グリーンピースを許すまじ
私はとても温厚なので、唐揚げにレモンを勝手にかけられても文句を言わないし、餃子や焼肉のタレは別になんでもいい。酢豚にパイナップルも、変わったことをする人がいるなあとは思うものの、邪道だとまでは思いません。
しかし、どうしても許せないことが、ひとつだけある。「この組み合わせを作ったのは誰だぁっ」と海原雄山先生のごとく怒り狂いたい。
カレーにグリーンピース、である。
ググったら速攻でこの組み合わせの発明者が判明しまして、ニチ○イの冷凍食品が採用したのが起源であるという説が有力のようです。なんだと。今日からニ○レイ不買運動を始めるぞ。しかし、ニチレ○のミニハンバーグには、小学校の遠足の弁当でさんざん世話になったからなあ……。
いや、○チレイは悪くない。グリーンピースがすべて悪い。なんだあの緑色の変な豆は。栄養価が高いとかなんとか言われているわりには、あんまり見かけないような気がする。だからこそムカつく。
私はカレーが大好きである。その大好きなものの上に、なぜ大嫌いなものを乗せてくるのだ。
それが、文句の付けようもないくらい社会的地位が高いものだというのならわかる。
たとえば私は納豆が大嫌いだが(つまり豆が大嫌いなのである)、納豆にしか含まれないナットウキナーゼなる激レアな酵素が摂取できるというチートな価値があることは認めている。
しかし、グリーンピースなんて、カレー以外で注目されることあるか?本当は陰キャのくせにイキってんじゃねえよ。俺の愛するカレーから離れろよ。祖国へ帰れ。
という感情を常に持っているので、カレー屋さんでは絶対にグリーンピースの有無を尋ねるようにしているし、可能であればグリーンピース抜きにしてもらう。邪魔者を排除するための心構えを徹底している。
ので、滅多にグリーンピースに出会うことはないのですが、このたび、事情があって珍しくコンビニのサラダを買って食べたところ、奴は現れやがった。
まさか羊栖菜のサラダに奴が紛れ込んでいるとは思いもよらず、完全に油断しておりました。ひじきって漢字だと羊栖菜と書くのですね。中国語の読みだと「ヤンシーサイ」となるのだそうだ。中国にも羊栖菜はあるのか。和食の印象が強いが、中華料理として出ることもあるようだ。
いや、そんなことはどうでもよろしい。問題は、なぜ羊栖菜にグリーンピースを入れたのかということだ。オイコラ中川よ、羊栖菜にグリーンピースを入れたのは誰だっ。
現実世界に中川はいない。それ以前に私は海原雄山ではない。現実逃避をしていても仕方がないし、買ったからには食べきらなくてはならない。
私の心の中にはどうやら忍術学園の食堂のおばちゃんが住み着いているので、お残しは許しまへんで精神が奥底にあり、どんなに嫌いなものでも残すという選択肢は許されないのです。
練り物が嫌いな土井先生も頑張ってはんぺんを食べていたので、それを見習って私もグリーンピースをやっつけないといけない。
しかし土井先生、すべからく練り物がダメらしいので、おでんが出てきたら大根くらいしか食えないんじゃないか。
おでんというのはかなりメジャーな献立であり、なおかつ、わりとみんなが大好きなメニューとして人気が高い。少なくとも、グリーンピースに比べれば、支持者の数は圧倒的だと思われる。
事実、おでんが嫌いだという人を周りで見たことがない。もちろん広い世の中には、おでんをとてつもなく憎んでおり、コンビニでおでんをやたら推しているこんな世の中じゃポイズンと憤っていらっしゃる方も存在するだろうが、マイノリティであることには違いない。
そのような考えを巡らせているうちに、いつしか羊栖菜のサラダを平らげてしまった。もちろんグリーンピースも片付けた。土井先生のおかげで頑張れた。
ところで、土井先生が練り物が嫌いという設定は、作者の尼子騒兵衛先生が練り物が嫌いだというところから来ているらしい。ということは、尼子先生もおでんが出てきたら大根くらいしか食べられないのか?ロールキャベツが入っているご家庭なのかもしれんが。
ちなみにうちは、おでんにロールキャベツが入っているご家庭である。我が家庭ながら、なかなかシャレオツな気がする。ロールキャベツがおでんに入っている家庭に育ててくれたことには本当に感謝している。しかし、ならば自分がおでんが大好きなのかというと、そんなことはない。
豆はどうだったのかというと、私以外の家族な全員がかなり熱心な豆推しであり、食卓にはいつも、豆専用の蓋付きの陶器が並べられます。
これは40年以上も続く我が家の伝統で、豆だけどういうわけか陶器なのです。他はふつうのピカチュウの食器(初代ポケモン時代の代物なので、これも25年ものである)だというのに。
そして、家で出された豆を食べていたのかというと、食べておりませんでした。何度かトライしたことはあれど、どうしても身体に合わない。他の家族がじゃんじゃん食べているので、これはお残しにカウントされない。
聞けば、2歳の頃に赤飯を食べた瞬間に吐いたことがあるらしい。食育がどうとかではなく、もはや2歳の頃に運命は決まっていたようで、これから先も豆、およびグリーンピースと分かち合えることはないでしょう。
好き嫌いは誰にでもあると思いますが、それを無理に矯正するよりも、よっぽど健康面に問題があるわけでないなら、食べたいものを食べたほうが人生は豊かになるでしょう。
さあ、インドカレー屋にでも行こう。カレーにグリーンピースは日本の発明らしいので、インド人の料理人がカレーにグリーンピースを乗せることはないだろう、という気づきを今日は得たので。