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日本語と英語①


こんにちは。パグ蔵です。


日本語って便利ですよね。

急になに?って感じですよね。
翻訳をやっているとそういうように思うときがたびたびあります。

どういうときにそう思うかというと、、、


まず、「等(など)」という表現が使われているとき

これはかなり頻繁に使われます。すべての要素を列挙できないとき”など”に列挙したもの以外にもありますよ、ということを示唆しているわけですが、これを直訳するとetcetra/etc.でしょうか。しかしながら、これを、特に法律文書のような書類で使うことは、あまり一般的ではないようです。

確かに、実務上etc.は可能な限り避けたいですし、文書中に日本語で使われる”など”と同じような感じでetc.が出てくると奇妙な感じがします。一方で条文の見出しなどでは見かけることが有ります。

しかしながら、訳さずにいると訳文の利用者に、列挙されたものがすべてであるという誤解を招くおそれがあり、誤訳ともなりかねません。

そのため、考えられる対応としては、AA, BB, CCと列挙し、and other XXと列挙したものを含む広義の単語を置いたり、あるいは、including (but not limited to)やsuch asを用いて、列挙したものが先行する単語の具体例であることを示すことが考えられます。

他にも考えられる方法はありますが、とりあえず主な例として上記を挙げました。


もう一つ、日本語の「する」または「行う」という表現が便利だと思います。

日本語では、「申請」→「申請(を)する/行う」のように、名詞に「(を)する/行う」をつけて、名詞の実施を表現することができます。

これは日本語が名詞を重視する言語であるからだと思います。つまり、ある名詞に対して、汎用的に実施を表す「する/行う」をつけてその名詞の実施を表現できます。そしてこれは、非常に多くのケースに適用することができます。

もちろん、「申込み」と「申し込む」のように「する/行う」がつかないものもたくさんありますが、「申込みをする/行う」でも正しく違和感のない日本語です。


一方で英語は動詞を重視する言語です。そのため、applyという単語があって、そこから派生してapplicationという名詞があります。

むろん、多少の違いはあり、ケースバイケースであるものの、「申請をする」という意味で、applyの代わりにfile an applicationということは可能ですが、1語で済むところを3語も使って表現すると冗長に感じられます。。

なぜこのようなことをいうのでしょうか。
そうですよね、動詞1語と名詞+動詞、上記の例でいえばapplyとfile an application、を文脈にあわせて使い分ければいいという話ですよね。

これには理由があります。

契約書等では特定の用語や表現を、その文書内において一般的な意味とは異なる特定の意味で使用するために、定義をすることがよくあります。

例えば、ある契約書で知的財産権の実施などの特定の行為を「実施等」と定義して、これを"Exploitation"と訳した(定義した)とします。

そして、日本語で「知的財産権の実施等をする」といっても違和感はありませんが、これをEploitationを使って直訳するとぎこちなくなりがちです。Exploitを使えば早い話なのですが、動詞形を定義していない限り、Exploitを定義語のExploitationの動詞形として使用していいのかという問題が生じます。

説明が長くなりましたが、英語では多くの場合、動詞と名詞は完全に別の単語となっているため、動詞には動詞形、名詞には名詞形と異なる単語を用いる必要がありますが、日本語では単純に「(を)する/行う」をつければ特定の名詞を維持したままその実施を表すことができるため、日本語は便利だなと思うことがあります。

徒然と書きましたが、日本語と英語は非常に異なる言語で、どちらが原文であるかにかかわらず、原文に完全に対応する自然な美しい訳文を作るのはほぼ不可能だと思います。

今回は和文英訳を取り上げましたが、英文和訳でも訳しづらい表現というものは多く存在しますので、そういったものも今後取り上げられればと思います。

お読みいただきありがとうございました。
それではまた。


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