーブ・クロッパーがいる!マット・ギター・マーフィがいる!
「踊りまくってるオーディエンス」とはまさに私のこと。
一番好きな「Gimme Some Lovin'」のイントロを聴いた時は、正直泣いた。
多分舞台に今は亡きジェイクの、そして彼を支えるエルウッドの幻影を見たからだと思う。
でも私は、曲ごとでウルッとしている人々をちらほら見かけた。
きっとみな、同じ思いだったのだろう。
とカッコよく書いてみたが、実は悔いがある。
この日私はお昼に、行きつけのカフェで「ガーリックトースト・スペシャル」なるものを食した。
ニンニク丸ごとをバターを塗ったフランスパンに挟んだ、このカフェで一番ガッツある一品だ。私も食べたのはこの時が初めて。
愛するブルース・ブラザースバンドを前に、気合を入れようと考えた結果だ。
だが、これこそが悲劇の始まり。
なんとライブが始まる直前から、ニンニクの強さに負けた我が腸が悲鳴を上げ始めたのだ!!
ライブが始まり私が「キャー!!」と叫ぶ。
するとその後から腸が「ピー!!」と泣く。
「キャーッ!」「ピーッ!」
「ギャーッ!」「ビーッ!」
キャーとピーの一人ライブを、密かに繰り広げる私。
ライブの間、私は確かに踊りまくった。それは嘘じゃない。
だけど同じ分だけお手洗いにも駆け込んでいたのだ。
だから本当は最前列に行きたかったのに、トイレ近くから動けず。
ちなみにボトムラインのお手洗いは、会場の最奥にある・・・
セトリは覚えていないのに、食べたお昼の名前は覚えている理由が、これ。
本当に我ながら格好がつかない人生だ。
でもとにかく色んな意味で、この日は忘れられない一夜となった。
続編あるけど、見なくていい。
ブルース・ブラザーズは世界で根強い人気がある。そのためか、突然2000年に続編が作られた。
その名も「ブルース・ブラザーズ2000」
は? ださっ!
もちろん見に行かねばならないが、駄作の香りが漂ってくる。
そしてこの予感は的中した・・・・と思ってる、私は。
出演ミュージシャンはものすごく豪華である。
前作に出ていたR&Bスターがほぼ出演の上、エリック・クラプトンやB・Bキングも参加して花を添えた。パフォーマンスも悪くない。
だけどなんだろうな〜。会話の内容、そのテンポ、間合いが全部良くない。
ストーリー展開が前作を意図的に踏襲しているのだが、これが裏目に出て新鮮味が何もない。どころか手抜き?と言いたくなる。
べルーシの代わりに新たなブラザーズ(おっさん2人と子ども1人)を迎えているが、彼らからR&Bの匂いを全く感じないのも、痛い。
そして何より、弟エルウッドがよく喋るのだ・・・・
前作でエルウッドは常に寡黙、兄ジェイクをサポートする立場に徹してきた。
でも決して目立たなかったわけじゃない。
ドライトースト(何も塗らないトースト)を偏愛し、いつでも食べられるようにポケットに忍ばせているなど、イカれ部分はきっちり印象づけていた。
だからこそジェイクはっちゃけぶりが引き立ち、そのバランスが最高だったのだ。まるでトムとジェリーのように。
でも今回は狂言回しがいないから、それをエルウッドがやることに。
結果、寡黙キャラが台無し。しかもちょっと太ってるし・・・。
一応義務として説明をしたけど、こちらは全然お勧めしない。
もしジョン・べルーシという存在が、いかにブルース・ブラザーズの要だったかを再認識するためなら、見るのも悪くない。
だがそれ以外の意味はない続編と、私は断定させていただこう。
おまけ:なぜこの長い記事を書いたのか
ここも読んでくださるなんて・・・・あなたは何とやさしきお方。
心より感謝申し上げます。
私は常々、記事の文字数を1,700字前後、長くても3,000文字は超えないことを課してきました。単に好みなんですね、そのぐらいの分量が。
でも一度ぐらい文字数を考えず、どーっと書いてみたいと思っていました。
そんなおり、上記でご紹介したハミングバードさんのブルース・ブラザース記事を読みました。
そしたらワクワクしちゃって、「ブルース・ブラザーズ愛」が再燃したんです。
さっそく映画を見返し、アルバム聴き直し。
ブルース・ブラザーズとは不思議なバンドで、一度見返すと初めて出会った頃の熱狂がそのまま戻ってくるんです。血湧き肉躍るんですよ、本当に。
じゃあこの映画が人生No. 1か、と言われると違う。
なのにヘビロテ度合いは群を抜いているわけです。なんだろうか、これ・・・。
そこで私はハッとしました。
「じゃあこれで、心ゆくまで書いちゃおうよ」と。
結論とか話の展開など考えず、この渦巻くエモーションの赴くままに走ってやろうと。
ジェイクのヴォーカルのように・・・。
だけど書いてみて、思いました。
私はワルの娘でありながら、本当にその因子がないよなあと。
なかなか一気に突っ走れないなあと。
どこまで細かく書いていいのか、だんだんわからなくなるんですよね。
例えば小ネタとか。あと曲1つ1つへの思い入れとか。
ファンだから、あれもこれも言いたくなるわけですよ。
私のnoteって、基本「放課後のおしゃべり」ですから。
でも小ネタを書くにはあらすじも細かく書かないと、観てない人にはわからない。
ただそんな細かいあらすじ、読むか??私なら飛ばすね、とか。
これ、スッキリするまで書いたら1万字超えない?
じゃあ前後編にする?でもこの古い映画で前後編か・・・とか。
結局はブレーキがかかるんですねえ。だから長い割に物足りない。
一番言いたいことが抜けてるような。モゾがゆい気分を今、抱えておるわけです。
私はこれを書きながら、よく山田五郎さんを思い出していました。
元ホットドッグプレスの編集長で評論家。私の敬愛するみうらじゅん氏のお友達です。
この方は本当に知識の幅が広くかつ深い方ですが、それを一般に向けわかりやすく解説しておられます。
山田五郎さんほどの知識があれば、話したいことも山のようにあるでしょう。
それを取捨選択し、わかりやすくまとめるってどういう技なのか。
しかもマニアックさを絶対に入れて・・・
改めて尊敬の念を抱きました。プロって本当にすごいですね。
ジェイクのように突っ走れず、山田さんのような技量もない・・・・
そんな映画トークですが、もしこの記事を読み「ブルース・ブラザーズ」に少しでも興味を持っていただけたら、それが一番うれしいです。
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