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久遠の薔薇

割れた水槽の中で
覗いてくる目玉たち
瞳の奥に広がる闇に
つい引き込まれそうになる

忍び寄る気配か、足音か
怯えている僕の横で
キミは静かな声で
口角だけをあげて笑う

まだ蕾の薔薇の花を見て
キレイだと目を細めた
キミのその表情に
微かな記憶の面影を見た

「永遠なんて言葉は壮大な嘘ね」
初めて会った夜、僕は
意味のない相槌を打っていた
蜜を吸う蝶のように


割れたガラス片に
反射して導かれる光
慈しみの正体は
支配欲だったと思い知る

「さぁ、今宵は時間を忘れて
踊り明かしましょう」
閉ざされた扉を押し開く
白い手に我を忘れて縋りつく

「蕾のままが一番美しいの」
能面のような澄まし顔
なのに何故だろう?
僕と重なり始めて

フリーズドライで凍らせた
薔薇の花は時を忘れたまま
永久に咲き続ける

「永遠の愛を教えてあげる」
冷たい口づけを交わしながら
まだ僕は待ち侘びている
キミのいない穴を、
泣き虫な子供のように

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nicco
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