カービィの孤独
映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』を観ました。
任天堂のアクションゲームで昔からお馴染みの、マリオとルイージの兄弟を中心に、繰り広げられるドタバタコメディー。
多少のツッコミどころというか、マリオが行く先の空中になぜかいつも用意されているブロックのごとく、脳内に「?」が浮き出た部分はいくつかあるものの、ゲームを少しでもプレイしたことのある人なら、充分に楽しめる内容。
自分がマリオのゲームにがっつりハマっていたのはスーパーファミコンやニンテンドー64の時代で、いちおう3DSも少しだけ触ってみたことはあるけどそこまでのめり込まず、もはや20年以上はご無沙汰となっている浦島太郎ですが、その状態で観ても面白かったです。
マリオとルイージの本職が配管工という設定はいちおう昔から知ってはいるものの、ゲームをする上でそれを気にしたことはないし、気にする必要もないので、実際に地元で地道な業者仕事をやっている姿はなんとも新鮮。その世間じみた境遇を見せられるだけでもう笑えるので、ちょっとズルい。
途中からはドンキーコングが合流し、マリオと決闘したり、仲良くなったりします。
もはや第二の主役というか、はっきりいって主人公のマリオを食っちゃっているような場面もあるのですが、彼はジャングル王国で最強の戦士として国民に讃えられており、父は国王のクランキーコング。将来が約束された地位に立っている。
そんなお坊っちゃまなら、そこらへんの木に成っていたり地面に落ちていたりする生のバナナを素手で収穫せんでも、コストコでいくらでも大人買いできるだろうに……。
などと考えるのは無粋なことなのですが、この映画を観たからには、あえてそのような無粋な妄想を、他の任天堂ゲームの主人公たちでもやってみたくなりました。
たとえば、マリオと双璧をなす大人気キャラクターであるカービィ。ピンクの丸いボディがにくい、とっても食いしん坊で、なんでも吸い込んで変身できるあいつ。あの生物は、これまでどのような境遇で生きてきたのだろうか。
カービィを題材とした漫画は過去にいくつかあり、一時期はアニメも放送されていましたが、ゲームの中では敵であるデデデ大王との関係性は、作品によって異なっていた覚えがあります。
ゲームと同様にカービィの住むプププランドの住民ではあるものの、いつも悪さをしてくる嫌な奴という設定の場合もあれば、ふつうに仲良く遊んでいる場合もある。
アニメだとかなりのデデデ大王はかなりの自己中野郎で、「環境破壊は気持ちいいゾイ」「人が苦しむのを見るのは実に楽しいもんゾイ」「国家ぐるみの場合は犯罪にならんゾイ」などの数々の問題発言を残しており、どう考えてもプププランドから永久追放するべきアナーキスト。
しかし、弟が小さい頃に持っていた絵本なんかだと、うろ覚えではあるのですが、なんだかふつうに仲良くピクニックなんかに行っていたような気がする。
もしかすると、カービィとデデデがお互いに幼かった頃は仲良しの友人だったが、成長するにつれてデデデ側に醜悪な欲望が芽生え始め、やがてそれを叶えるためには手段を選ばなくなり、プププランドの住民に迷惑をかけるようになった、というストーリーなのかもしれない。
絵本で描かれていたのは幼少期のカービィとデデデ、アニメで描かれていたのは青年期のカービィとデデデだとすると、実はあのゲームは、いつまでも子供の心を持ったままのカービィと、大人になって汚いことを覚えてしまったデデデとの闘いで、いずれは友情を取り戻すというのが目的なのでは……?
デデデの家来であり、最も弱いザコ敵のワドルディもまた、一部の作品では味方のポジションにいたり、デデデ側についていながらカービィへの敵対心はそこまでなさそうでもあり、関係性が複雑であるように思える。
身体の形状がカービィとほぼ同じなので、生物学的には同じ種属と思われるが、今のところどうやら言及されていない。
メロンパンナちゃんの姉のロールパンナちゃんのように、なんらかの事故によって悪の心が芽生えたのがワドルディであり、一部の作品でカービィの味方をやっているワドルディは過去のきれいな心を持っていた頃のワドルディ、そしてカービィはワドルディともいつかわかりあいたいと考えているとしたら……。
マリオには弟のルイージ、ドンキーコングには弟分のディディーコングがいるが、カービィの血縁関係者は出てきていない。
去年の3月に発売された『星のカービィディスカバリー』ではエフィリンという相棒が登場するらしいが、シリーズ開始から30年あまり、ずっと仲間らしい仲間がいなかったことになる。
そう考えると、意外にもカービィは天涯孤独である。それを全く感じさせないのは、あの脳天気な性格ゆえなのだろうが、そんな鈍感に見えるカービィも、実は人知れず傷ついているの……かもしれない。
けど、そのような裏側を見たいのかというと、全く見たくはないので、やっぱりカービィは謎の生物のままのほうが良い。
『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』で良いと思ったのは、クッパがピーチ姫を拐おうとする理由が実にしょうもなかったことと、ピーチ姫が強すぎるところで、ゲームだと浮き彫りにならないけど物語にすると悲愴感が出てきそうな部分をあくまでパワーで乗り切っていたところ(それゆえに、水色のあいつのブラックユーモアは個人的にはいらんかった……)。
やっぱり、ゲームは何も考えずにやったほうが楽しいし、キャラクターは謎のままのほうが良い。ポケモンがボールに詰め込めまれている姿をリアルに想像するとなんかイヤですし。
しかしながら、脳は勝手に、サトシとカスミの10年後の展開とかを考えてしまう……。
そういえば、もうサトシは主人公を引退したのでしたっけ。新しい主人公はサトシ×カスミの息子かな?オーキド研究所はシゲルが経営を受け継いでいるのかな?
妄想は終わらない。