フィールド・オブ・ドリームス(1989)
のどかな野球場が見せてくれる夢
穏やかでファンタジックな野球映画
野球界の最高峰アメリカ・メジャーリーグをめざし、日本の多くのプロ野球選手たちが海を渡りました。心身ともに屈強な外国人選手たちの中で切磋琢磨する日本人選手たちの姿は胸に響くものがあります。
中でも、けた外れの成功を成し遂げた大谷翔平選手は、自分を信じて好きなことにとことん打ち込み、たゆまぬ努力を続けることの素晴らしさに改めて気づかせてくれました。
野球はアメリカンドリームの象徴の一つと言えるでしょう。アメリカでは、1860年代にプロ野球選手が登場しはじめたと言われています。以来、160年以上の時を経ても、未だ人気は衰えず、国内外の多くの若者たちがメジャーリーガーの夢を追いかけています。
夢を叶えて成功するのは、ほんの一握りの厳しい世界。でも、たとえ夢破れても、夢中で好きなことに打ち込んだ日々はその後に続く、さまざまな人生の原動力になるでしょう。
本作は、1985年に出版されたW.P.キンセラの小説『シューレス・ジョー』の映画化。1919年、メジャーリーグのワールドシリーズで起こった衝撃的な八百長事件(ブラックソックス事件)に巻き込まれ、無実にもかかわらず、野球界を永久追放された悲劇のメジャーリーガー、“シューレス”・ジョー・ジャクソンが現代によみがえった意味とは?
人々の夢の詰まった野球場(フィールド)へ帰って来た“憧れ(夢)”の野球選手たちと、図らずも彼らの夢を叶え、自身も心の安らぎを見つけた農場主との魂の交流を描いたファンタジックなヒューマンドラマです。
突然現れた“幻”のメジャーリーガーや、レイの来訪をかたくなに拒絶するテレンス、さらに意外な方法で届けられる第3のメッセージなど、ミステリアスな展開です。
抽象的なメッセージはまるで神からの啓示のよう。夢を追わず実直に生きてきたレイが何かにとりつかれたように、メッセージの謎を解き明かそうとする姿が神秘的なムードの中で描かれています。
終始、神妙な面持ちのレイの必死な姿は悲壮感を漂わせています。レイを演じるのは、『アンタッチャブル』(’87年)の好演で、一躍主演スターの仲間入りを果たしたケビン・コスナー。気迫のこもった熱演で、人生をかけて謎めいた旅を続けるレイへの感情移入を誘います。
悩めるレイとは対照的に、かつてのメジャーリーガーたちはアイダホの雄大な自然に囲まれた野球場でのびのびと野球をしています。昔懐かしいニッカポッカ風のユニフォーム姿がのどかな雰囲気を醸しますが、時が来ればトウモロコシ畑の奥へ帰っていく彼らの姿はちょっぴり物悲しいです。彼らの背中が寂しく見えるのは、彼らがこの世に後悔を残しているからかもしれません。そして、レイもまた野球が原因である後悔を抱いていました。
野球を題材にした映画と言えば、「頑張れば報われる」ことを声高に伝える痛快な映画が多いですが、本作が光を当てるのは、さまざまな事情で夢を追えなかった人たちです。
ジョーのような不運な出来事のほかにも、家庭の事情や自身の才能などにより夢への道が閉ざされた彼らの魂を、優しく導くように昇華させるエピソードの数々はしみじみとして、静かな感動を呼びます。
たとえ夢に描いた人生ではなくても、人生は続いていきます。だからこそ、せめて後悔のない生き方をすることが大切なのかもしれません。
天に向かってスクっと伸びたトウモロコシ畑の雄大な眺めに心が癒されます。私は心が疲れた時に、この映画が観たくなります。
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