【腰痛から姿勢コントロール障害にも介入できる!】評価や介入が意外に難しい?身体のコントロールに最も重要な骨盤帯の徒手・運動療法
昨今、色々な治療概念があったり、その中で色々な部位にトピックスが当てられていると思います。
その中でも、徒手療法を熱心に勉強している人は「仙腸関節」や「骨盤帯」を必ず学んでいます。
身体の土台になる骨盤帯は下肢から受ける床反力や、上半身の質量を両下肢へ分散させる、内臓の保護など非常に重要な役割を担っています。
ですが、この骨盤帯の部分を「きちんと」評価できるセラピストを正直なところあまり見たことがありません。
骨盤といっているのに「股関節」の評価と混合していたり、「腰椎」のことを無視したりなど・・・
つまりそれだけ様々な部位の運動と深くかかわっているということになります!
そして昨年(2019年)の運動器理学療法学会でも「腰部骨盤帯の運動学と理学療法」というテーマでセミナーが開催されています。
また療法士の世界では有名な「AKA博田法」は仙腸関節に主が置かれた治療法です。
なぜこんなにも骨盤帯にトピックスを当てる人が多いのでしょうか?
私自身、どのような症例に対しても骨盤のアライメントやその収支の筋肉はほぼ必ずといっていいほどチェックしています。
やみくもにチェックしているというよりも、どのような症例やアスリートをチェックする場合でも必ずといっていいほど骨盤帯や仙腸関節に問題があることが多いのです。(1番目とは限りませんが・・・)
このnoteでは骨盤帯の解剖学・運動学、仙腸関節障害の病態や筋機能障害などのエビデンスの紹介を無料部分で、有料部分では実際の評価方法~治療、運動療法を紹介していきます。
このnoteを購入していただくことで、
・一通りの骨盤帯に対する評価・アプローチ方法を知ることができます!
・ほかのセラピストがあまり着目していない胸郭を含めたクリニカルリーズニングが展開できるようになります。
・疼痛改善はもちろん、運動療法まで知ることで、アスリートから高齢者まで応用が可能になります。
・おおざっぱな評価ではなく、どの関節の可動性が問題なのかを明確に評価ができます。
・これで自信をもって骨盤帯を評価・治療が可能になるはず・・・!
購入されずとも、無料部分だけでも有益な情報をという思いで作成しておりますので目を通していただけますと幸いです。
骨盤周囲の解剖学
※無料部分の筋骨格画像はすべて©teamLabBody-3D Motion Human Anatomyより引用
骨盤を評価する際にもっとも着目するのは「骨のアライメント不良」です。
つまり、「今自分はどこを触っているのか」がわからないといけません。
まずは解剖を頭にいれて、骨の触診の練習をしていくことをお勧めします。
特に、上前腸骨棘(ASIS)・下前腸骨棘・後上腸骨棘(PSIS)・腸骨陵・恥骨結合はすぐに触れることが可能なようにしておくことが骨盤帯(仙腸関節)への介入には必須です。
仙腸関節は滑膜関節であるが、周囲を強靭な靭帯によって支持され、衝撃吸収作用としてわずかに動きが生じます。
またアナトミートレインでいう、スパイラルライン・スーパーフィシャルバックライン・ファンクショナルラインはいずれも仙骨付近(PSIS~仙結節靭帯)を走行し集中します。
そして、PSISの外側には臀部のトリガーポイントがあるとも言われています。
そして、仙結節靭帯はハムストリングスとの連結があり、同側または反対側の胸腰筋膜を促通するといわれています(V A.Mooney et al, 1997)
仙結節靭帯を介した軟部組織が痛みの原因やパフォーマンス低下の要因となると考えられるので、仙結節靭帯は触れるようにしておくことが重要です!
