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グズグズする時間

自分は、仕事がある日も休日も、実際に起きる予定の時間よりも1〜2時間半くらい早めにアラームを設定しています。

もともとは、「二度寝がしたいから」という理由でしたが、早めのアラームに慣れていくうちに、だんだん二度寝がやりにくくなってきました。

1〜2時間半くらい早めに目覚めるのに慣れてしまい、二度寝の特別感がなくなっていったのです。二度寝のマンネリ化。

このマンネリを打破したい。それならばもういっそ、1〜2時間半まえに起きておこうと、ここ最近は早めに起きています。

せっかく早起きしたのだから、ランニングなどをして、適度に汗をかいて海を見に行った後にエクストリーム出社……なのかというと、そういうわけではありません。

ただただ、布団の周りでウジウジしています。

近くに海がないので、ランニングに対するモチベーションも上がりません。山はありますが、朝から山というのはなんかこう……、朝から回鍋肉を食すような気分になるというか。別に悪くはないんだけど、朝からそれはちょっと重い。

そんなわけで、すぐには外に出ない。部屋からも出ない。

横に転がるスマホをたまに開いては閉じ、瞳を閉じて君を思うよそれしかできない……、と急に平井堅さんをリスペクトしはじめて、瞼を閉じて第三世界を見つめるのです。

寝ているわけではなく、起きているわけでもない。

虚無と呼んでもいいこの時間ですが、この虚無タイムを作ることで、不思議なことに朝が辛くなくなりました。

昔は、ギリギリまで寝るのは当たり前で、むしろなんでみんなギリギリまで寝ないの?健康に悪いよ?と考えるタイプで、通勤電車の中でももちろん寝ていました。立ったまま寝る技術は意外と簡単に習得できます。

そして出勤時刻が近づけば、眠い目をこすりながら、どこか遠くへ行きたいどこか遠くへ逃げたいという願望を噛み殺しつつ、つまらなくくだらない現実へと滑り込む……。それが毎日のルーティン。

これを何年も続ければ、疲れてくるのも無理はない。事実、今よりも身体は若かったはずですが、気持ちが重くてダルくてたまりませんでした。

現実がつまらなくくだらないのは今でもそんなに変わらないのですが、自分ももういい歳なので、新世界の神になるとか言っていられないことは理解しています。

だからこそ虚無タイムをあえてつくり、いったん心をからっぽにしてあらゆる感覚をクリアに研ぎ澄ます必要がある。

銭湯にハマった根本的な理由も、そもそもはこの虚無タイムを楽しめるからなのだと思います。

道路の真ん中で虚空を見つめてボーッと突っ立っていたら通行の妨げになるし、公園のベンチで何分間も意味もなく座っていたら職務質問されてしまう。

でも、風呂場の縁側に座って、水風呂あがりのイッちゃった目で、長時間ボーッとしていても、誰にも何も言われない。ドラえもんのひみつ道具の石ころ帽子を被ったときのような状態になれる。 

石ころ帽子というのは、それを被ると道端に落ちている石ころのように周りの誰にも気にされなくなるという道具です。

自分はけっこう長い間、「気にされないけど見えないわけではない」ことの何が良いのかよくわかりませんでした。

どうせ似たような道具なら、透明になれるかくれマントの方が便利じゃん、と思っていたのです。

透明になれたら、こんなこととかできるし、あんなとこに行けたりもするので、愉快なことがたくさんできる。

……のですが、バレたら即時に社会的な制裁に遭うでしょう。良くて数万円の罰金、悪ければ禁固刑に……。

そのリスクを背負うのは現実的ではないし、要領の悪い自分は、のび太やコロ助なみにひみつ道具の使いこなし方が下手な自信があるので、やっぱり石ころ帽子くらいのユルい効能がちょうどいいかなあ、と思う今日この頃。
  
そのような不毛なことをボーッと考えているうちに、休日の夕方になってしまったので、ちょっくらスーパー銭湯に行って虚無になります。


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