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獏と夢師

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獏と夢師 其の三

獏と夢師 其の三

あるところに絵描きがいました。彼は人柄も良く、人懐っこい性格でした。ただ、絵描きとしてはひとつ大きな問題を抱えていました。彼のよく描く絵はその彼の見た目や人となりとは全く真逆なものでした。暗色寒色を撒き散らし、一昔前のヘドロの海のようなドロドロと腐り落ちた果実を踏みつけたようなグロテスクさを表していたのです。多くの人は悩みました。彼自身も悩みました。そして、彼はある時から奇妙な夢を見だしたのです。

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獏と夢師  其の二

獏と夢師 其の二

「今日も胃もたれしそうな餌だこと」
その部屋の四面から赤黒いねばねばとした粘菌とも形容できる物体が垂れ下がっていた。何かの生き物の中にいるかのような湿度や生ぬるさが俺の意欲を削いで行く。
「食べきれる分だけいけるか」
「いやいや、幾ら俺が質より量派って言っても、これは悪質ですってば」
「腐りかけが好みじゃなかったか」
「腐りかけ!腐ってるのとは違うって」
気づけば両足を粘菌もどきに取られているし、

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獏と夢師 其の一

獏と夢師 其の一

酒に酔いたい気分って人間にあると聞くがどんな具合なのか全く見当も付かない。人間はどうやら満たされたい、その快楽で脳を浸したいなどという浅い欲を片手にふらついてるらしい。全く僕には無縁の話だ。満たされるというひと時に興味すらわかないのだ。さらに、酒という薬だか毒だかよくわからんもので現世から逃げたがる。逃げることは否定しない。それも選択、尚良しである。ただ、ひとつ忠告が。逃げたその先が極楽か地獄か、

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