漢方薬の生薬と腸内細菌の関係性を3つの視点から考察してみた!
ここまで漢方薬と腸内細菌のつながりを何回にもわたって見てきましたが、今日はちょっと整理してみたいと思います。整理するにあたり、3つの視点で見て行こうかと思います。(東邦大学医学部 田中耕一郎先生の文献がとてもまとまっていましたので、参考文献として一部引用させていただきました。)
1つ目が、漢方薬の生薬の多くが植物であることから、植物の細胞壁が多糖類のセルロースであることが上げられます。
セルロースは難消化性成分の食物繊維でありますから、人は消化酵素を有していないため小腸では消化吸収が出来ません。よって、大腸まで運ばれ腸内細菌が発酵させて短鎖脂肪酸に変換され吸収されることになります。要するに、生薬がプレバイオティクスとして働き、効能が生まれるのです。
2つ目が、生薬の成分に配糖体が含まれていると言うことが上げられます。
同じように小腸では配糖体を分解できないため腸内細菌が配糖体の結合を解くことで、腸管より吸収し薬効を発揮させます。
そして3つ目が、生薬の中には菌類のものが含まれています。例えば、以前のコラムでご紹介した五苓散の生薬で、茯苓や猪苓などが菌類ですし、霊芝もそうですね。いずれもサルノコシカケ科の菌類(画像)になります。
これらは、プロバイオティクスとして宿主に対して有益な効果を表す微生物です。同じく納豆菌や麹、酵母もプロバイオティクスになります。以前に菌のリレーとしてコラムでご紹介しましたが(8月10日などいくつか書いてます)、この菌類もバトンを渡す先頭ランナーとして重要な働きがあります。
このように、漢方薬の生薬と腸内細菌は密接な関係性があることがわかるかと思います。
というか、逆に言い換えると、生薬をしっかりこなしてくれる腸内細菌が腸内に棲息していないと、漢方薬が無駄に排出されてしまうとも言えます。
これからも、生薬と腸内細菌については、深く切り込んでいきたいと思います。