朝潮橋のさりげないセリアとテルメ龍宮
大阪には「○○温泉」という屋号の銭湯が数多く存在しますが、実際に温泉が湧いているところはほとんどなく、あくまで温泉気分を味わってくださいというノリを楽しむのがセオリー(?)だと自分は解釈しています。
しかし、ノリではなく、ガチで温泉がドバドバ湧いていて、しかも特に別途の入湯税などはなく、銭湯の料金だけで入れるところも、大阪市内にいくつかあります。
なぜかそういうところほど「○○温泉」ではなく「○○の湯」という名称で、外観もわりと素っ気ない雰囲気だったりするのですが、今回ご紹介するテルメ龍宮(旧名称は龍宮温泉)は、自ら温泉(テルメ)であることを名乗り出ており、外観もなかなかのインパクトを放っております。
大阪市内の港区は文字どおりに港の近くにあるから港区なのですが、その真ん中にあたる朝潮橋はのんびりした住宅地で、昭和の空気が満載の八幡屋商店街がまったりと稼働しています。
昔ながらのお店がひしめく八幡屋商店街は、実に渋みがあって、テキトーに歩いているだけでも味わい深いのですが、個人的にはこの商店街内にさりげなくあるセリアが大好き。
セリアというのはあの100円ショップのSeriaであり、看板に例のSeriaのロゴが掲げられているのでチェーン店舗のひとつで間違いないと思うのですが、全くチェーンっぽく見えないのがポイントでして、個人商店みがとてつもなく強い。
お世辞にも広いとはいえない店内に、とにかく売れるものは全部つっこんじゃえとばかりに、所狭しと置かれた商品たち。なんとなく、2022年に閉店した天神橋筋六丁目のシルクを思い出す。あのシルクは現在はダイソーが買い取ったので、かつての雑然さが薄れちゃったんだよなあ。
その八幡屋商店街の裏手、阪神高速道路の高架が見えてくるくらいの位置にいきなり聳え立つ白いビル。このビルこそがテルメ龍宮である。
ビルの天辺に据え付けられたネオン看板には、堂々たる「天然」「ゆ」の文字。
ハイツに挟まれたごくふつうの住宅地の真ん中で、天然の温泉が湧いている、ということを高らかにアピールしている。
看板に偽りなく、露天風呂がまるまる源泉かけ流しの温泉です。石造りで雰囲気は抜群。これが一般公衆浴場の扱いでええんか……?という気持ちになる。
椅子などはありませんが、石畳のようなスペース2ヶ所を休憩用に使えるのと、浴槽の一部が寝ころび湯の仕様になっています。それでも椅子をいくつか置けそうな余裕があるくらい、露天エリア自体が広い。
有料の高温サウナは一般的なガラス張りのものですが、スチームサウナがなんだか特殊らしく、スチーム酸素室ということになっており、通常の2倍の酸素が噴出されて……いたという。現在は、設備の故障で噴出されていないらしい。
それでもスチームサウナとしてはちゃんと機能しており、結構な頻度で灼熱フィーバーが訪れる。有料のほうも何度か入ったことがありますが、自分はこちらのほうが好み。
浴室の規模の大きさに対して、1階の水風呂は小さくて、ほぼ、おひとりさま用。温度もぬるめ。
なので、サウナからの導線は悪くないものの、ととのいを期待していくと微妙かもしれません。せっかく気持ち良く外気浴ができる広い露天エリアがあるので、ちょっともったいないような気はしますが、そもそもここの売りは天然温泉であって、そちらの比重が大きいんだろうな。
露天エリアとは別に、浴室から少しはみ出した半露天?のような一室があるのですが、そこに置かれた浴槽にも「温泉」の文字が。
向かい側の浴槽には「バスクリン」と書かれていますが、こちらは水が抜かれており、現在はバスクリン風呂はない模様。
温泉がそこにあるのに、わざわざバスクリンに浸かる人っているのか?あれは家の風呂で温泉気分を楽しむためのものでは?あるいは、本物の温泉とバスクリンを今ここで比べてみてくださいということだったのか?よくわからん。
「温泉」と書かれているからにはここも温泉なのでしょうが、露天の源泉よりもぬるめです。
壁に巨大な日本画?が描かれていますが、少し剥げてきています。「子供はいたずらしたらべんしょう」との注意書きの貼り紙も。相手が子供だろうが、損害賠償は絶対に払わせるという強固な意思を感じる。
浴室の全方面から見える位置にテレビが設置されていますが、音は有料サウナ内でしか聞こえません。逆にいえば、有料サウナ内でははっきりとテレビの音が聞き取れます(たぶんスピーカーがサウナの近くにある)。が、これはサウナー的には好みが分かれるでしょうね。
そんなわけで街中にありながらテルメ(温泉)を楽しめる施設なのですが、更には龍宮でもあるので、脱衣場の横に連なる階段を下った地下にもまた風呂場があります。
こちらは全体がジェットバスコーナーのようになっており、テレビも据え付けられてられているのでゆったりと楽しむことができますが、いちばん奥にある水風呂が実に深くて冷たい。1階のサウナ横にこれを持ってきてほしかった。海の近くの立地だからか、なんとなく海水っぽい気がする。それは近所の朝日湯の半地下にある水風呂でも感じたのですが、気のせいかもしれません。
2階より上にはかなり広い休憩室や宴会場があるのですが、自粛やまん防が過去の単語になった2024年10月現在でもまだ閉鎖中。もはや開けてはいけない玉手箱。もったいないなあ。
最寄り駅は地下鉄中央線の朝潮橋駅ですが、この辺りはJR大阪駅まで直通の大阪シティバスが走っており、けっこう空いています。
朝潮橋駅から大阪環状線経由で帰ると、途中でユニバ帰りの人々とバッティングするので激混みなのですよね。なので時間はかかるのですが、バスで帰ります。
のんびりした住宅地だった朝潮橋を出てしばらくすれば、景色はビルだらけのオフィス街に変わり、最終的にはザ・大都会の大阪駅へと辿り着く。
その間せいぜい30分くらいですが、喧騒ひしめく大阪駅から続く道の先、せいぜい30分くらいで行けるところにテルメ龍宮があるのだと思うと、なんとも不思議な気分になる。
大阪駅の近くにもセリアの店舗がいくつかありますが、いずれも都会的な大型店で、八幡屋商店街のそれとはまるで違う。あのセリアも実は龍宮なのかもしれない。思いっきり地上にあるけど。