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ちょっぴり読書感想vol.14

グラスホッパー
伊坂幸太郎

今回は、伊坂幸太郎さんのグラスホッパーを読了したため、感想を述べたいと思います。
つい先日、勧められて「砂漠」で伊坂デビューを果たしたのですが、次に勧めていただいたのが、シリーズ化もしているグラスホッパーでした。

ページを捲るのが止められない、そんな疾走感ある展開が魅力的な小説でした。私このようなストーリー展開の早いものやサスペンス要素の物語をあまり好まないのですが、久々に読むのもまた良いと感じました。

あらすじとしては、妻を殺した人への復讐を果たそうとする元教師の鈴木が、復讐をしたい人の死を目の当たりにするところから物語が始まり、依頼を受け自殺をさせる鯨、依頼を受け殺しを行う蝉の3人の視点で変わり代わり展開される物語。

様々なタイプの殺し屋が出てきて、生と死というモノが様々な視点で、様々な尺度で展開され、自分自身も生と死について考えてしまいます。ラストの捉え方もほんとに人それぞれではないでしょうか。
伊坂さんは人間に対しての解像度が本当に高いと感じます。

グラスホッパーとは、バッタなどの昆虫を指すみたいですが、この物語で押し屋とされる人物の槿の発言にもある「(トノサマバッタは)密集したところで育つと「群集相」と呼ばれるタイプになる」「どんな動物でも密集して暮らしていけば種類が変わっていく。黒くなり、慌ただしくなり、凶暴になる」「どんなに緑色のバッタも黒くなる。バッタは翅が伸びて遠くへ逃げられるが人間にはできない」
というような言葉がこの物語のどこか核心の部分ではないかと思います。
何が言いたいかを明瞭にすることは私には難しいですが、人間にはできないけど、前に進むしかないと私は感じとりました。これは結末を少し明るく捉えた私の希望的観測かもしれませんが。

途中で出てくる押し屋とされる男の家族の伏線回収も素晴らしいし、この物語の唯一ほっこりできるところかも知れません。

こんなに危うい感じで暗いテーマな感じなのですが、なんというか淀みのない感じとラストシーンはなんだか明るい方向にも感じ取れるところがなんか心地良い物語でした。

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