【肩こりからスポーツでのケアにも使える!】リハビリでよく遭遇するが避けがちな頸椎の評価と治療について!
セラピストやトレーナーの皆さんはおそらく一度は遭遇したことがあるかと思う、対象者の訴え・・・
「首が痛いです・・・」
「しびれがあって・・・」
僕自身、こういった訴えに対して最近まではあまり何か有効な対処をできた覚えがありません。
なんとなく首の訴えって怖い感じがするんです。
でも、そんな怖いところに対して訴えを多く持っている患者さん、多いんです。(ですよね?)
そもそも、なぜ頚部のところに訴えが多いのでしょうか?
また首に訴えがなくても、肩甲骨周囲の筋が頸椎や頭部に付着していることもあり間接的に肩関節、はたまた胸郭を介して体幹にまで影響を及ぼすこともあります。
そして頚部に着目すべき最も大切な理由は、「前庭脊髄路」の存在です。
前庭脊髄路は前庭器官(半規管・耳石器)で、頭部の動き(回転や傾き)を前庭神経節で検出し、前庭脊髄反射を引き起こすものです。
つまり頭部の位置で、姿勢コントロールが変化し頚部後面や脊柱の背面側などの筋緊張を変えてしまいます。
前庭脊髄路が脳卒中における片側性の筋緊張亢進や痙縮の出現に影響を与えてるとも言われます。(Milter DM et al,Neurophysiol 2014)
またヤンダは頸椎を固有感覚の重要な領域の1つと位置付けて、姿勢やバランスにおいて広範囲の問題を生じるとしています。(Phil Page et al, The Janda Approach 2010)
以上のことから、たとえどのような対象者(高齢者、脳卒中、アスリート)であっても頸部への介入は必須となり得ます。
またしびれや痛み以外にも、緊張型頭痛に対しても頸部触診で圧痛点が確認できたとしています。(吉村ら、脊髄外科 VOL31 NO1, 2017)
このnoteでは無料部分では頚部の解剖の話を中心に行い、後半の有料部分では実際の評価・介入方法、自主トレーニングについてを紹介します。
頸部の解剖学
※無料部分の筋骨格画像はすべて©teamLabBody-3D Motion Human Anatomyより引用
頸椎の棘突起はフォーク様に少し割れています。
胸椎と頸椎の境目がわかりにくいときは頚部を回旋した際に回旋が生じる一番下の椎体が隆椎(C7)ですので、触別してください。
以前書いた胸椎のnoteでも記載していますが、横突起は棘突起の真横にはありません!
頸椎の場合は棘突起の2横指外側かつ1横指半上になります。
またC1・C2などは棘突起を触れてそこから真横にスライドしていくと、横突起の下端を触れることができます。
横突起のすぐ内側には椎骨動脈が通過するための横突孔があり、C3からは脊髄神経溝が存在します。
脊髄と血管がたくさん入り組んでいるところなので、わずかな位置の変化がしびれや上肢の冷感などにつながってしまいます。
頸椎後面にある表層の筋肉は、非常に硬くなりやすいです。
トリガーポイントの聖書にも、胸鎖乳突筋起始部および僧帽筋上部には圧痛点が存在するとしています。
それだけ頚部の表層筋は代償的に使用しているということだと思います。
表層の筋よりも少し深い部分に棘間筋や頭板状筋、肩甲挙筋などがあります。
主に側屈と回旋に関わるので、どれかが固くなれば可動域に大きな制限をもたらす原因となります。
深層にある頸椎伸展筋は、頸椎屈曲の際の安定化を図る筋肉となり非常に重要です。
上記の筋たちは屈曲筋ではあるのですが、動きとしては頸椎を後方へ引くような働きをし、前方の安定性に大きく関与します。
この椎前筋といわれる筋たちが機能不全に陥ると、Head forward postureの原因となります。
斜角筋の柔軟性は1・2番肋骨の可動性に大きく関与します。
また斜角筋の柔軟性低下が引き起こすのが、「斜角筋症候群」です。
斜角筋症候群が生じると、上肢のしびれや冷感の訴えが生じることがあります。
私の経験上では、超音波治療器をパルス派モード(30%)で行うと一時的に症状が軽減し、そこから軟部組織テクニックなどを施行することで改善が得られることが多いです。(あくまで私見です。)
頸椎の症状の難しいところはレントゲンなどの画像評価および診断と、本人の訴えが一致しないことがあることです。
画像評価で明らかな所見があったとしても症状がない場合もありますが、この場合は「今後症状が起こりえる」と私であれば考えます。
逆に所見を認めないが症状が出現している場合は、胸椎・肩甲帯も含めたアライメントや筋spasmの有無、Corestabilityの評価を行う必要がありますし、症状が立位で出現するのであれば、立位での下肢も含めた姿勢評価や症状が増悪する動作の分析が必要です。
紫色の部分が椎間板で、椎間板の変性に伴う椎間板の高さの減少によって、鈎状突起に対しての圧が強まり、骨棘が生じることで椎間板が外側~後外側へ伸展してしまう(水色の矢印:外側への伸展)ことがあります。
それによって神経や動脈を圧迫してしまい、上肢の冷感やしびれといった症状が出現することがあります。
ただ、神経も血管も柔軟性があるので圧迫されても症状が出ないことがあります。
頸椎の運動学
胸椎のnoteにも記載しておりますが、椎間関節では
屈曲ではディバーゲンス(距離が離れていく)
伸展ではコンバーゲンス(距離が近づいていく)
という風に動いていきます。
C2/C3~C6/7頸椎の場合は、他の関節と違い純粋な側屈は行えず、必ず同側の回旋が生じます。
これは鈎状突起に傾斜が存在するために生じてしまう現象です。
C2/C3~C6/7での回旋も同様に、鈎状突起の傾斜があるため、同側の回旋が生じます。
(※姿勢の教科書 P38~39より引用)
頸椎で生じる各関節間の可動域を示していますが、ここで着目してほしいのはC1/C2間での回旋の可動域が非常に大きいことです。
C0~C2における動きは他の関節とは少し違うので注意が必要です。
C2には「歯突起」があり、その突起は上方へ伸びておりC0の高さまで到達しています。
そして歯突起の先端には「翼状靭帯」があり、C0に付着しています。
つまりC0/C1で右回旋が生じた際、翼状靭帯を介してC2が引っ張られて、C2/C3でも右回旋が生じるということになります。
そして相対的にC1/C2では左回旋が生じているということになります。
つまり首が回りにくい人の着目すべき頸椎は実はC2/C3ということになります。
頭部関節の治療・評価のポイントは先程述べたとおり、C2/C3にあります。
最大ディバーゲンス・最大コンバーゲンスは上記のようになりますが、動きとしては非常に小さいので自動運動検査や問診と組み合わせながら展開していくことが大事になります。
C2/C3~C6/C7の最も大きな特徴としては
・カップリングモーション:側屈の際に回旋が必ず伴う
・胸椎と違い肋骨がない:可動性が大きく、安定化は筋に大きく依存
というところだと思います。
従って、前述した頸椎周囲の筋肉の柔軟性の評価が重要となってきます。
頭部関節は先程述べた「翼状靭帯の存在」が最もキーになります。
ここまでの知識をもとに、視診・問診・自動運動検査・他動運動検査・アプローチという流れとなります。
ここからは実際の評価を記載していきます。
ここから先は
¥ 980
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?