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短編小説1000字

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大体1000字くらいの短編小説です
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2020年9月の記事一覧

短編小説 あいしてる

大河には女がいる。暇があればデートをして、暇がなければセックスをする、そんな距離感の女が。

女は琴子という名前で、その古風な名前に似合わず先進的な女だった。折半を好み、大河が少し多くを負担すると申し訳なさそうにする。琴子は自分の負担になる折半はせず、断るかほんの少し、笑顔を崩さずにいられる分だけ多くを負担する。
恋人を欲しがる様子はない。大河といるだけで精一杯だと言う。

初めて家に呼んだ時、呼

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短編小説 流氓の女

彼の名前はヤンという。「中国の方からやって来た」という詐欺まがいの決まり文句に私はクスクス笑ってしまった。ヤンは洋と書いてニホンデハようトイウンダ、と片言で話されて私はすっかりヤンの虜になった。

ヤンは自分の家に私を招く事はなかった。相部屋だからと言うのがその理由だが私はヤンが暮らしている部屋を一度くらいは見てみたかった。私の部屋にやってくるとヤンはまずご飯を欲しがった。醤油、味噌、塩、どんな日

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