深層外旋六筋は腸骨・恥骨・坐骨を起始に持ち、そこから大転子に停止します。
深層外旋六筋は股関節の疾患でopeをされたとき、後外側アプローチであれば間違いなく侵襲を受ける筋肉です。
つまりこれらの筋肉の粘弾性が仙腸関節のアライメントにも大いに影響することを考慮しておく必要があります。(股関節は大腿骨ー寛骨で形成される関節ですからね・・・)
また坐骨に付着する筋肉は、後述しますが腸骨を後方へ回旋させます。
そしてハムストリングスと仙結節靭帯は連結があるので、ハムストリングスは仙腸関節への介入にとって非常に重要なキーマッスルになってきます。
大腿前面の筋に関しては大腿直筋(RF)や縫工筋などのASISに付着する筋肉が腸骨を前方回旋させる作用があるので重要になってきます。
骨盤帯の運動学
脊柱から伝達された体重は仙骨を介して大腿骨へ荷重を伝達していきます。
この「骨盤輪」を構成す際の要となるのが仙骨であり、前方で骨盤を結合させているのが恥骨結合であり、安定化にとって非常に重要になってきます。
腹臥位での脊柱伸展運動ではほぼSIJは可動しない=上半身が動いたとしても、腰椎から骨盤への荷重が少ないと可動しない(畠ら,理学療法学,2015)といわれており、基本的には荷重位で仙腸関節の動きは誘発されます。
仙腸関節の運動軸はS2にあるとされ、関節面はS1~3となり、耳状面であり「ブーメラン」のようになっている。動きの割合はS1~2で1/3、S2~3で2/3となっています。
歩行などの運動中、仙腸関節は股関節筋と靭帯の張力によって左右で反対方向のねじれモーメントが発生します。
その際は対角軸上で関節の動きが生じます。
仙腸関節の可動性は諸説ありますが、健常人で回旋1.7°、並進0.7mmといわれ、仙腸関節障害があるものは回旋可動域が6°あると報告されています。(Jacob H et al, clin biomech, 1995)
つまりこのねじれモーメントを絶えず与え続ける、もしくは非常に大きなねじれモーメントが与えられてしまい、仙腸関節が大きく動いてしまうと痛みとして侵害受容器が反応してしまいます。 (どの文献か忘れてしまいましたが、仙腸関節にある関節受容器のほとんどは侵害受容器だといわれています。不確かなので、参考までに。)
仙腸関節の動きは
仙骨の前傾(ニューテーション) ≒ 腸骨の後傾(インフレア)
仙骨の後傾(カウンターニューテーション) ≒ 腸骨の前傾(アウトフレア)
に分けられます。
仙腸関節の動きは耳状面で起こるのですが、見た目上は前頭軸で起こるようになっています。
骨盤が後傾位→前傾位になるに従い、仙骨上部が中下部を中心にニューテーションが生じるといわれています。(高山,日医大誌,1990)
腸骨を後傾させる筋はハムストリングスが主な筋ですが、腹筋群が発達しすぎている、円背が長期間になり腹部前面が短縮していたりすると腸骨後傾が生じる原因となります。
腸骨を前方回旋させる筋としては腰背部の筋(広背筋や腰方形筋など)、加えて大腿前面の筋(RF・TFL・縫工筋など)になります。
このあたりの筋肉は、介入することが多いかと思いますが、逆に緩めすぎてしまうと仙腸関節の安定性が失われてしまうので注意が必要になります。
仙腸関節には前屈トルクが働くと安定化作用が得られる特徴があります。
A:体重が仙骨のニューテーションを、と股関節圧迫力が腸骨のインフレアを生み出すことで、仙腸関節に前屈トルクが発生、その際に関節面の適合性が増し関節が固定されます。
B:Aで発生する前屈トルクを制御するために骨間靭帯と仙結節靭帯が伸張され、仙腸関節が安定します。
C:脊柱起立筋群が仙骨のニューテーションに、腹直筋は腸骨を後方回旋(インフレア)させる。ハムストリングスは坐骨から腸骨を後方回旋(インフレア)させる一方で、仙結節靭帯とも連結し張力を高める作用があります。
また内腹斜筋(腹横筋)は、荷重の際に仙腸関節に生じる剪断力を抑制する作用があり、梨状筋や腸骨筋は仙腸関節の関節包や辺縁部に直接付着し、安定性を与えています。
そのため、コアスタビリティといわれている筋肉をうまく使えることは仙腸関節の安定化にとっても非常に重要となり、仙腸関節へのメカニカルストレス軽減につながります。
骨盤周囲の障害像とエビデンス
仙腸関節障害の病態は2パターンありますが、ポピュラーなのは「仙腸関節不安定症」です。
仙腸関節は前述の骨盤輪によって安定化を図っていますが、仙腸関節周囲の靭帯の緩みが生じると、過剰に動くことで侵害受容器を刺激し疼痛が生じます。
また過剰運動性を制御するために周囲の筋へのストレスがかかりspasmや短縮が生じてしまいます。
また、仙腸関節不安定性は恥骨結合への牽引ストレスを惹起します。
鼠径部の痛みに仙腸関節機能不全が関連するという報告も学会発表レベルですが、存在します。(磯田ら,東海北陸ブロック理学療法士協議会,2011)
エビデンスは見つからなかったのですが、まれに遭遇するのが「ブロッキング」です。
私が学んだドイツ筋骨格医学会の資料から一部引用させていただきましたが、急性で生じる症状で関節の遊びが消失してしまうことが特徴です。
筋肉質なアスリートの男性に多いようなので、もしかすると欧米人に多いのかもしれません(あくまで私見)
仙腸関節障害で報告されている代表的な知見をまとめると、
・腰痛の内の15~20%は仙腸関節由来
・長時間の同一姿勢保持や体幹の回旋運動などが、リスク
・過剰運動性を有することが多い
・アライメント不良があると痛みにつながる
ということになります。
つまり、腰痛を訴える人には骨盤帯のアライメントチェックを行い、過剰運動性を防ぐために隣接関節の可動域制限の有無を確認し、運動療法による安定化を図り、生活指導をすることが流れになります。
仙腸関節の安定化には、前述の筋群が関わりますが、特徴的なのは仙腸障害ではAPA's(予測的随伴性姿勢制御)でコアスタビリティといわれる筋群が働かず、ハムストリングスが代償的に働きますが、そのハムストリングスも弱化しており、仙結節靭帯の張力を増していくというような病態がありそうです。
ここまでが骨盤帯の基本情報になります。
ここからは実際の評価と治療、運動療法の解説になります。
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