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忍術学園の上級生たちの大人としての覚悟

映画『忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』を観に行きました。

『忍たま乱太郎』のテレビアニメについては、太古の昔にVHSなる太古の機器でかなりの本数を観ていたものの、ここ20年くらいは疎遠でした。

先輩のイケメンキャラクターが激増したとか、土井先生ときり丸が主役の薄い本がどんどん分厚くなっているなどの話はなんとなく知ってはいましたが、ちゃんと観るのはかなり久しぶりのこと。

本筋には絡みませんが、ちょっとだけ滝夜叉丸が出てきたのが嬉しい。昔は先輩キャラといえば滝夜叉丸だったからなあ。

映画を観た最初の率直な感想としては、土井先生×きり丸、いや、どちらかというときり×土井のほうかもしれませんが、薄い本はこれからどんどん分厚くなるどころか、それはそれは濃ゆい内容になっていくのでしょうな。巻物にしないと収まらないのではなかろうか。

初恋が土井先生だったという女性は世の中に多数いらっしゃるようですが、当時は土井先生の良さはよくわからず、原作のトモミちゃんがアニメ版のトモミちゃんと違いすぎることに強いショックを受けて、間違えて2冊も買っちゃったからと原作の12巻をくれた従姉に、この性格がキツそうな女は誰だと泣きついて、うるせえ知らねえと一蹴されたことのほうが印象に残っています。

原作のトモミちゃんはたいしてユキちゃんと絡まないし、きり丸を蹴飛ばしたり、滝夜叉丸と殴り合ってお互いにボコボコになるようなバイオレンスな姉貴なので……。

しかし、冷静に考えれば、彼らはみんな、プロの忍者になるために忍術学園に通っているわけで、そのためには当然フィジカルを鍛えなければならないので、蹴飛ばしたり殴り合うくらいにはバイオレンスであるべきなのです。

実戦では常に殺すか殺されるかの本番勝負なのだし、血を見るのは当たり前、いつ急に襲撃されるかわからない世界なので。

普段の忍術学園ののほほんとした空気からはあまり実感が沸きませんが、なんせ室町時代の末期という設定なので、織田さんや秀吉さんが暴れまわる戦国時代の前夜にあたる時期。

そもそもこの作品は、忍者を志す乱太郎が、田舎で農業をやっている両親と別れを告げるところから始まっていますから。いずれは、楽しくておバカで、なんの忍術もこなせなくても先生に怒られるだけで済んでいた子供時代から抜け出さなければならない。

……という現実を、ある意味で知らされるのもこの映画です。

冒頭からすでに、いつもののほほんとした空気はほとんどなく、土井先生と諸泉尊奈門とのガチなバトルシーン。

そのバトルの最中に土井先生が行方不明になるところから事件が始まるのですが、学園長や山田先生、上級生の5年生・6年生たちは、下級生たちにはそのことをあえて知らせず、あくまで土井先生はしばらくお休みするだけ、という体にします。

つまり、乱太郎たちは、土井先生が失踪した事実を途中まで知りません。子供たちには余計な心配をさせず、のびのびと過ごしていてほしい、という、学園長と山田先生の親心です。

いつもはくだらない思いつきで生徒を振り回すギャグ要員の学園長ですが、滅多に見せない保護者的な側面をここでは見せます。なんかわからんけど沁みるんだよなそれが。

ちなみに学園長のエピソードで自分が好きなのは、夏休みボケのせいで袴の履き方を忘れてしまったというやつです。夏休み中ずっと袴を替えとらんかったんかアンタ。

そのギャップがあるだけに、緊急時にどっしりと構えている学園長に新鮮味すら感じますが、子供を守るってそういうことなんだろうなあ。

上級生たちのムーブもまた良い。

ドクタケの軍師となってしまい、本来の自分を見失ってしまった土井先生と一戦を交え、中には傷だらけになって帰ってきた生徒もいるのですが、それでも土井先生をドクタケから奪還するために、再び戦います、と学園長と山田先生に告げる場面は、卒業したら一人前の忍者として生きていかなければならないことをリアルに噛み締めている上級生たちの決意を感じる。

多かれ少なかれ交流のある1年生、特に土井先生と交流が深いきり丸の気持ちを守るべく、傷を受けても立ち向かっていく大人の男の覚悟ともいえる。

上級生たちにしたって、普段は温厚な土井先生の変わり果てた姿を見て、ましてや攻撃されて、少なからぬショックを受けているはずなのに。……ん?……あれ?いつから先輩キャラがかっこいい話に擦り変わっておるのだ?しかも、心なしか早口になっておるような気が。

忍術学園は6年制であり、基本的に入学時は9~10歳(現代でいえば小学4年生)なので、留年しなければ15歳時に卒業できることになりますが、15歳といえば当時でいえば元服で、立派な成人男性となるわけです。

さらに、忍者である以上は、自分ないし他者を守り続けながら生きていかなければならないわけで。

いつの間にか彼らの倍を超える年齢、いやそれどころか、土井先生よりも山田先生の年齢のほうが近くなりつつあるのですが、自分が今なにか覚悟を決められることはあるのか、と自問自答してしまいましたね。とりあえず、原作のトモミちゃんと向き合おう。

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ぷらーな
サウナはたのしい。

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