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仲村ぷる #短編小説
2021年5月21日 17:17
傘を持っていなかった。一緒に入れてくれる友達もいなかった。真由子は下駄箱にあるはずだったローファーを諦め、白い上履きで駆け出した。 電車に濡れたまま乗ったら嫌がられるだろう。今日はずっと走って帰る。 思ったより雨は暖かく、真由子を濡らした。涙は出ない。雨に紛れて今なら出てきてもいいのに、慣れてしまったようだった。 きっかけなんてわからない。他人の気持ちもわからない。真由子自身の気持ちだって