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短編小説1000字

100
大体1000字くらいの短編小説です
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2020年1月の記事一覧

短編小説 プリン

「お父さん、お腹痛い」
カナはランドセルを背負ったままその場にしゃがみこんだ。
朝食に出したりんごはいつも通り常温だったし、はたしてベーコンエッグにした卵が少し古くなっていたのかもしれない。俺はカナの隣に寄ると顔を覗き込んだ。
「トイレ行くか?」
カナはゆるゆる首を振る。
「そういうのじゃない」
そういうのじゃない?言葉を咀嚼出来なかった。
「学校休めば、治ると思う」
伏し目がちにカナは呟いた。何

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短編小説 冷たいアイスティー

子供は諦めてほしい、と妻は言った。
真剣に僕を見つめる妻と視線を合わすと、自然と首が傾ぐ。
「お茶でも飲もうか」
キッチンに立つ僕の背中を声が追いかけてくる
「もう限界なの」
「性行為を管理されて」
「貴方にも恥ずかしい思いをさせて」
「やすみをとるのが申し訳ない」
「お金もかかる」
「何よりもうがっかりしたくない」  

やかんに水を入れて火にかける。
「ぼくは、子供が欲しいよ」
振り返ると妻は

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