【訳詩】人生
シャーロット・ブロンテ
信じてください、人生は賢者が言うようには暗い夢ではありません。
朝に雨がぱらぱらすると、晴れて気持ちの良い日になります。
暗い雲が浮かぶこともありますが、それは一時的なもの。
にわか雨のおかげで薔薇が花開くのなら、
どうしてそれを嘆く必要があるでしょか。
人生の良い時は、明るくすぐに過ぎ去っていきます
感謝して元気に、あっという間に終わる人生を謳歌しましょう
死によって最愛の人が召されても、
希望がぐらつき、悲しみが打ち勝つように見えても
希望は楽々と蘇ってきます。
打ちのめされても希望がへこたれることはありません。
金色の翼にのって朗らかに
私達を力強く運んでくれます。
断固として恐れを知らず
試練の時を支え、立派に意気揚々と
勇気は絶望を静めることができるのです。
『ジェーン・エア』で有名なシャーロット・ブロンテは優れた詩人でもありました。私は「人生」が彼女の詩の中で一番好きです。「人生」は明るく朗々した言葉で書かれていて、読んでいると勇気づけられます。
シャーロットの人生は苦労の連続でした。貧しくて、妹たちと共に詩集を発表しても認められません。恋も実らず、姉妹が開いた塾には生徒が来ません。弟は問題の多い人物で姉妹を困らせたうえ31歳の時に死去。仲の良かった妹たちもエミリが30歳、アンが29歳の時に亡くなります。
1847年に発表した『ジェーン・エア』はやっと認められ、結婚もしますが38歳の時にこの世を去ります。このような辛い人生を送った人が書いたとは
思えない明るく朗らかな詩です。きっとシャーロットは自分を奮い立たせるためにこの詩を書いたのでしょう。また精神的に強い人だったのではないかと思います。
私は彼女の『ヴィレット』を読んだのですが、容貌に恵まれない少女が必死になって生きていく物語で、深く感動しました。イギリス文学の中で一番好きな一冊です。30代の若さで亡くならければ、ドストエフスキーやトルストイに並ぶ作家になったのではないかと思います。