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怪盗ルビイ(1988)

昭和のトップアイドル、キョンキョンの輝きは必見
時代を経たからこその楽しみ方ができる

1982年のデビューの翌年、それまでのガーリーな聖子ちゃんカットをバッサリ切って、ボーイッシュなショートカットで現れた小泉今日子は一躍大ブレイク。キョンキョンというポップな愛称で親しまれ、元気でキュートな女の子像を確立しました。

さらに、遊び心いっぱいの楽曲『なんてったってアイドル』を堂々と歌い切る度胸と潔さを備えたキョンキョンは自分らしさ全開で、80年代のトップアイドルとして登り詰めて行きます。

そんな超個性派アイドル、小泉今日子の主演映画第3作となる本作は、気まぐれでおしゃまな猫を思わせるキョンキョンの小悪魔的な魅力をふんだんに生かしたロマンティックコメディです。

【ストーリー】
冴えないサラリーマンの林徹(真田広之)が母と2人で暮らすマンションの上の階に、スタイルストの留美(小泉今日子)が引っ越してきます。ひょんなことから留美と親しくなった徹は、留美から「お金を稼ぐために犯罪者になる」と打ち明けられ、留美こと“怪盗ルビイ”の犯罪の相棒にさせられてしまいます。

詐欺や銀行強盗など、かわいい顔して本格的な犯罪を企てる大胆不敵なルビイと、彼女の無茶な要求に戸惑いながらも、惚れた弱みでマジメに取り組む内気な徹。この凸凹コンビによるドタバタな犯罪計画の顛末がコミカルに描かれます。

お気楽な80年代にキョンキョンのために作られたアイドル映画は、素人犯罪者たちの戯言に付き合わされているような脱力系のストーリーで正直言って、決して面白くはないのですが💦、最近、36年ぶりに観たところ、時間が経ったからこその視点で感動することが多々あり、とても楽しめました。

まず、キョンキョンのかわいさに改めて驚きました。ルビイの初登場シーンでは、徹が初めてルビイの部屋を訪ねると、ルビイが玄関のドアを開けて顔を覗かせます。暗い玄関先から現れたキョンキョンの笑顔の輝きときたら……。まさに“最上級”にかわいいです!

男性を惑わせる小悪魔と言えば『ティファニーで朝食を』のヒロイン、ホリーが思い浮かびますが、ファッショナブルな洋服や髪形、メイクで多彩な顔を見せるキョンキョンは、まるで和製オードリー・ヘップバーンのようです。

そして、主演とプロデューサーを務めたアメリカ製ドラマ『SHOGUN  将軍』の大成功が記憶に新しい、今やハリウッドスターの真田広之がトボケた三枚目ぶりを発揮しているのも見どころでしょう。’80年代に流行った大きな眼鏡をかけ、正統派の二枚目オーラをかき消した真田広之は、いつもおどおどしていて頼りない徹を愛敬たっぷりのキャラクターに仕上げています。

今年、NHKのドラマ『団地のふたり』でありふれた日常を慈しみながら暮らす50代女性を好演した小泉今日子。『ラスト・サムライ』('03年)でハリウッドに進出後、たゆまぬ努力を重ねてきた真田広之。2人とも、厳しい芸能の世界で浮き沈みを経験しつつも、自らの信念を貫いて道を切り開き、ますます生き生きと活躍されています。

未来のことなんて気にせず、ただただ楽しそうに演じる主演コンビの若き日のみずみずしい姿を観ていたら、何だか元気が出てきて、私もまた夢にチャレンジしてみたくなりました。

昔観た映画を再び観る楽しみは、当時の懐かしい気分に浸るだけでなく、人生でいろんな経験をしたからこその視点で映画の面白さを発見すること。以前と違う感想を持つことは、自分が成長していることの証なのだと思います。

原作はアメリカのミステリー作家ヘンリー・シュロッサーの小説シリーズ『怪盗ルビイ・マーチンスン』。原作では男性のルビイを女性に変更した映画版では、1980年代の明るく華やかでオシャレな雰囲気に満ちています。映画を未見なら、バブル真っただ中の昭和のトレンドやセンスも興味深く映るのではないでしょうか。 

監督・脚本を手がけたのは、イラストレーターやグラフィックデザイナー、映画監督などマルチな才能で活躍した和田誠。晩年は明るい料理研究家の平野レミの夫、ロックバンド「トライセラトップス」の和田唱のお父さんといった家庭的な側面が加わり、温かく、ほのぼのとした人柄が際立ちました。

昭和のクリエイターたちが"楽しい"を詰め込んだ作品はゆるいけれど、とても微笑ましい映画です。ぜひ素直に楽しんでほしいです。

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【小泉今日子の最新映画が2024年11月22日より公開】

アイドル時代をともに歩んだ、
モッくんこと本木雅弘との共演が話題



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