見出し画像

ホテルアイリス(2022)

日本と台湾のキャストとスタッフが創り上げた
狂気とエロスが交錯する眩惑の映像世界

 小川洋子が禁断のエロスを描写した同名小説を映画化。

謎めいた中年男と、心に闇を抱えた若い女性との、妖しくも、幻想的な愛の行方が描かれています。

【ストーリー】
マリ(陸夏/ルシア)は孤島の空き家を訪れ、思い出にふけっていました――。
寂れた海沿いのリゾート地で、日本人の母(菜葉菜)が営む「ホテル・アイリス」を手伝っていたマリは、ある夜、ホテル内で女性の悲鳴を聞きます。驚いたマリは、男(永瀬正敏)が赤いキャミソール姿の女性に暴力をふるっている光景を目撃します。
後日、マリは町中で男と出会います。以前の暴力的な姿とは打って変わり、男は穏やかな立ち振る舞いをしていました。
しかし、ロシア文学の翻訳家で、孤島で一人暮らしをしている男は、町の人々から、ある殺人事件の真犯人ではないか、と噂されていたのです。
マリはかつて暴力をふるう父親(マー・ジーシャン)を不慮の事故で亡くした傷を抱えていました。また、束縛の強い母親にも悩まされていました。
そんな日常から逃れるように、マリは翻訳家に惹かれ、彼の孤島の家を訪れるようになります。

2人きりの空間で行われるエロティックな営みが本作の見どころ。本作で映画デビューを飾った台湾出身の陸夏(ルシア)が暴力的な翻訳家の過激な要求に応えるマリを熱演しています。ミステリアスな翻訳家を演じるのは、世界を舞台に活躍する永瀬正敏。静かな狂気をまとった凄みのある演技に引き込まれてしまいます。

マリと翻訳家の関係は、体の不自由な翻訳家の甥(寛一郎)が現れると危うさが増し、ドキドキしてきます。あまりにも、いびつで危険な世界は現実なのか、幻想なのか。原作にはない“鏡”をモチーフにした、人間の心の奥底を映し出すような眩惑の映像世界が堪能できます。

監督・脚色・製作は『タイムレス・メロディ』(’99年)で釜山国際映画祭グランプリを受賞するなど、世界でも高い評価を受ける奥原浩志。本作は『黒四角』(’12年)以来、9年ぶりの監督作となりました。

撮影はほぼ台湾の台北で行われており、日本と台湾のキャスト、スタッフが参加。無国籍感漂う不思議な「ホテルアイリス」を創り上げています。

************************************************************************
【永瀬正敏の最新主演映画が2024年8月23日より公開】

箱の中に棲む不気味な男が見た世界とは


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集