椎間板ヘルニアで手術をすべきかどうか考える3つのポイント
ヘルニアが原因の腰痛、辛いですよね。痛いだけじゃなくて、痺れや動かしにくさも出てきます。
今はヘルニアについての情報が結構出回ってきたので、「手術をしなくても自然に治るケースがある」というのもきっと知られてきましたね。
手術は治療の候補ですが、心配だからといって慌てて手術する必要はありませんよ。
そもそも椎間板ヘルニアとは?
まず「普通のヘルニア」についてですが、これは体内のある臓器が本来あるべき位置から脱出してしまった状態のことを言います。臍ヘルニア〈でべそ〉、鼠径ヘルニア〈脱腸)あたりが有名ですね。
これが背骨のクッションである椎間板におこったものを「椎間板ヘルニア」と呼びます。椎間板の中に存在する髄核というゲル状の組織が、外に飛び出してしまった状態です。
この核が外に飛び出ることで、神経が圧迫されることになります。よって腰痛、脚の痛みやしびれ、ひどい場合には感覚が無くなってしまったり、足が動かせなくなってしまう事もあるわけです。
ただこのヘルニア、一般的には自然治癒が期待出来ると言われています。ここは嬉しいポイントですね。
この赤いものがヘルニアのイメージです。
ヘルニアで手術が必要なケースは?
自然に治ることも期待されているヘルニアですが、どういう場合に手術を考えるかというと、そこは当然ドクターとの相談になります。
その上で、以下の3つのポイントに注意して下さい。
・今の腰痛やその他症状が、生活に支障をきたしているかどうか
・早く腰痛を治す必要があるかどうか(厳密には手術をしたから必ず早く治る、というわけではない)
・自然治癒を期待して様子見を続けていたけど、良くならない場合
ここからわかるのは、まずは様子見で大丈夫ということです。その様子見の中でストレッチや日々の姿勢の癖を治す努力をするのが、腰痛のない健康な身体に変えるために効果的だと考えられます。
ひどいヘルニアが見つかったのにあまり痛くないケース
ここで少し知っておいてもらいたいのは…
レントゲン上で明らかなヘルニアであったとしても、症状が全く出ない場合があるということです。
画像を撮って余計不安になってしまう場合があるのですが、これは無症候性ヘルニアと呼ばれ、結構よくあります。
何故こんなことが起きるのかと言うと、ヘルニアは脊髄の核みたいなものが出っ張ってきて神経を圧迫する病態でしたよね?
その核の部分と、神経の部分の間には、少しスペースが空いています。そのスペースは人によって大きかったり、小さかったり、かなり差があるわけです。
つまり、スペースが大きい人はヘルニアの核がでっぱってきても、神経の逃げ道があるので圧迫されにくいんです。
スペースの小さな人は、出っ張ってきた核に対して神経の逃げ道がないので、症状が出やすくなってしまうわけです。
他にも神経の分岐の位置などの理由が重なってくるのですが、とりあえず覚えておきたいのは「ヘルニアの核が出っ張っているからといって、必ず状態が悪いわけではない」ということ。
余談ですが、「腰痛で受診しヘルニアと診断され、手術をしたけど治らない」。実はそんなケースもボチボチあります。こんな場合、腰痛の原因が他にもあったか可能性があります。
(腰痛の原因を診断するのに、レントゲンなどの画像だけだときちんと判断できないと言われています。病状と合わせて診断されるみたいですね)
ヘルニアの手術後、再発する可能性は?
そもそも椎間板ヘルニアの手術をした後ですが…またヘルニアになってしまう確率は術後5年で4-15%程度と言われています。わりと再発してしまうんですよね。
ちなみに保存療法と手術療法の比較結果は、一番有名な研究を例に出すと、
手術療法は術後1年で65%、4年で66%、10年で58%が良好な成績
保存療法は1年後36%、4年後51%、10年後56%が良好な成績
つまり、術後1年では差があるものの、術後4年以降は有意な差がないと報告されています。
Nykvist F, Hurme M, Alaranta H et al.: A 13-year follow-up of 342 patients. EurSpine 4: 335-338, 1995.
この研究、術後65%が良好の成績ということは、反面35%はそうではないということ。これは若干辛いですね。
ただしこの研究はかなり昔のもの。当時の検査機器の性能は今と比べるなら月とスッポンです。腰痛に対する知識も広まっており、原因の原因をより詳細に調べやすくなっています。そして手術方法に関しても、最近の非侵襲的な手術では成績が上がっていて、より痛みの減少に効果的と言われています(長期的にはそれほど大きな差がでない点は変わりないようですが...)。
ちなみに、ヘルニアの再発防止に一番大事なことは、身体の柔軟性を高めることと、身体の使い方をよくすることです。そもそも椎間板ヘルニアになりやすい場所は、背骨の中でもよく動く場所。
股関節や胸の部分の柔軟性を高めて、日々の姿勢を良くすることで椎間板ヘルニアを予防することができますよ。
これまでの話をまとめると、ヘルニアの場合、急いで手術を行う必要性は少なそう。ただし、痛みを急いで取りたい場合や、生活に支障をきたすほどの状態ならば手術が勧められるということになります。
その中で、痛みの原因が本当にヘルニアから来ているものかどうかはしっかりと評価しないといけませんね。
と、いうことで今回の記事は
「ヘルニアで手術をすべきかどうか考える3つのポイント 」でした!
ありがとうございました〜