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自分の問題は見えない

18世紀頃、アメリカで『産後感染症』というのが流行した。

当時は『puerperal fever』や『Black Death of Childbed』などと呼ばれていたらしい。

どういった事態かというと、出産した母体が出産から48時間以内に細菌に感染し、高熱を出し死んでいくというものである。

かなり専門的な疫学の話になるので細かい説明は省くが、とにかく原因不明の感染症に、とある病院では出産した女性の7割以上が感染し亡くなっていったそうだ。

当然だがこの感染症は当時大きな問題になった。

科学が発展し始めた頃で、原因もすぐに分かるだろうと誰もが思っていた。

しかし、一向に原因が分からない。

実はその当時、病院で出生時を運んでいたのは解剖医だった。

午前中に死体の解剖を行った医師が、解剖を終えて赤ん坊を抱きかかえるのだがそこに問題があった。

それは、死体の解剖を終えたあとに誰も手を洗っていなかったのだ。

この事実に気づいたのは弁護士で裁判官のOliver Wendell Holmes Jr という人だった。

彼は、病院の医師達に対して、

『君たちが問題だ』

と訴えた。しかし、医師達は耳を傾けようともせず、Oliver W Holmes を頭がおかしいやつだとみなした。

彼らはOliverを30年間もの間バカにし続けた。

当然、その間も感染者や死亡者は出ていた。

そして、Oliverが初めて問題の原因を訴えてから30年後、とある医師がその事実に気づき手を洗い始めるまで、誰も手を洗わなかったのだ。

それから死体の解剖をしたあとは手洗いが義務付けられた。

すると、産後感染症はピタリとなくなった。

この出来事から得られる教訓はこれだ。

『君が問題だ。』

我々は人を篩いにかけ評価したり採点するのは得意だ。

他人の欠点や間違いであればいくらでも見つける事ができる。

しかし、その一方で自分の問題は中々見えないものだ。

もしくは、仮に見えていたとしても見ようとしないものだ。

頑なに手を洗わなかった医師たちはまさにそうだろう。

手を洗うなんて幼稚園児でもできることだ。

しかし、もし間違ってそんな事をして感染症がなくなってしまえば彼らは自分が間違っていた事を認めなければならない。

くだらないプライドのために何千、何万、いくらかも分からない数の人の命を奪っていたわけだ。

人の話として聞けば滑稽な話だが、そんな事を言って笑ってもいられない。

なぜなら我々も同じようなことをしているからだ。

どれだけ考えて、原因を探っても見つからない問題が目の前にある人は、自分自身を第一容疑者にすることをオススメする。

それは非常に辛い、それも分かる。

僕も可能ならしたくない。だがそういうわけにもいかないだろう。

できる範囲で構わない。

常に『自分に問題があるんじゃないか』と考えてみてはいかがだろうか。

自分の問題は見えない。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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