美の理想は、笑福亭鶴光にあり!
先日、私の理想が「笑福亭鶴光」に決まった。
と言っても、落語家を目指すわけではない。
「美の保ち方」としての理想である。
しかも心持ちではなく容姿、つまり見た目の理想。
私としても、74歳男性を美の理想にするなど完全に予定外だった。
人生とはまったくもって驚きと刺激に満ちている。
ここ数年ほど、私と友人Mは「美容問題」について、話し合いを続けていた。
つまり衰えゆく容姿にどう対処するか、ということ。
話し合っても負け戦。けど、話さずにはいられない。
それが女子道。いくつになっても、いつまでも。
さて、私もMも医療の力をフル活用する美魔女タイプではない。
かといって、「おばさん利点」を楽しめる度量もなかった。
良く言えば、自分ペースのナチュラル志向。
その実態は、すべてに中途半端なだけの迷い人。
そんな私たちは、「理想像」すら上手く見つけられないでいた。
美意識の高い方は、とっくに走り出しているだろう。
変化を自然の一部と受け止めるなら、モデルケースはいらなかろう。
しかし半端者には希望の星が必要なのだ。指針となる灯台が!
でも脳裏に浮かぶのは、以下のような薄ぼんやりしたイメージだけ。
「年を重ねた感はある。けど自然な若々しさを保っており、印象があまり変わらない人」
ってこれ、どんな人? 結局は石田のゆり子様?
そりゃ彼女は本当に素敵。だけど芸能人じゃ土台が違いすぎてお話にならない。
結局話し合いの結果は出ないまま、いたずらに年月だけが過ぎ去っていった。
そんな先々週の日曜日。めずらしくMから電話があった。
いつもはローテンションな彼女だが、この日はとても興奮していた。
M:「ちょっと!笑点、笑点つけて!今すぐ!!!!」
私は夕食を中断し、あわててテレビをつけた。笑点はちょうど大喜利が終わったところで、出演者が手を振りお別れを告げている。
私:「つけたけど、何さ」
M:「ツルコー!ツルコー見て!」
ツルコー???
誰じゃそれ。
もしかしてツル・コー?
それともツ・ルコー?
えっ、フランス人?
でも画面には日本人しか出ていない。
いつもと違うのは、故・三遊亭圓楽さんの代わりに笑福亭鶴光師匠の姿があることぐらいだ。
・・・あ、なるほど、『鶴光』ね。
私が己の勘違いに失笑していると、隣で夫が感嘆の声を上げた。
「うわ、鶴光見るの数十年ぶり。いやー若いなー」
確かに鶴光師匠はイイ感じであった。はっきり言って素敵だった。
やせすぎず、太りすぎず、髪は白くシワもあるけどそこが逆に魅力的。
お肌はつやつや、ほっぺはふんわりピンク色。つまり・・・
確実に年は取っている。でも若々しくて印象があまり変わらない!
この瞬間私はハッとした。これって私とMの理想そのものではないか!?
やっとわかってくれたわね、とM。
私は深くうなずいた。
もちろん電話だからMに私のうなずきなど見えはしない。
けど、どうやら伝わったようだ。
電話はMの「お食事中、失礼」という言葉で終了した。
こうして私たちの問題は、突然に解決した。
これからは鶴光師匠を目標として、迫り来る荒波を乗り越えていけば良いのだ。
私はこの結果にとても満足している。
しかし、同時に新たな問題も発生した。
鶴光師匠がどのような方法で美を保っておられるか、皆目見当がつかないのだ。
スキンケアは?食事の内容は?サプリメントは?
それとも芸道を貫いた者が放つ、魂の輝きだろうか。
笑点では相変わらず下ネタ連発で、笑点のシモ担当、小遊三師匠が押され気味だったと聞く。
かっこいいぜ、師匠!でも下パワーだったら真似できないぜ!
いや、もしかして医療の力を借りているかも・・・。
落語家だって芸能人、絶対に無いとは言い切れない。
うーん、私は手を出したくないんだなあ。どうしても怖くって・・・。
最近Mと私は、この難問についてちょいちょい話し合っている。
でもこの答えこそ、出る予感がしない。
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