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すべての感想は二次創作物である

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自分の目で観た芝居のことと、それを見ている間に考えたこと、連鎖的に思い出したことなど。 これから観る人、観ていない人の参考にはならないと思います。同じものを観た人に、自分の体験を…
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#観劇記録

12月の2本

かるがも団地「秒で飛びたつハミングバード」

12月17日14:00 下北沢OFF・OFFシアター

かるがも団地という劇団とはつくづく不思議な共振作用がある。ここ2年間ずっと、どういうわけか公演時期は僕の心が弱っている時期と重なっていて、彼岸に足を踏み入れそうになっている僕の精神をその都度バックドロップで此岸へ引き戻してくれている、なんのレトリックでもない意味で命の恩人的な劇団でもある。いま一番

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10月の2本

みさくぼ「碌な夜がいねえ」

10月15日19:30 王子小劇場

ぜんぜん具体的なこと書いてない気もするけどこのまま公開する。

一昨年の夏。在宅ワークと出不精のコンボが華麗に決まって自宅にこもりっきりの生活をしていた時期、真夜中にとつぜん室内にいること自体が我慢ならない気持ちになって、近隣の、徒歩約20分先にある自然公園までわざわざ歩いていき、全身もれなく蚊に刺されながら雑木林の奥で偶然見つけ

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9月の2本

あやめ十八番「空蝉 UTSUSEMI」

9月3日13:30 東京芸術劇場シアターウエスト

これは単なる自分の性質というか好みの問題だからどうしようもないのだけど、(経験・スキル的な意味で)やる気以外ほぼ何も持っていないに等しい状態の自分を快く迎え入れてくれたものが小劇場だったので「ただ凄いだけの演劇」に対して遠さを感じてしまう、というのが前々からある。一分の隙もない緻密な脚本、巨大な舞台空間、

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8月の2本+1

今年は「■月の■本」のタイトルで毎月1記事ずつ、観てきた演劇の記録をつけるということを習慣づけていたのだけど、見てわかるとおり6月と7月は更新をしていなかった。書くのをサボっていたわけではなくて、観た本数が0本だったのだ。null。

かるがも団地 コント集「グレートジャーニー」

8月20日19:00 スタジオ空洞

会話劇のお手本みたいな一言目の声量から、いきなり畳をひっくり返すみたいに騒がし

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5月の4本

しあわせ学級崩壊「文学を、聴く。」Aプログラム

5月1日16:10 神楽坂kagurane

EDMなんて影も形もなかった時代の文豪たちが過去に残した作品を最新のビートに乗せて読むAプログラムと、いまも現役活動中の劇作家たちがビートにあわせて書き下ろした新作(戯曲?小説?そういう区別はもはや必要ないのかもしれない)を読むBプログラム。趣向としてはどちらも同じくらい魅力的で、だけど両方は見に行けそ

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4月の3本

かるがも団地「なんとなく幸せだった2022」

4月2日18:00 北とぴあ・カナリアホール

まだ初演からそれほど長い年月を隔てたわけではないのに、世の中はかくも無残なほど様変わりしていて、その変化をまるごと背負って書き直された再演版はタイトルから受ける印象まで含めてなにもかもが違ってみえる。

とはいえそこは信頼と実績のかるがも団地、ただの能天気じゃないかわり深刻にもなりすぎない完璧なタイミン

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3月の4本

小田尚稔の演劇「是でいいのだ Es ist gut」3月11日19:00 三鷹SCOOL

公演としては初日、ほかにも複数ある日程のうちのひとつにすぎない。でも、物語的にいって今日のこの日をたまたま選んで予約したのは先見の明があったんじゃないかと自分を褒めてあげたい。そしてなにより歩いて帰りたくなる芝居だった。夜の道を、町を、非日常とまではいかないにせよ異化された特別な夜を。
あの3月だけが特別だ

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2月の1本+

お布団「ナイトドミナント 夜を治める者」2月12日18:00 こまばアゴラ劇場

お布団の演出で最も特徴的なのは演劇を一種のゲームプレイのように表現する点で、この点は(最近お布団を知った人には信じられないかもしれないが)抱腹絶倒のメタコメディ路線だった初期から一貫している。そして昔のゲーム(古典演劇)を最新ハードウェア(現代的解釈)で無理やり動かしてみるお布団のプレイスタイルは常に「グリッチ技」的

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1月の4本

スペースノットブランク「ウエア/ハワワ」1月15日13:00 こまばアゴラ劇場

もっとガンガン笑いが起きてもいい作品だったんじゃないかと今になって思う。とはいえ、そういう作られ方をしていることに気付くまで時間がかかりすぎた。

ストレートに受け取れば笑えるはずの言葉が芸術点の高さに阻まれてしまっていた気がする。おかしなことを言っているが、もしかしてそこには深遠な意味が隠されているのではないか。こ

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