獏と夢師 其の二
「今日も胃もたれしそうな餌だこと」
その部屋の四面から赤黒いねばねばとした粘菌とも形容できる物体が垂れ下がっていた。何かの生き物の中にいるかのような湿度や生ぬるさが俺の意欲を削いで行く。
「食べきれる分だけいけるか」
「いやいや、幾ら俺が質より量派って言っても、これは悪質ですってば」
「腐りかけが好みじゃなかったか」
「腐りかけ!腐ってるのとは違うって」
気づけば両足を粘菌もどきに取られているし、さっきより心なしか膨らんでいるような。しかし、量的には問題ない。というかこのくらいで八分目くらいか。ともかく、粘性が厄介だ。もう少しさらさらしていたら喉にひっかかりづらい。
「さらさらしてたらひと飲みなんだけど」
「粘性が強いか…少し待ってくれ。できれば、探ってくれ。私は案を練る」
「はぁ」
溜息を抱え、両手両足に絡みついた粘菌を振り解きながら、なんとも知れない部屋を探った。
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