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短編小説1000字

100
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2022年1月の記事一覧

短編小説 くたびれた男

 辺りに視線を流す。みんな同じ顔に見える。そこから認識できる顔を探す、いや身体を探す。ベージュのスーツの女、キツそうな化粧をしている。ストッキングにパンプス。悪くない。
 俺はその女のあとをつけるように動きながら女の身体を眺める。胸は小さくもなく、大きいわけでもない。くびれの下に上がった尻。成熟した二本の足が忙しなく動く。階段へと続く通路を歩く俺は女と少し離れてしまったので小走りになる。後ろに着か

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短編小説 ゆめのあと

 髪を乾かして、バスローブを脱ぎ捨てる。一緒にホテルを出て、駅前まで来ると彼はいつものように友香に向かって手を振った。綺麗な指。友香は微笑みながら手を振りかえす。
そのまま改札を抜けるともう晴人の姿は見えなくなっている。LINE、送ろうかな。でも帰ってからでいいか。もう少しこの余韻に浸っていたい。友香は溢れ出す笑みを隠すように頬をグーの手の甲で擦った。

 火遊びの男が、再び友香に連絡を寄越したの

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