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ラ・ラ・ランド(2016)
魔法のように美しく、ロマンチックでパワフル
ひと時の夢の世界へいざなう珠玉のミュージカル映画
劇中、キャラクターが突然、歌ったり、踊り出したり……。リアリティを欠いたこの展開がミュージカルの肝であり、好き嫌いの分かれ目でしょう。
でも、喜怒哀楽の感情が込められた歌声は、本当に心に響き、圧倒されます。もちろん、演者や楽曲の良さが必要ですが、本作は俳優、メロディの良さに加え、映像の美しさにも痺れます。
映画の都ハリウッドをはじめ、さまざまな夢の世界が広がる街ロサンゼルスを舞台に、魔法のように美しく、チャーミングでロマンチック、そして圧倒的なパワーと情熱にあふれた珠玉のミュージカル映画です。
【ストーリー】
描かれるのは、女優志望のミア(エマ・ストーン)とジャズピアニスト、セブ(ライアン・ゴズリング)の恋と挫折の日々。映画スタジオのカフェで働きながら、ひたむきにオーディションを受けるミアは、まともに審査してもらえない状況の繰り返しに落ち込みます。
一方、ジャズを心から愛するセブは、自分らしいジャズの店のオープンをめざして働いていますが、自分の意に沿わない音楽ばかりを演奏する日々にうんざりしていました。
そんなほろ苦い日常の中、何度も偶然に出会ったふたり。最初は、険悪な出会いでしたが、互いの夢や本音を語りあううちに恋に落ちていきます。
純粋なミアと情熱的なセブ。夢を叶えようともがくふたりの一年間を描いたストーリーは、いたってシンプルですが、それを見応えあるものにしているのは、緻密に計算された、素晴らしいミュージカルシーンの数々です。
冒頭、ロサンゼルスのハイウェイで繰り広げられる、歌とダンスのパフォーマンスで一気に映画に引き込まれます。「新しい日」の喜びを歌うメロディアスでポジティブな音楽、ドライバーに扮したダンサーたちによる躍動感あふれるダンス、ロサンゼルスの熱気や爽快感を見事にとらえたビジュアル。ワンショットで撮影された、圧巻のミュージカルシーンにわくわくしてきます。そして、私はスタッフ、キャストが一丸となって成功させた奇跡のようなシーンに、何度見ても感動して涙が出てしまいます。
ほかにも、ロサンゼルスの名所、グリフィスパークや天文台のプラネタリウムで繰り広げられるミアとセブのミュージカルシーンなど、魔法のように美しく、ロマンチックな光景がたくさん登場します。
監督・脚本は音楽ドラマ『セッション』で一躍脚光を浴びたデイミアン・チャベル。ベタにも見えるロマンチックなシーンを、夢のように美しいひと時へと昇華させているのは、多くのシーンでワンテイクでの撮影を求めたという、監督の徹底した本物へのこだわりの賜物でしょう。キュートなルックスのエマ・ストーン、ジャズピアノを習得したライアン・ゴズリングら、俳優陣も完璧な演技で応えています。
ミアとセブの夢と愛は、どのような結末を迎えるのか……。映像からも、ストーリーからも、厳しい現実の中だからこそ、“夢”を見ることの素晴らしい効果がひしひしと伝わってきます。たったひと時でも、素晴らしい夢の世界へといざなう映画の魔法に酔いしれてほしいです。