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ハリー・ハーロウの実験で見えた「愛」の方向性

ハリー・ハーロウは世界で最も賛否両論された心理学者の一人ではないだろうか?

ハリーの実験では、アカゲザルの赤ちゃんを用いて愛着の形成に必要な要素と愛着をきちんと形成する事の重要性について調べた。

しかし、この実験が動物への虐待だとして多くの批判を受けた。

彼の研究では、それまで赤ちゃんの愛着形成には十分な栄養の補充だけで十分だとされていた考え方を根底から覆した。

「愛着」とは、簡単に言うと、子供が他者との間に築く絆の事で、子供が生まれて初めて接する他者である母親との間に上手く愛着を形成が出来なければ、その後の他人との人間関係にも影響が出ると言われている。

ハリーの実験が行われるまでは、きちんと母乳さえ与えていれば、それ以外の時間を一人で放っておいたとしても愛着は形成されると考えられていた。

しかし、彼の実験では、アカゲザルの赤ちゃんはその仮説とは真逆の反応を見せた。

彼らは母乳よりも母親に触れる暖かさを選んだのだ。

この結果から赤ちゃんの愛着形成には物理的な体の接触が大事だという事が分かった。

実験の中で母親の暖かさから切り離され、その暖かさを受けることなく育ったアカゲザルの子供たちはその後、他のアカゲザルとの接し方に問題が見られ、行動にも違いが見られている。

この実験によって、今では当たり前になっている母親と赤ちゃんのスキンシップが大切だと証明されたのだ。

そして、彼の問題とされているもう一つの有名な実験である。

その実験では、アカゲザルの子供が母親に抱き着こうとするのをどれだけ母親が跳ね返したとしても、何度も母親の基に飛びついていこうとする行動が見られたという実験である。

つまり、母親からの愛情が無かったからといって、子供から母親への愛情が無くなるという事は無いという事が証明された。

これはボールビーの愛着理論とは少し矛盾する点があるので、どこまでが正しいのかは定かではないが、実際にその時のアカゲザルの子供はどれだけ母親からその愛情を跳ね返されても母親を愛し続けた。

この実験から分かる事は、無条件に愛されているのは子供ではなく母親の方であるという事である。

よく「赤ちゃんは無条件に愛される」という人がいる。

しかし、実際はそんな事もない。母親の愛情を受けずに育ち、他人への信頼や安心感を失ったまま大人になる人も多い。

実際、それらの愛着の無形性によって他人との人間関係を上手く築けない人は多い。

つまり、子供が母親から無条件に愛されるという事はなく、逆に無条件に愛されているのは母親の方なのかもしれない。

ハリー・ハーロウの実験で見えた「愛」の方向性。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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