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きっと、うまくいく(2009)

人生の成功を手に入れるには?
学歴社会に物申す、とびきり楽しいインド映画


2010年のインド映画興行収入第1位を記録したコメディタッチのヒューマンドラマ。インド国内のアカデミー賞で作品賞を含む16部門に輝くなど、高い評価を受けています。

エンジニアを目指す若者たちが集まるインド屈指の難関工科大学を舞台に、学歴偏重の競争社会の弊害を、緩いユーモアを交えつつも力強く訴えた痛快な作品です!

【ストーリー】
ファルラーン(R・マドハヴァン)は飛行機が飛び立つ寸前、ある知らせを受けて、慌てて飛行機を降ります。そして、大学時代の親友のラージュー(シャルマン・ジョーシー)の家へ駆けつけます。ラージューも、その知らせを受けて、寝起き姿のまま飛び出し、2人は10年ぶりに母校の工科大学ICEへ向かうことに。
彼らを呼び出したのは同窓生のチャトル(オミ・ヴァイディア)でした。今や大企業の副社長となったチャトルは「自分が一番成功している」と得意気ですが、その成功を見せつけたい相手のランチョー(アーミル・カーン)の姿はありませんでした。
ランチョーはチャトルにとっては憎きライバルでも、ファルラーンとラージューにとっては無二の大親友。そうして、3人は大学を卒業以来音信不通のランチョーを探しに行くことにします。

映画の中心になるのは、大学時代の日々。大学時代に何があったのか? ファルラーンたちがランチョーに会いたい理由が徐々に明らかになっていきます。

IT先進国のインドで、エンジニアになることは成功の証。ファルラーンは親の期待に応えるため、ラージューは貧困に苦しむ実家を助けるため、難関工科大学のICEに入学しますが、学生たちは厳しい教育者のヴィールー学長(ボーマン・イラーニー)の下、支配的な教師たちに理不尽な扱いを受けることになります。

しかし、ランチョ―だけは屈せず、理系らしい明晰な頭脳と、子どものようにピュアな探求心、そして、生きていく上で大切な信念で窮地を切り抜けていきます。

ランチョ―の信念とは、「きっと、うまくいく」ということ。理不尽な状況に置かれたランチョ―は、「うまーくいーくー」と小声で唱えるのです。

映画の中では、Aal Izz Well”(アール・イーズ・ウェルとは、“all is well”の視覚方言)と言っているそうですが、実際に唱えてみると心が軽くなる言葉です。

インド映画特有のミュージカルシーンがあり、インターミッションを挟んだ2部構成で、3時間弱の長尺となりました。その中には、おかしくも、切ない学生時代のエピソードが満載されています。

ちょっぴり不思議君のようなランチョーの破天荒ぶりや、そんなランチョ―とファルラーンやラージューが親友になるきっかけ、チャトルがランチョーを敵視する理由、ランチョーの恋、大学生たちの夢と悩みなどが、コミカルに描かれていますが、鋭い社会風刺も込められています。

底意地の悪いヴィールー学長の酷い仕打ちにより、エンジニアとしての未来を閉ざされた大学生の中には自死を考える者も……。笑えないエピソードの後に見せるランチョーの姿に痺れます。

学歴偏重の競争社会を真っ向から否定するランチョ―が事あることに訴えるのは、「点を取るための勉強ではなく、学識を身に付けること。優秀なら、成功は付いてくる」。近年、IT産業で急速な発展を遂げ、世界で存在感を示すインドですが、その一方で、鬱になる学生が増え、90分に1人の学生が自殺をしているといいます。今やインドは世界1位の自殺大国なのだそうです。

そんなインドの闇をあぶり出した本作品。“社会での成功”を上回る"大切なもの”とは何なのか? 果たして現在のランチョ―はどうなっているのか? 膨大なエピソードの末にたどり着くラストシーンには思わずニヤリとしてしまいます。

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